勝田稔男プロデューサーインタビュー
1979年7月24日 録音スタジオタバック隣喫茶店ヒロ
Q スタージンガーとはどういう意味なんですか?
勝田 スターって言うもは直訳で星って意味だけど、宇宙っていう意味もあるでしょう。ジンガーって言うのは、アメリカの俗語で暴れん坊って意味があるんですよ。だから、まあ、宇宙という意味と暴れん坊と言うことで「宇宙の暴れん坊」って言う意味なんです。
Q スタージンガーは何年ぐらいのお話なんですか?
勝田 かなり今から2〜3千年未来を考えてなんですが、どちらかと言えば、純SF的なダイナミックな考え方ではなくて、西遊記を元にした未来のおとぎ話とでも言うのかな。ですから、あんまり深き考えないで戴きたいですね。
Q 設定が決定するまでの過程を聞かせて下さい。
勝田 もとの話って言うのは、中国から天竺まで経文を求めて旅をするってお話でしょう。だから天竺までの舞台をここでは宇宙と言う事にしたんです。それでひと口に宇宙と言っても今までの作品を見てみるとかなり遠くまで飛ばしすぎたんで、私たちの一番身近に感じる宇宙、特に小さい子にもわかりやすいようにと、場面設定を銀河の中でとどめようとしたんです。 それで、目標地点は天竺ではなく、大王星という銀河の中心にある星で、平和を保っているエネルギーを放射している。しかし、そのエネルギーが衰えたために。宇宙が悪のスペースモンスターに支配されていくと言う事で、ここに、その危機を救う者−−−西遊記でゆけば、三蔵法師にあたるんですが−−−が登場します。
それがスタージンガーでは女性であるオーロラ姫なんだけれど、なぜ女にしたのかと言うと、平和の象徴とといったものももちろんありますし、母なる大地って言う言葉をみなさんも知っているでしょうけど、やはり、母なるものは女であるし、そのへんのところをミックスして出来るだけシンプルな形を取ったということなんです。
Q ギャラクシーエネルギーが弱まって来たために生物がモンスター化したと言う事は、本質的に生物はモンスターだったということになるのでしょうか?つまりギャラクシーエネルギーに抑えられて一見平和そうな宇宙だったようにも考えられますが…?
勝田 ええ、その考え方でいいんですよ。
だから、地球創世記の頃、人間がまだ現れなかった頃には、爬虫類ばかりだったでしょう。それをかんがえて欲しいんです。現代を中心として地球創世記を左端に置きます。すると必然的に未来は右に来ますね。つまり地球創世記を右端に未来に持って来たわけでそういう意味のいわばSFと言ってもおとぎ話風に変えたと考えて戴きたいんです。その結果ギャラクシーエネルギーが衰えたことによって過去へ戻って来ると言う危険性で星がみんなおかしくなってくる。結局、それを救うには、やっぱり愛のエネルギーg必要なんだと言う事を言いわかったわけです。
Q クーゴ、ジョーゴ、ハッカの年齢は?
勝田 それはいくつでもいいんじゃないかな。
みんなが胸に抱いている年齢でね。ジョーゴなんかかなりキザだから、22〜23だなんて考えてもいいし、小さな意味でこだわらず、今の若者という考え方でいいんじゃないかな。
Q メインのキャラの声の出演は誰が決めるんですか?
勝田 だいたい僕がキャラクターを見た感じで決めました。こういう役にはこういう声が合うんじゃないかなと言うことで。
Q 勝田さんがだいたいお決めになるんですか?
勝田 ええ、だいたい僕の方で決めて、あとは局の方々や代理店の人たちに賛同を得てOKを貰って最終的に決めたわけです。
Q サイボーグと人間は結婚できるんでしょうか?
勝田 サイボーグって言うのは改造人間みたいな考え方もあるし、最近ではバイオニックって言葉があるよね。バイオニックになると、もう1つただ単なる改造でななくて、人間の皮膚を強化するような考え方もあるし。だから、そういう意味で言えば昔のサイボーグ、鉄のパイプが入っているみたいなイメージを持つと、勿論、それは結婚なんて不可能でしょうね。
ただ、バイオニック化されると言うか、筋肉を強化するととか血管を強化されているとか、心臓にしたって今は人工心臓の人もいるんだしネ。肝臓だけは今まだ人工がないけれど、あとはみんなあるでしょう。だから、それを考えれば、出来るんじゃないかと言う事なんですよね。それを出来ると思う人はそれでいいと思うし、あなた方の胸の中で空想を膨らませてみて下さい。
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Q クーゴたちがかぶっているヘルメットはどういう役目を果たしてるんですか?
勝田 バイクに乗るときにヘルメットをかぶれって言うでしょう。事故にあった時、手や足を打ってもなんとかなるけれど、頭を打っちゃどうしようもない、治せない部分ってあるでしょう。
…と同じにサイボーグで強化されているとは言え、脳はちょっとでも破壊されたら手のつけようがないし、それに3人はもうまで改造されたわけではなくて、自分の意志で動くことが出来るわけで、多少なりともコンピューターが埋め込まれていたとしても、人間の感情は失っていないから、そのためには脳はどうしても必要だし、だから、ヘルメットは彼等の脳みそを守るためには、どうしてもそれがいるという事なんです。
それから、もう一つ単純なことから言えば、宇宙では音波は使えないわけ。だから、そのための特殊な信号を送ってお互いに通信し合うためと言うこともあるんですよ。だからある程度おとぎ話的なお話の中にも科学的要素を含めてあるわけなんです。
Q クーゴの分身の術なんですが、実体があるものと、ないものとありましたね。あれはどういう風に違うんですか?
勝田 あれは初めは残像現象みたいなものとして考えたけれど、こういうお話の中では、反ってしらけてしまうと言う事であとから完全に実体として残そうとしたんです。
Q ジョーゴやハッカのショルダーニードルやゆびミサイルは、どこで造り出されているんですか?
勝田 あれはネ。秘密と言う形で来たんだけど(すごく真剣に!)
クーゴを造ったのはドッジでしょう。ところがハッカとジョーゴを造った人は紹介してないわけ。(ますます真剣に)
だから僕にもわからない。
Q えっ〜〜〜〜〜!!
勝田 その点は秘密です。造った人を出さなかったんだから。(笑)
Q モンスターはギャラクシーエネルギーが当たると元の姿に戻るはずなんですけれど、なぜ大王星の月にいたモンスターは元に戻らなかったんですか?
勝田 あの場合は逆なんです。あれは光のモンスターなわけですよ。むしろギャラクシーエネルギーを奪い取ろうとしているモンスターで、エネルギーを取れば取るほど強くなって行くんです。それで光の形と言うのはわからないわけで、一応トラの形をとっていたんだけど、それは一番凶暴に見える形に変化したと言う事なんです。
まあ、宇宙の一種の変な現象だったと考えて戴きたいですね。
Q 大王星の宮殿はどんなイメージでお作りになったんですか?ピラミッドにたいへんよく似ていましたけれど。
勝田 僕はやっぱりピラミッドのイメージがあったんですよ。非常に神秘的な感じがあるでしょう。ということで、あれもひとつのシンボルとして出したんで、本当はあれのモトが大王星の地下にあるのかもしれませんね。
Q PART1の最終回でベラミスが自分を犠牲にしてまでしてモンスターを倒した後、ジョーゴがいかにも嬉しそうに「ベラミスありがとう」って言うシーンがありましたよね。あの時のジョーゴはもう少し悲しそうな顔をしても良かったんじゃないのかなって感じたんですけれど。
勝田 たしかにそうかもしれないね。だけど、ベラミスはハッカやジョーゴを相手にしてなかったわけでしょう。クーゴだけに対しての対抗意識みたいなものを持っていて、その中に何か通じるものを感じていた。だから第三者の立場として、ベラミスの死に対してはます、ああ、よくやってくれた!という感謝の気持ちを持つだろうし、その後でまた命まで捨てて…と言うような悲しみの感情が出てくると思うんですよ。一方クーゴは、「ベラミス、どうしてお前は死んだんだ」って言う気持ちが先に出るでしょうね。まああなた方ももう少し恋をすればそういう気持ちがわかりますよ。
Q 一同笑い
勝田 まあ、これは、ジョーダンだけれども。(笑)
Q 「私の夢は消えてしまった。誰が明日の世界を作ろうとも、私とは関係ない」というベラミスの言葉の億に隠された本当の意味を教えて戴きたいんです。
勝田 それはやっぱりベラミスの強がりじゃないですか?本当は裏の心情があるんだよね。だから、僕は少し大人っぽくし過ぎたかなって思ったんだけど。本当は優しい言葉を欲しいって言う気持ちを持っていながら、突っぱねるって言うのかな。それでクーゴはうっと来るんだけど、クーゴがあーいうストレートな感情の持ち主でなかったら、ジョーゴだったとしたら「お前の気持ちと裏腹なことを言うな」とか「強がりはよせよ」って言ったと思うんだ。
Q 「ダンガードA」のトニー・ハーケンとベラミスって何か共通するものがあると思うんです。最後なんかもお互いにそれぞれあーいった形で主人公の前から姿を消して行ったし…ただトニー・ハーケンの場合は、死んだか生きているかはわからないまま消えて行ったけれどベラミスは完全に死んでしまったでしょう。そのへんの勝田さんの考え方について伺いたいんですけれど。
勝田 トニー・ハーケン自身が死んでいるのか生きているのかわからないと言う事で僕としてはそういう夢を残したかったんです。いろいろみなさんの夢の中で想像して下さいという形にしたんだけど、いろんな賛否両論が出て来ちゃってね。まあ、それがあったんで、今度ははっきりとこういう形でみなさんに問いかけてみたいということで…。
本当はベラミスも生きているのか死んでいるのかわからないことにして、みなさんに何か夢を持たせたいなという考えもあったんです。
Q ベラミスと言うキャラクターを登場させた理由について聞かせて下さい。
勝田 初めは割と低学年というか子供達に喜んで貰おうと思って作ったんだけど、そうすると番組自体の幅がどうしてもせばめられてしまって…そのへんもうちょっとある程度高学年の人達に喜んで貰える要素が入れられないかと言う事で、番組に幅を与えるために彼女を登場させたわけです。ベラミスを登場させることで、つまり悪に荷担していても実は誤解があったと言うことをわかって貰いたかったし、ベラミスを見て戴くことで、そういった若い人達の悩みってものをいっしょに考えて行きたかったという問題提起の部分もあったんです。
Q PART1を終えての感想などありましたらお聞かせ下さい。
勝田 やっぱり非常にむずかしかったっていう部分がありますね。西遊記をSFに切り替えたというお話だったけれど、原作もエピソードが少ないでしょう。そこらへんで、これだけ60本以上作るのはきつかったし、SF西遊記ってタイトルが出る以上、西遊記の味とSF的なものをどの程度まで、出し切るかという点でも苦労しました。まあ、その点では僕自身もはっきり掴めないままで終わったんじゃないかなっていう気がします。ただPART1では、テーマだけは貫いたなっていう実感はありますね。
「命あるものをむやみやたらに殺すものではない!」というテーマを。
Q PARTUについてはどうですか?
勝田 PARTUについては、もう敵は化け物なんだから殺してもいいんじゃないかという形に切り替えましたからね。これは西遊記の持っているダイナミックなものをより多く取り入れたと言う事で、クーゴもアストロ変身などが出来るようにしたんです。いろんな星で化け物のために苦しめられている人達を助けようということで行きたかったけど、あまり時間がなくて、より完全なものに仕上がらなくって残念です。とにかく9話で何かを語ろうとするのは非常にむずかしいんですよね。
Q これからも頑張って下さい。ありがとうございました。
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