1978年4月2日から1979年8月26日まで 全73話が放映されたテレビアニメ「SF西遊記スタージンガー」のファンクラブです。        



スタジン小説 その13





「祈り〜新しい宇宙のために〜」   作・み〜め

玉座を照らす光は、淡く柔らかい。 高い天井のガラス窓を通して、ゆるゆると降り注いでくるのは、 大王星の月の光だ。 地球の月と異なり、大王星の月は、1日かけて、 ゆっくりと大王星の周りを巡る。 故に、この位置に月の光が降りてくる時間は、いつも決まっている。 「……女王様、そろそろお休みになられてはいかがですか……」 女官の1人が声をかける。 「……あなた方は、先に退ってお休みなさい。 ……私も、すぐに休みます。」 心配げな女官達を笑顔で見送ってから、新しい大王星の女王、 オーロラは、玉座に備え付けられているコントロールパネルの スイッチに手を触れた。 微かな音と共に周囲の壁が、全てスクリーンに変わる。 どこに目を移しても、果てしなく広がる宇宙空間。 彼女が守っていかなければならない世界。 姫と呼ばれ、ただ守られるだけだった自分が、守れるのだろうか。 いや、迷う余地は無く、矢は放たれた。 「……守るのです……想いは、どこまでも強くなれると信じて……」 呟いた言葉が、何故か切なくオーロラの胸を焦がした。 『……たった一人の人のために祈ることと、 銀河宇宙全てのために祈ることに、違いはないのですよ。』 ここに来たばかりの頃、上手く力をコントロール出来ないオーロラに、 先代の女王が、優しく諭したことがあった。 今も、彼女の力は、ともすれば不安定になる。 強大な力は、諸刃の刃。そう思えば思うほど、恐怖が先立つ。 信じて進めば、何でも適うと、 あの苦しい旅は教えてくれた筈なのに、どうして……。 『女王様は、お1人で、お寂しくはございませんでしたか?』 不甲斐無い自分が情けなくて、尋ねた問いに返ってきたのは…… 『……私は、1人ではありませんでしたから…… 今までも、これからもずっと……』 穏やかに微笑んだ女王の瞳の奥に見えたのは何だったのか。 それが分かれば、きっと変われるに違いない。 そう思ったのは、気の迷いだったのか……。 ……心の奥に……在る…… 認めてはいけない何かが……。 『……オーロラ姫……私は、決して良い女王では、ありませんでしたよ。 潜在していた力も貴女よりずっと弱かった。 私は、自分が幸せでありたいと願っただけ。ただ、それだけです。』 そんなことが、あるはずはない。 女王が自分を励ますために言った言葉なのだ。 だから…… 決して……認めては……いけない…… けれど…… その時、月が、オーロラの上に光と影を落とした。 眩いまでの光と、全てを包み込む闇。 何もかもが生まれ、何もかもが滅する場所 「……クーゴさん……」 唇が、言葉を紡いでいた。 言葉と共に……在る……ものが、心から溢れ出す。 認めるよりも確かに、存在を叫びながら。 その夜…… 銀河に、一番のエナジーが降り注いだ。 強く、美しい、その力は、銀河全てを優しく包み込む。 オーロラは、生まれて初めて自分のために祈ったのだ。 「……ずっと、ずっと……オーロラを……守ってください……」


●み〜めさんのHP「しゅーるな部屋」(「スタジンの間」)より転載させて頂きました。
2002・10・09

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