風の音がしていた。
ラセツ星の夜。ベラミスが暮らす宮殿の離れの間には、星々を見上げられる
天窓がある。
ベラミスはただひとり、仰向けにベッドに横たわり、組んだ両手を頭の後ろへ
やって、天窓からの夜空を見上げていた。
疲れた。今日は、本当に。
眠ったら少しは楽になれるだろう。なのに、頭は冴えている。
今日という今日は、必ずオーロラを捕えられると確信していた。
それなのに、あんな予想外の顛末を迎えるとは。
ジョーゴの銃がオーロラに命中し、オーロラが息絶えたと思った時、私の中に
今まで感じたことのない怒りが込み上げた。
男とは、そんな身勝手な生き物だったのか、と。
指をくわえてそれを黙認していたと思った・・・クーゴ、お前はあの時、本当に
オーロラが死んでしまったら、どうしていた?
あれが芝居であったことが、オーロラが無事であったことが、口惜しいが嬉しい。
クーゴ、もしあの時、本当にオーロラが死んでしまっていたなら・・・。
ベラミスは苦笑した。
何だ、今の感情は?
私はあいつを必ず倒す。どんなことがあろうとも。
だが、あの時、得体の知れない何かが、私の心を掠めた。
お前は、オーロラを守るために命を懸けることはあっても、私との勝負に
捨て身で臨むことはないだろう。
ベラミスの顔がかすかに歪み、悲しそうな笑みが浮かんだ。
今夜考えたことは、私の中の奥深い場所へ隠しておこう。
クィーン・ラセツにも、オーロラにも、そしてクーゴにも、
決して知られてはならない秘密として。
●2002・10・15更新
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