イラスト・南十字あたる
「女人ハイルベカラズ」
コスモス号のキッチンに今日はこんな張り紙がしてある。
「おい、ハッカ!おまえ、何食ってんだよ!?」
「ジョーゴ!こんな時まで電卓は必要ないだろう!?」
クーゴの必死の叫びもむなしく、まったく、
作業は捗っていない。
「なぁ、ジョーゴ。そいつを手から離して
このクリームを泡立ててくれ。手早く、するんだと。」
「その速さを計算するとだな・・。」
「いいよ!!しなくて!!・・・だからぁ、おまえは食うなっての!!」
ジョーゴの電卓を取上げ、代わりに銀のボールを
抱かせるとハッカの腕からナッツの袋を奪い取る。
「これは砕くんだって!バカ!!ブードバルカンなんて使うなよ!!」
戦場である。
「いいか?チョコレートを湯煎で溶かし・・・おい。なんだ?ゆせんって?」
「待てよ、クーゴ。調べてみる。」
ここぞとばかりにジョーゴが最愛の電卓を取り返す。
「鍋に湯をわかし・・その中にボールを入れて、チョコを溶かすこと、らしいぞ。
チョコの中に湯が入らないようボールは
鍋より大きめの物で、温度は指で触れるくらい。」
「・・・やってくれ。」
「わかった!」
「クーゴしゃん、オレにもなんかやらせてくれよぉ。」
「ナッツは!?」
それは、まな板の上で粉みじんである。
「おまえ、ぐーでなぐらなかったか!?」
「軽く・・。」
どんがらがっしゃん。
チーン。
四苦八苦、汗と涙の末、出来上がったのは、ぶかっこうで、
ちょっとコゲた香りのチョコレートケーキ。
クッキーみたいなお菓子がちょこんと乗っている。
「よーし!!持ってくぞ!!」
「待てよ、クーゴ。」
「ん?」
「こういうものには、これが必要なんだ。」
ジョーゴはそれだけは慣れた手つきで、姫のお気に入りの
小柄なカップに、オレンジペコを入れた。
3人は顔を見合すと、快心の笑みを浮かべた。
オーロラは、キッチンのドアの影からこっそりと、
しかし急いで自室に戻った。
慌てて詩集をめくる。
もうすぐ。誰より愛しい人たちがやってくる。
オーロラは、落ちたしおりをひろうのも忘れて待っていた・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おわり・・・
●2002年3/13、スタジン掲示板「くぃ〜んこすもす」に掲載されたものです。
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