1978年4月2日から1979年8月26日まで 全73話が放映されたテレビアニメ「SF西遊記スタージンガー」のファンクラブです。        



スタジン小説 その22





「レクイエム 」(大王星の朝・・・オーロラ)   作・みなこ

時間は戻らない。どんなに願ったとしても。   オーロラは、自分の涙に気付いて目を覚ました。   天蓋を通して差し込む光が、夜明けを知らせてくれている。   そう、ここは大王星だった。   平和に満ち溢れ、争いのない、崇高な世界。   もう哀しまなくていい、宇宙には、何ひとつ心配事の無い幸せが、   果てしなく広がっている筈。   穏やかな日常にも慣れ、至福の毎日を堪能しているというのに、   何故私は泣いているのかしら・・・?   ベッドからそっと体を起こし、薄布の帳を掻き分けて這い出す。   金色の長い髪がはらりと寝具を打ち、白いナイトドレスの裾から   美しい脚が現れ、ひんやりとした床へ着地する。   オーロラは、長いドレスのトレーンを引いたまま、窓辺へと進んだ。   そのそばの猫脚の椅子に腰を下ろし、窓の外に広がって行く、   生まれたての朝を見つめる。   新しい朝は必ずやって来る。   幸せで、愛しい、静かな平和の営みが、繰り返し、繰り返し。   嬉しい。心からそう思う。でも。   昔は戻らない。時間は還らない。   どんなに今が平和でも。   大好きだった、お父様、お母様。   旅の途中で巡り会い、通じ合いながら、逝ってしまった人達。   ベラミスさんも・・・。   生きていて欲しかった、皆。   この平和を、贈りたかった。   オーロラの青い瞳の中に、真珠のように美しく切ない涙が   また浮かび、光りを放つ。   その時、朝日が静かに上昇を始めた。   今日が始まる。新しい未来に続く、今日が。   光を受けて女神のような面差しのオーロラは、   気丈に微笑んでみせる。   時間は戻らない。どんなに願ったとしても。      それでもどうか、お願い。   いつかまた、生まれ変わって新しいあなた達と   きっと何処かで会える。    そう信じさせて下さい。    そのために、私はいつまでもここで祈り続けるでしょう。


●2002・12・17更新

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