1978年4月2日から1979年8月26日まで 全73話が放映されたテレビアニメ「SF西遊記スタージンガー」のファンクラブです。        



スタジン小説 その35





「君を覚えている」   作・にいな

その夜。 ビブロス星人のロカンは、空を眺めていた。 「ベラミス様は、今頃何をしているのだろうか……」 ロカンは時々、ベラミスの宇宙艇が飛び去った方向を見つめて、 ベラミスに思いを馳せる。 今はビブロス星と呼んでいるこの遊星の、コンピューターの コントロール方法をロカン達に教えた後、ベラミスは大王星に 向かうと言って旅立った。 『ベラミス様。ギャラクシーエネルギーが復活したら、 またこの星に来てくれますか?』 ロカンはベラミスと別れる時にそう言った。 『そうだな。いつか、また来よう』 切ない表情を一瞬だけ見せて、ベラミスは穏やかな微笑みで答えた。 『元気でな、ロカン』 ベラミスは手を上げてロカンに別れを告げ、宇宙艇を発進させる。 『ベラミス様もお元気で!』 ロカンは両手を振ってベラミスを見送る。 『いつまでもお待ちしています!』 そう言った声は、発進の轟音にかき消された。 ベラミスの宇宙艇が見えなくなるまで、ロカンはその場に佇んでいた。 その後、ギャラクシーエネルギーが復活した事は、 遊星の自然が甦った事で感じた。 遊星も自在にコントロール出来るようになり、 ロカン達はこの星をビブロスと呼ぶ事にした。 銀河に向かってビブロス星はここだと通信を送り続けた結果、 女性を含む同胞達が何人か辿り着き、 新たなビブロスの歴史が始まる希望に沸いている。 あの時のベラミスの力添えがあったからこそ、今がある。 だからベラミスに今のこの星を、頑張っている自分達の姿を、 見てもらいたい。 しかしギャラクシーエネルギーが復活して数ヶ月過ぎても、 ベラミスはやって来ない。 同じくロカン達を助けてくれたクーゴという人物と、 訳有りだったようだが、何かあったのだろうか。 ベラミスの切ない表情が気にかかるが、 いつかまた来ようと言ったベラミスの言葉を、ロカンは信じていた。 今日も来なかったか。 ロカンが溜息を吐いて、部屋に戻ろうと思った時、 夜空を光が駆け抜けて行った。 「今のは……」 見覚えのある光だった。 クーゴは大王星に近い星系で一仕事を済ませた。 行きはクローベルトで飛ばしたが、 思ったより早く仕事が片付いたので、帰りはのんびりと飛んでいる。 帰りに大王星に寄りたいと思ったが。 「ちょっくら寄る、ってわけにはいかねえよな」 大王星を訪ねる事を許されているとは言っても、 大した用事もないのに、そうそう訪ねるわけにはいかない。 オーロラ姫に会うのは、クーゴにとって大した用事になるのだが、 好意に甘え過ぎるのはだめだと、自分を戒めていた時。 「…さん、クーゴさん!」 スタークローの通信機に、自分を呼ぶ声が入った。 「ん?誰だ?」 周波数を合わせると、声の主が画面に現われる。 「よかった。キャッチしてくれましたね」 「お前…どこかで会ったなあ…」 クーゴは顎に手を当てて、記憶を辿る。 「ビブロス星のロカンです。遊星の…」 「思い出した!そうか、あの遊星はこの近くだったっけ。 あん?移動してるんじゃねえのか?」 「移動のスピードは緩める事が出来たので、 以前と位置はあまり変わってないんです」 「じゃあ、今、すぐ近くだな」 クーゴはレーダーで星の位置を確認しながら話す。 「クーゴさんは、数日前にも通りましたよね」 「ああ、そういやぁ、そうだな」 ロカンが見た光は、クローベルトで移動するスタークローだったのだ。 「良ければ私達の星に来てくれませんか、クーゴさん」 こうしてクーゴはロカン達を訪ねる事になった。 クーゴはロカンの部屋で、彼からビブロス星復興の話を聞いた。 他にもいた生き残りが辿り着いて、そして新たな命も生まれると。 「よかったな」 そういう話を聞くと、ギャラクシーエネルギーが復活して 平和になったとしみじみ感じて、クーゴは嬉しい。 「はい。ところでクーゴさん。ベラミス様が今どうしているか、 ご存知ですか?」 クーゴのスタークローがやって来るのをレーダーで捉えたロカンは、 それが一番知りたくて、クーゴに通信を送ったのだった。 「ベラミスがどうしているかって……」 クーゴは唇を噛み締めた。 本当の事を言うべきか、それとも。 「ベラミス様は大王星に向かうと言っていましたから、 クーゴさんにも会ったと思いますが」 「……会ったよ。ベラミスは、ギャラクシーエネルギー復活に、 協力してくれたんだぜ」 ベラミスが、大王星の月にいたモンスターを倒すのに 力を貸してくれた事を、クーゴは語った。 「あいつも、新たな故郷の星を探しているからさ。落ち着いたら、 ここにやって来るんじゃないかな」 「そうですか……じゃあ、いつかは来てくれますよね」 「ああ。ベラミスのことだ。言ったことは果たすだろう、きっと」 「そうですよね。あ、クーゴさんも、近くに来た時はまた寄ってください」 ロカンは屈託なく笑った。 「なんで本当の事が言えなかったんだよ、俺は……」 地球に向かうスタークローの中で、クーゴは腕組みをしていた。 ベラミスは死んでしまった。 ロカン達の星を訪ねると言った言葉が、果たされることはない。 だけど。 今でもベラミスを待っている人がいる。 それは切ないけれど、嬉しかった。 いつか、ロカンに真実を話さなければならない時は来る。 しばしその時まで、彼らの心の中では、ベラミスは生きていて欲しい。 そう思った。 「ベラミス。君を覚えているのは、俺やロカンだけじゃないぜ、きっと」 ベラミスがラセツ軍団にいた時、 部下をクーゴに殺されたと思ったベラミスの怒りは激しかった。 つまりはそれだけ部下を可愛がり、大切にしていたということだ。 ラセツ・ギューマ軍団の部下達も、ベラミスを慕っていたに違いない。 そして、軍団崩壊の後、生き残った者達に少なからず、 ベラミスの影響はあるんじゃないだろうか。 そうあって欲しい。 「覚えていてくれるってことは、凄いことだぜ、ベラミス……」 そう呟くクーゴの瞳は潤んでいた。 ベラミスの存在が、人との繋がりを作り、深める。 クーゴとロカンのように。 それは、銀河に和が広がることだ。 そんな気がする。 「明日の世界を作るって夢は、消えてないんじゃねえか。なあ、ベラミス」 潤んだ瞳のまま、クーゴは微笑みを浮かべて、ベラミスに呼びかける。 一緒に大王星へは行けなかったけれど、新しい世界を一緒に作る事は出来る。 心の中のベラミスと一緒に。 そう考えていると、また通信が入った。 「クーゴ」 キティ博士の声だ。 「カイラ星での仕事、ご苦労でした。もう一つ、寄って欲しい星が出来たので すが、いいですか?座標は……」 星の位置を聞いて、 「了解。どこへでも、お安い御用です!」 クーゴは張り切って答え、スタークローの進路を変えた。


         掲示板「くぃ〜んこすもす」に2003年4月1日と2日に掲載されたものをまとめました。
●2003・04・24更新

スタジンオリジナル小説メニューへ戻る / スタジントップページへ戻る