1978年4月2日から1979年8月26日まで 全73話が放映されたテレビアニメ「SF西遊記スタージンガー」のファンクラブです。        



スタジン小説 その47





「現実(リアル) 〜 In the remote future 〜」   作・み〜め

躓きでもしなければ、 顧みられることもない路傍の小石。 それは……俺の姿。 どんなに心を尽くしても、 どれほど無法を重ねても、 人の心に俺は映らない…… ……力……力が欲しい…… もっと、もっと…… 誰もが、眉を顰めるほどに、 強大な力が……。  「クーゴ、貴方は何を恐れているのですか?」  ひっそりと静まりかえった部屋に、キティ博士の声が響いた。  シートに深く腰を落とし、スクリーンパネルに映し出された月を見ていたクーゴが、ゆっくりと振り返る。  怒っているような泣いているような顔。  問いかけに返す答が見つからない。  「ドッジ助教授の説明だけでは不安ですか?それならば、この研究の第一人者の……」  「違うんだ!どうせ俺の頭じゃ、難しい説明なんか聞いたってわかりゃしない。   博士もドジ助教授も、勧めるってことは、研究は完璧なんだと信じてる。けど……」  人間を強化サイボーグ化する研究と平行して行われていたバイオクローンの研究。  もともと、事故などで失った体の器官を自己の細胞を使って再生し、移植するために始まった研究だが、 繊細な部分に問題が多く、なかなか成果が上がらなかった。 そうこうしているうちに、銀河宇宙が不安定になり、サイボーグ技術開発の方が進んでしまっていたが、 こちらの研究がストップしていたわけではない。 その証に、先頃、数多くの問題をクリアして、ついに生体総ての再生に成功したのである。 そして、生体移植の被験者候補に選ばれたのが、他ならぬジャン=クーゴであった。  「貴方は、もう充分、銀河のために働きました。これからは、自分のために人生をお使いなさい。   そのためには、生身の体の方が、便利なことが多いでしょう。   貴方の心配は、元の体に戻ったら、オーロラを守れなくなるということですか?   それなら、宇宙飛行用の強化スーツも新型になり、もしもの時には、充分に戦闘に耐えますよ。」  キティ博士の言葉が、頭の中でうねりを起こす。  (……それが……俺の心配?……いや……)  ガタンッ!  大きな衝撃に突き動かされて、クーゴが立ち上がった。  「……俺には……何もない……何もなかったから、サイボーグになれたんだ……   ……また、何もない俺に戻れって、博士は言うんですね……   何もない石ころのような俺に……」  (……認めたくなかった……だから、目を瞑っていたのに……)  「クーゴ、貴方の前にいる私を誰だと思っているのですか!   私は、そんな情けない息子を持った覚えはありませんよ。」  いつにない厳しい声で、キティ博士が、クーゴを叱責する。  「貴方のここに燃える想いは、そんなことで消えてしまうのですか!   ……貴方の力の源は、もう、孤独ではないのですよ……」  博士の指が、クーゴの胸を強く押した。  押された場所が、火のように熱くなる。  (……本当に欲しかったのは、誰もが眉を顰める強大な力ではなかった……   それを教えてくれたのは……)  小さな音を立てて、スクリーンパネルが切り替わる。  全面に光る美しい星。  「……ありがとう……キ…かあさん……」  クーゴが、そう呟いた時、  遥かに遠いはずのその星の息吹は、すぐ傍にあった。 この命の他に、 俺は……何も持たない だからこそ…… 大切な人の傍にいられる 夢でない現実の中で

*作者談*
以前、クーゴが、人に近いサイボーグになる話を書きましたが、本当は、 生身の体に戻る話も書きたかったんです。
途中まで書きかけて放ってあったのを、なんとなく仕上げてみました。 今回、戻った後のことは、書いていませんが、想像していただけたら嬉しいです。

●2004・07・07更新

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