1978年4月2日から1979年8月26日まで 全73話が放映されたテレビアニメ「SF西遊記スタージンガー」のファンクラブです。        



スタジン小説 その52





「遠くへ」   作・さつき

大王星は近い。 Qコスモス号のコックピットで1人、自動操縦の手元をぼんやり眺めていたクーゴのところへ 少し早い交代にジョーゴがやって来た。 「!?・・ありがとう」 ふいにさしだされたコーヒーの香りにクーゴは我に返った。 「ギューマ星が崩壊して、ひと段落・・か」ジョーゴは視線をガラス越しの宇宙へと向けた。 そしてすぐクーゴに戻す、意味ありげに。 「最近、おまえ、変だよな」 「え!?そ、そうか?いや俺は元気だよ?なーにが変だってんだ?」 「・・・ふん、ま いいさ」 ジョーゴは片手で操縦桿の傍らの計器を素早くいじり、「修正」のボタンを最後に押す。 「このままじゃ行き過ぎるぜ、大王星」 「あ・・・」 しばしの沈黙。 クーゴは何か言いたげで、でも言葉にならない。やがて探す言葉を諦める。 ジョーゴは切り出す。 「何か気になることでもあるんじゃないか?・・というより誰か、かな」 「な、なーに言ってやがんだ!!さ、交代だ。こうたいー!」 やっぱり、誰か・・に反応したのか、今のあわてぶりは。ジョーゴは思うだけで言うのはやめておいた。 肩を叩いて操縦席を変わる。 クーゴはわざと大きく伸びをして見せてから、やや乱暴に言う。 「俺は寝るからよ、ぐーっすり!起こすんじゃないぜ!」 「ああ」 「もうおっかねーキングギューマも、クイーンラセツもいないんだからよ!ああ〜安心だぜ!」 「まだ、いるだろう・・・?」 背中越しにクーゴの動きが止まって、やがてまた強がりが返ってきた。 「あーんなバカガイマなんか目じゃないっての!」 最後まで強がりを通してクーゴが居なくなると、ジョーゴは自分の冷め切ったコーヒーをすすった。 「・・・ガイマじゃないだろう・・・」 と、ひとりごちる。 (・・・・あいつの性格じゃ「姫」以外の存在を自分が気にかけているって認めたくないのかな。 別に「友人」として在り得ることなのに。いいじゃないか。散々戦ってきた相手だ、安否が気になるだろう? ・・・俺たち人間なんだ、同時に二人を愛することだってもしかしたらあるかも知れない。 後悔しない選択が出来ないことだってあるかも知れない。割り切れない思いを抱えても前に進むしかないんだ。 この旅と一緒さ。別れるしかない旅・・・それでも未来は明るいって信じるしかないんだ。 希望は自分でつくるものだ。 そのために、水の惑星からここまで遠くへ来たんだから・・・。) 今度は深い瞑想の入口を漂うのはジョーゴの番だった。自動操縦に身を任せ。 大王星は近い。


●2009・02・02更新

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