のほほん映画観賞備忘録・2006年1月〜4月
SF・アクション映画が大好きなマクノスケ&マクタロウの映画鑑賞備忘録です。 ふたりで「のほほ〜ん」と感想を語っています。
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■2006. 4月 |
ファイヤーウォール /ブロークバック・マウンテン /Vフォー・ヴェンデッタ /
■自由を!永遠に!
[監]ジェームズ・マクティーグ
[製][脚]アンディ・ウォシャウスキー ラリー・ウォシャウスキー
[出]ナタリー・ポートマン ヒューゴ・ウィービング スティーブン・レイ
[制作データ] 2006米/ワーナー
[上映時間] 132分・PG-12
■「Vフォー・ヴェンデッタ」公式サイト
【マクノスケ】
事前の触れ込みで「第2次世界大戦後のパラレルワールドのイギリスが舞台」と聞いていたんですが、実際は「第3次世界大戦が勃発してアメリカがイギリスの植民地になっているという設定」で、移住者、異教徒、同性愛者、不治の病人など異端者が排除されるというファシズム国家となったイギリスにVと名乗る仮面をつけた男が現れ、政府の転覆を宣言!
これに関わることになったヒロイン・イヴィー(ナタリー・ポートマン)とVの過去にまつわる話が展開されます。従来のヒーロー物とは、多少異なった形を取りながらも、アクションシーンでは、CGと実際の動きを上手く合成して映像として魅せるという部分でも思いっきりツボでした。
作品中のキーワードとなる「ガイ・フォークス事件」や「岩窟王」「十二夜」「チャイコフスキーの1812」など事前に知っていればもっと楽しめたのになあーと自分の無知さを嘆きました。せめて「巌窟王」の主人公の名前を知っていれば、もっと感動出来たのが悔しい。
ナタリー・ポートマンは、これで「エピソード3」でついた悲劇のヒロインのイメージを払拭(名誉挽回?)したのではないかと思われる程、熱演!途中途中で泣かされる場面あり、最期の盛り上がりでも映画の中の人々と熱くなれるシーンありと、久々に自分の好きなジャンルで手応えありの作品と出逢えて嬉しさ倍増!帰りに「V」のマスク(お面)まで買ってしまいましたー!
あ、そうだ!最期に情けない話をひとつ。
事前にジョン・ハート(私的には「ヘルボーイ」のお父さん役をやっていたので注目していたんですが…)が出ているというので楽しみに見に行ったのに、最期のシーンまで気づかない私っていったい…??あれだけ映っていたにもかかわらずです。ホント、情けないなあ。
【マクタロウ】
「君たち、革命の血を絶やしてはいけない」
これは今から10年以上前、私が友人達と小さな焼鳥屋で飲んでいた時、隣の座敷(と言っても3畳ぐらいずつ衝立で仕切られているだけ)から突然乱入してきたお兄さん(70年安保の生き残りと言っていた)の言葉。
この作品を観終わって、最初に浮かんだのが冒頭の言葉だった。今時ちょっと珍しい作品ではないかと思う。
独裁的な政府の打倒を宣言し、次々に要人を暗殺するテロリスト「V」と、彼と係わってしまったために人生が一変してしまう女性イヴィー(ナタリー・ポートマン)。
Vは彼女の中に眠っていた本当の「心」を呼び覚ます(拷問まで加えてしまうところは凄すぎるぞ)のだが、本当に変わったのはVの方だったのではないかと思う。
彼は革命を叫んでいても、実際にやっていたことは「復讐」だった。自分(や多くの人)を実験台にして開発したウィルスにより、現在の地位を築いた政府中枢の人物。彼らを倒すことはイコール政府打倒となるが、目的と結果が逆転していたわけだ。
ところがイヴィーと知り合い、彼女を愛し、人との繋がりを思い出し、彼の目的が純粋な「革命」となったのではなかろうか。
だから列車のスタートはイヴィーに委ね、自らは死を覚悟の上で後始末へと向かったのだろう。(注:1)
イヴィーの「Vは皆であり、私であり、あなたでもある」というセリフには感動する。
はたして今の時代に「革命の血」は流れているのだろうか・・・。
(注:1)
ここまで書いてきて、ふとある人物を思い出す。
「シャー・アズナブル」
彼も復讐のために生き、ニュータイプによる革命を夢想し、最後はやり残した復讐の後始末を行う(最近「ファースト」と呼ばれているガンダム)あたり、かなりかぶっていると思うのだが。
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■はじまりは、純粋な友情の芽生えからだった。
[監]アン・リー
[原]アニー・プルー
[総][脚]ラリー・マクマートリー
[出]ヒース・レジャー ジェイク・ギレンホール アン・ハサウェイ ミシェル・ウィリアムズ
[制作データ] 2005米/ワイズポリシー
[上映時間] 134分・PG-12
■「ブロークバック・マウンテン」公式サイト
【マクノスケ】
ヒース・レジャー&ジェイク・ギレンホール主演で、'60年代に運命的な出会いを果たした2人の青年の20年に及ぶ愛の物語。
同性愛に関しては反対ではない私ですが、彼らの気持ちがわかるのかと言えば全然わからなかったりします…。なので、たとえば彼らの愛を男女の愛と置き換えて映画を見たとしても、ふたりのやっている事が「純愛」ではなく「不倫」なので、その辺が見ていて、ある意味きれい事ですまされない…彼らを正当化できない部分でありまして…ひと言で言うと複雑な心境でした。
前半の自然描写の美しさや主役ふたりの演技力など見甲斐のある映画なのですが、とにかくヒース・レジャーが可哀想…。ジェイク・ギレンホールに会わなければ、こんな人生を送ることがなかったんじゃないの?とか…たとえ、それが結果的に悲惨な事になっても、互いが精神的にも肉体的にも結ばれていれば、それは人生の1ページとして思い出として残るんではないかとは思うんですけど、どちらかと言うと、ジェイク・ギレンホールは行為そのもが目的と言う感じだったので、その辺が微妙な感じでしたね。
私が泣けたのはヒース・レジャーの奥さんがふたりの関係に気づくシーンと最期、ジェイク・ギレンホールのお母さんがヒース・レジャーにまた来て下さいというような事を言うシーン。どうしても女性の立場でみてしまいます。ジェイク・ギレンホールのお母さんも心中複雑だったと思いますが、それでも息子が愛した人としてヒース・レジャーを受け入れる辺り…ぐっと来ました。
エンドクレジットでランディ・クエイドの名前を見てビックリ!冒頭でふたりに羊の放牧の管理を任せるおっさん役で出ていたんですねー。弟・デニス・クエイド(メグ・ライアンと離婚後、04年に不動産屋の女性と再婚しております!)共々、頑張って欲しいですね。
【マクタロウ】
抑えた演出、美しい風景など、「格調の高い」画作りがされていると思うけれど、内容はと言うと・・・。
私としては、どうしても「男同士の愛」ってやつを理解することが出来ないのですよ。つまり登場人物に感情移入出来ないのだ。
同性愛を否定するつもりはないし、そういう方達がいるということもわかっている。だけど、男同士がキスをしたり、ベッドを共にする作品を観て、心地よいかというと「否」であります。
「人を愛するということは同じだ」と言う方もいるかもしれませんが、それでは同性愛という作品のテーマの意味が無くなってしまうと思うし。
仮に男女に置き換えてみたら、ただの不倫映画だしね(置き換えなくても不倫物だとは思うが)。
だけど、この不倫は男女のそれよりたちが悪い。奥さんだってダンナの不倫相手が女なら、なんとか張り合うなり怒りの持って行き場があったろうに、相手が男ではどうしようも無くなってしまうよなあ。離婚するしかないよね。
時代(1960〜70年代)も彼らにとっては辛い時季だったと思うし(でも彼らには「偽装結婚」という感じもしないし、両刀使いなんだよな)、大変だなということは分かるが、主人公達に感情移入が出来ないから、私が共感できるのは奥さんや子供達。本当に辛かったのは奥さんと子供だったのではないかね。
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■コンピュータ・セキュリティー 最大の弱点はそれを作った人間
[監]リチャード・ロンクレイン
[脚]ジョー・フォート
[出]ハリソン・フォード ポール・ベタニー バージニア・マドセン メアリー・リン・ライスカブ
[制作データ] 2006米/ワーナー
[上映時間] 106分
■「ファイヤーウォール」公式サイト
【マクノスケ】
闘うおやぢは健在だった!
家族を人質に取られたコンピュータ・セキュリティの専門家のハリソンおやぢと強盗集団との頭脳戦を描くサスペンスなのですが、もう最高!…とはいかないまでも、これが思いの外、ハリソンおやぢがアクションでも頑張っていてファンには嬉しい1本!久々に帰ってきたジャック・ライアン…って感じでした。(今回も名前がジャックだー!)
この主人公が何歳なのか不明ですが、奥さんや子供の年から考えると50代くらいの設定なのかしらん?塀を跳び越えるところで転けたりと…年を感じさせるような演出も随所にありましたが、それでも63歳のハリソン・フォードが演じるには、ちと無理があるんじゃないの〜と突っ込みつつも、特に後半の頑張りには、かつての勢いのある頃を彷彿とさせてくれて、そんな思いも吹き飛んじゃいましたよー。ハリソンおやぢもマンネリに負けず体力が続く限り頑張って欲しいです!強盗のリーダー役で「ダ・ヴォンチ・コード」のシラス役も楽しみなポール・ベタニーも好演。
しかし、パソコンやナビって便利なようで意外な弱点があるものだな〜とつくづく考えさせられた映画でした。…と言うか、それを使っている人間が狙われるって筋書きがなかなか上手かったですね。
【マクタロウ】
久し振りのハリソン・フォード作品。ここのところ、あまり面白そうな作品に出演しないのだよね。
主人公が事件に巻き込まれ、家族のために戦う図式は「パトリオット・ゲーム」とかぶる(本作の役名もジャックだ!!)。
でも、変に悪役(「ホワット・ライズ・ビニーズ」)をやるより、ずっと良いと思う。
お話は、犯人(ポール・ベタニー)が、銀行のセキュリティー責任者であるジャックの家族を人質にとり、高額預金者から(電子的に)金を奪おうというもの。
時代の流れで、今や現生ではなくバーチャルなマネーを奪おうと言うわけだ。
しかし映画的には現金を強奪する方が描きやすいし、見せ場も作りやすいだろう。そこのところを本作では家族の脱出失敗などを絡めて、なんとかアクションにもっていっている。
まあ、結局は反撃に出たジャックと犯人達との格闘で終わるわけだが、歳をとったハリソン・フォードが、その歳なりのアクションを披露しているところは、時の流れを感じるね。
素晴らしく面白い作品だった訳でもないが、久し振りに観たハリソン・フォードの新作というところで満足はした。
不満なのは終盤に活躍するジャックの秘書、そんなに重要な役ならもっと可愛いオネーチャンをキャスティング出来なかったかね?
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■2006. 3月 |
シリアナ / エミリー・ローズ /ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女 /
■ナルニア歴1000年−<その国>は春を奪われ、100年の冬に凍えていた…。
[監][総][脚]アンドリュー・アダムソン
[原]C・S・ルイス
[出]ウィリアム・モーズリー スキャンダー・ケインズ ジョージー・ヘンリー ティルダ・スウィントン
[声]リーアム・ニーソン
[制作データ] 2005米/ブエナ・ビスタ
[上映時間] 140分
■「ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女」公式サイト
【マクノスケ】
原作本を1巻だけ読んで見たのですが、ストーリーと言い世界観と言い、ほぼ原作通りに映像化されていて好印象でした。
最初から復活すると分かっていてエドマンドの身代わりとなり復活を遂げるアスラン…に、いまいち盛り上がれない部分もあるのですが、それは原作通りなので、ここは製作者の姿勢として、原作を重視したと言う事になるんでしょうね。
それを言うと、冒頭の疎開までのエピソードは、原作にはないのですが、エドマンドが空襲に遭いながらもお父さんの写真を撮りに戻るシーンの挿入はかなりイケていたと思います。この先に起こるエドマンドの行動に先だって、決して彼は悪い子ではない…と言う複線を貼るという意味でも成功していたのではないでしょうか。
それから少し気になったのは、白い魔女の設定でしょうか。彼女が魔力を使ってナルニアの住民を次々と石にして行ったのも、そもそも、ナルニアの創世記に裏切り者に死を与える権利を大帝から授かったからであり、そのために自分を次第に女王と思い込むようになったという理由があるのですが、映画では魔女=悪という図式で見せていたような気がしました。
あと、とても良かったのは子役の4人が実に生き生きとしていて、役柄もあってか、特にエドマンドとルーシーの子の芸達者な演技に魅せられました。あーあと、上半身裸に赤いマフラーがセクシーなタムナスさんでしょうか!もうイメージぴったりで、特に城で魔女からいじめられるところなんか良かったですね〜。最期にルーシーにハンカチを返す時なんか、もう、こいつーとか思っちゃいました。原作ではピーター達が成人した頃にやっと男盛りになるという設定なので、あー見えても、タムナスさんてば、まだまだ若造だったのねーとか思ってみたり…。(笑)
あとから妹親子も見に行った事を知ったのですが、小3の姪っ子が「よく調教されたライオンだねー!」と感心していたそう…。いやいや、これだけ聞いてもこの映画化は成功したと言っても良いのではないでしょうか…。私的にはリーアム・ニーソンの声にメロメロだったんですけど…。 (吹き替え版は津嘉山正種さんだそうで…やっぱりー!!)
【マクタロウ】
ああ、自分は年をとってしまったのかなあ。
私としては、どうしても「ナルニア国」という世界が見えてこないのである。
ライオンやオオカミ、ビーバーが人語をしゃべり、ケンタウルスやフォーンなどといった神話上の生き物たちが共存する世界。それはそれとして良いのだが、「タムナスさんが持っていた紙包みって、どこかで買ってきた物なのか?」「とすると、市場などが存在しているのか?」とか、「動物同士が話せる世界で、アスランは何を食べているんだろう?」などと下らないことばかり気になるのである。
本当に下らない揚げ足とりのようなものでしょう。だけど、こうした「世界感」がしっかりしていないと物語そのものもしっかりとしてこないのではないかと思う。
原作がそうなのだから仕方がないと言えばそれまでかもしれないが、アスラン復活のシーンなど数カ所の場面では、もっと盛り上げるような脚色、演出をしても良かったのではないだろうか。
エドマンドのために自ら犠牲となり死ぬアスランが、「復活できること」を知っていたのでは感動も薄いし、その死の場面を目撃するのもエドマンドの方がより感情に訴えることが出来たのでは?
それでも映画を観ている間は、それなりに楽しく観ることが出来たので、まあ良かったとも言えるのかもしれない。
一番良かったところをあげろと言われたら、末っ子ルーシーがタムナスさんと出会い、家へと招かれるシーン。
ルーシーの礼儀正しさは良かったかなってところが、ああ、自分は年をとってしまったのかなあ・・・。
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■この映画はホラーではない。実話である。
[監][脚]スコット・デリクソン
[製][脚]ポール・ハリス・ボードマン
[出]ローラ・リニー トム・ウィルキンソン キャンベル・スコット ジェニファー・カーペンター
[制作データ] 2005米/ソニー
[上映時間] 120分
■「エミリー・ローズ」公式サイト
【マクノスケ】
原題の「THE EXORCISM OF EMILY ROSE」(エミリーローズの悪魔払い)が示すホラーテイストの内容とは裏腹に、ここで描かれるのは「悪魔払い」に失敗して女子大生を死に至らしめた神父と彼を弁護する女性敏腕弁護士(「ミスティック・リバー」のショーン・ペンの奥さんの演技が迫真に迫っていたローラ・リニー!)の法廷ドラマだったりするのですが、これがタイトルが出る画面からして誠実で好印象。ホラーのテイストも醸し出しつつ、なぜエミリー・ローズ自身が死を受け入れたのかが判明するシーンでは、神懸かり的とは言え、彼女がすんなりと自分の運命を受け入れる純粋な姿にじわ〜っと来てしまいました。
他にもローラ・リニー演じるエリンが道ばたでロケットを拾う運命的なシーンも(本当かどうかは別にして)物語として巧みさを感じましたし、最期の法廷で彼女がそのロケットを胸に付けているところや、エミリーの純粋な信仰心、彼女のために懸命に尽くしたムーア神父にもぐっと来るものがありました。最初は名声を得るために弁護を引き受けたエリンが、真相に迫っていくごとに濃いメイクが影を潜め、汚れた物をそぎ落としていくように変貌して行く過程にも製作者の姿勢を感じ好印象でした。
ただ、俗っぽい言い方で言わせて頂くと、神様ってこんな形でしか存在を示せないって言うのも何かな〜と思ってみたり…。(笑)「最初からお前が出て来ればエミリーは苦しまなかったんだよー」って、無神論者の私の勝手な言い分なんですけどね。(笑)映画の前に「ダ・ヴィンチ・コード」の予告をやったのが意味深でしたねー。
【マクタロウ】
法廷物とホラーを組み合わせて、1本の作品にしてしまった。アメリカ映画はやってくれる。
実話を元にしているのだから、その組み合わせは必然だったのかもしれないが、別々のジャンルを組み合わせて面白い物を創ろうという姿勢は素晴らしい。
しかも、出来上がった作品がキワモノではなく、真面目なものだったところに好感が持てる。
物語は、「悪魔払いを行った神父は有罪になってしまうのか?」という法廷ドラマで進んでいくが、家族や友人の証言を再現する形でおぞましい映像が挿入され、ホラーファンに対する配慮も怠りない。
しかし、私が作者のバランス感覚が素晴らしいと感じるところは、それらの超自然的な現象は検察側によって、ことごとく解明(説明)されていくところである。
特に象徴的だったのはエミリーの両手の平に出来た「聖痕」だ。検察側によれば、これは家の回りに張られた有刺鉄線によるものだと主張される。
そう。オープニングのタイトルバックにあった「血の滴る有刺鉄線」、あれである。この作品がキワモノのホラーではないことはオープニングから示されていたのだ。
裁判の結果も、神父は有罪となるものの、刑期はその場で終了。勝負で負けて実を取った形で終わる。
エミリーが本当に悪魔に憑かれていたのかどうかは分からないが、神父とエミリーの信頼関係に疑いの余地はなかったということだろう。
それにしても、終盤で読み上げられるエミリーの手紙。神様ってお方は何をお考えなのでしょうかねえ。(もし、その手紙に書かれていたことが本当ならば)神の存在を証明するために、悪魔の存在を証明させる。これは彼女を生け贄にしていると言っても良いのでは。
神様自らが現れれば一発で解決するのに・・・。
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■地球は陰謀でできている。
[監][脚]スティーブン・ギャガン
[総][出]ジョージ・クルーニー
[総]スティーブン・ソダーバーグほか
[出]マット・デイモン ジェフリー・ライト クリス・クーパー
[制作データ] 2005米/ワーナー
[上映時間] 128分
■「シリアナ」公式サイト
【マクノスケ】
シリアナとは、イランとイラク、そしてシリアがひとつの民族国家を形成した場合の想定国家の名前。
物語はアラブ某国の王位継承者であるナシール王子(アレクサンダー・シディグ:「スタートレック・ディープスペースナイン」リス・クーパー)や、石油会社の弁護士たちの醜い利権争いを中心にその事件に巻き込まれていくエネルギー開発の専門家(マット・デイモン)や王子暗殺の命を受けたCIAのエージェント(ジョージ・クルーニー)が事件の真相に迫っていく過程をサスペンスフルに描いた社会派の問題作。
ロバート・ベアによる自らの著書『CIAは何をしていた?』を元に「トラフィック」(未見です)でアカデミー賞を受賞したスティーブン・ソダーバーグチームが製作したこの映画は「トラフィック」同様、それぞれの登場人物の物語が並行して進み、やがてひとつになっていく…という手法で描かれていて、ともすると、おいてきぼりになってしまいそうになるのですが、所々にジョージ・クルーニーやマット・デイモンの家庭の様子なども描かれ、物語としての面白さも巧みに挿入していたところに救われた感じです。
弁護士や石油会社のトップの傲慢さに、昨年見た「ロード・オブ・ウォー」を重ねながら見ましたが、この中に登場するパキスタンから出稼ぎに来ている父子の息子が「イスラム神学校」と称する学校で知らず知らずにテロリストとして洗脳されていく過程が恐ろしくもあり、「正義」と思いながら死んでいく姿にやりきれなさを憶えました。
この映画に登場するナシール王子のような公明で真摯な思いを持っている権力者が、いれば世界はもう少しまともになるのでしょうが、それを出来ないのが人間なのでしょうか…。とても切ない気持ちでいっぱいです。「スタトレ」好きとしては、このような王子の役を「ベシア」さんが演じてくれて、なんだか嬉しかったりしています。
【マクタロウ】
この作品は、組織にとっての「捨て駒」又は「邪魔者」達の物語である。
組織内で不正やミスが発覚した時、スケープゴートとして出される名もない人々。黒幕は決して手を汚さない。
ミスを犯したCIAの工作員は殺人の容疑を掛けられ、そうとは知らずに自ら死地へと赴く。
ペルシャ湾で石油会社にリストラされたアラブ人の青年は、理想郷のような農園でイスラムの教えをテロリストの教育として植え付けられ、やがて・・・。
自分の上司をスケープゴートとして差し出した石油会社の顧問弁護士、彼も明日は我が身ではなかろうか。
アラブにとって理想的な思想を持ち、本気でアラブ人のために立ち上がろうとする王子はアメリカにとっては邪魔者。彼も排除される運命にある。
息子の死をきっかけに、その王子と懇意になる経済アナリスト。彼は息子の死、仕事をめぐり家庭崩壊の危機に陥るが、王子の死後、家庭に帰る。
壮絶な暗殺場面の後に来るこのシーンは、観客にほんの少し、ほっとした気持ちを与えてくれる。
しかし、彼とて、第一線に復帰することがあるのだろうか・・・。
アメリカが石油の利権を得るために何をしているか。組織が利益を得るために何をするのか。
組織に翻弄された者達の物語に、憤りと虚しさを感じる。
しかし、最も虚しいのは、何度同じ過ちを犯しても一向に改めるところがない、超大国アメリカの姿勢だろう。
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■2006. 2月 |
ミュンヘン / PROMISE / ナイト・オブ・ザ・スカイ / アサルト13 要塞警察 /ウォーク・ザ・ライン 君につづく道 /
■型破りなラブストーリー、これは真実の物語
[監][脚]ジェームズ・マンゴールド
[出]ホアキン・フェニックス リース・ウィザースプーン ジニファー・グッドウィン ロバート・パトリック
[制作データ] 2005米/FOX
[上映時間] 136分・PG-12
■「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」公式サイト
【マクノスケ】
ホアキン演じる伝説のミュージシャン、ジョニー・キャッシュと彼の2度目の奥さんジューン・カーターのなれそめが2時間16分に濃縮されているのですが、予告では10数年間、40回に渡るプロポーズの末、やっと結ばれると言っていたので、それはいったいどういう理由があったんじゃい?…と興味津々の私だったわけですが…
クスリ漬けの上、奥さんと子供がいればねえ…ってところなんでして、まあ、ジューンとしてもキリスト教徒の一家で、2度の結婚に失敗しているので慎重になっているというのもあったんでしょう。映画はジョニー中心に描かれますから、こちらとしてもジョニーとジューンを応援しちゃいますけど、やっぱりこういう場合ってつくづく奥さんが可哀想だなーと思ったりしました。
幼少の頃からジョニーに辛く当たる父親(ロバート・パトリック=ターミネーター2のT-1000!)を見て思わず「指輪」のファラミアを思い出してしまった私でしたが、やっぱり、これはキツい!ああ会う度に嫌みを言われてたんじゃ堪らないですよ。で、一番泣けてしまったのが、感謝祭で一騒動あった後、引き上げようとしたジューンに彼女の母親が「あなたまで見捨てるの?」と言うシーン!これは泣けました。ある意味、この一言があったからこそ、ジョニーとジェーンは別れることなく、ジョニーは救われ、やがて結ばれたのだと思います。しかし、あのプロポーズの舞台を見る事が出来た人は幸せでしょうねー。ファン冥利に尽きるんじゃないのかなあ。
それからジョニー自身も生前、自分の役はホアキンにやって欲しいと言っていたそうですが、パンフレットにその理由が書かれていまして、「グラディエーター」でホアキンが演じた皇帝の大ファンだったそう。私はてっきり、兄リバーを目の前で亡くしたホアキンと自身の境遇が似ているからかと思ってしまったのですが、まあ、そんなこんなを思いながら見ると、余計冒頭から泣けてくる映画だったりしました。映画を見て彼が刑務所で行ったライブを聴いてみたくなりました。
【マクタロウ】
リズムのある映画は好きだ。「どついたるねん」は、タイトルが出る、あの「ダン!ダン!ダン!」といったリズムで全編が彩られている。これが好きなんだ。
ミュージシャンの伝記映画だったら、尚更リズムは重要な要素になる。
本作は、オープニングである刑務所ライヴのシーンでヤラレタ!!
主役、ジョニー・キャッシュ(ホアキン・フェニックス)の登場を待ち望む囚人達が打ち鳴らす手拍子、足拍子、バンドメンバーのベース、ドラム、ギターが織りなすリズム。カッコイイオープニングで一気に作品世界へ・・・。
物語は回想となり、ジョニーの少年時代(トラウマとなる、敬愛する兄の死、父との確執)ミュージシャンとしての成功(ジューンとの出会いを描くライヴで歌う「ゲット・リズム」は、ライ・クーダーのカバーをCDで聴いていたので「ああ、この人の歌だったのか」と)、そして薬物中毒、離婚という、まあ、言ってみればミュージシャンらしい(?)生き方をしていく。家族さえ愛想を尽かしかけたところで、ジョニーを見捨てなかったジューン。
ジョニーが立ち直る事が出来たのはジューンの愛だったというのが、本作のキモだろう。(もう一つは、初めてのオーディションでスタジオの社長が言う「自分の歌いたい歌を歌え」というアドバイス。歌に限らず、作品を創り出す全ての人にとって重要なことだ。)
ジューンも、数度の結婚の失敗のより、「結婚すること」「愛すること」に臆病になっていたが、ステージ上でのジョニーからのプロポーズ。
それまでに何度も「結婚しよう」と言っていたが、今度こそ本気。これではジューンも「イエス」と言うだろう。
やっと二人はお互いを正面から見つめ合うことが出来たと言うことではないだろうか。
主役二人の歌唱力に驚き、ロックのリズムと共に爽やかな余韻を残す、なかなかの佳作でした。
追記:刑務所でのライヴCDを聴きたくなったのは言うまでもありません。
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■脱出劇アクションの頂点、遂に誕生!!!
[監]ジャン=フランソワ・リシェ
[製][脚]ジェームズ・デモナコ
[出]イーサン・ホーク ローレンス・フィッシュバーン ジョン・レグイザモ ガブリエル・バーン
[制作データ] 2005米/角川ヘラルド
[上映時間] 110分
■「アサルト13 要塞警察」公式サイト
【マクノスケ】
カーペンター先生(好きなんですよー!)のデビュー作「要塞警察」(←未見ですが…)のリメイク。謎の集団に襲撃された警察署で、警官と犯罪者たちが協力し合い、必死に抵抗する姿をフランスの新鋭ジャン=フランソワ・リシェ監督がじっくり描いているんですが、私の目的はジョン・レグイザモとガブリエル・バーンですよーぉ!
レグイザモ、気になる俳優さんの一人なんです。もうちょい役でも萌えですよ。「エンド・オブ・デイズ」とか「ムーラン・ルージュ」とか「エグゼクティブ・デシジョン」とかね。小さい役の方が萌えるんですが、今回はヘアースタイルもおしゃれで、さらに萌え度120%!もう最初から、絶対死ぬよってキャラで(笑)どうやって死ぬのかとワクワクしていたんですが、やっぱり死にっぷりも素晴らしい!思った以上に出番があって良かったデス。マクタロウ曰く「これってスティーブ・ブシェミがやる役なんじゃないか?」って、それ!当たっています!思わず「アイランド」思い出しました!
で、ガブリエル・バーンは顔が好きなんですが、うーん。これもねえ。ある意味キャステイングで正体バレバレって言うか話の筋が読めちゃうところが残念と言えば残念なんですが、それはまあ良いとして、これもマクタロウの弁なんですが「この役、最近アルパチーノがやる役と被ってない?」あ…、当たってる!!って言うかガブリエル・バーンがやっている役も最近、こんなのばっかりのような…。それを言うと主役のイーサン・ホークがどーもトム・クルーズとダブる困ったちゃんの私なんですが、映画の冒頭から、なかなか良い演技をみせてくれてサンクスって感じでした。あとはマクタロウと同い年のローレンス・フィッシュバーンも濃い演技で、この映画、俳優を見るだけでもお腹いっぱいになっちゃう面白さ。
いや〜久しぶりにノリノリで楽しめた1本でしたが、てっきり「アサルト13」っていう要塞のような警察が舞台のお話だと思っていたら、原題が「Assault on Precinct 13」。「13分署の接近[白兵]戦」って意味らしいじゃないですか。それだったら「要塞警察・13分署」とか「新・要塞警察」で良かったんじゃないですかねえ。
【マクタロウ】
オリジナル(ジョン・カーペンター監督作)を観たのは何年前のことだろう?テレビで1度観たきりなので細かいことは覚えていないですけど・・・。
最近のアクション映画の中では、上出来の方ではないかと思う。
主演のイーサン・ホークをはじめローレンス・フィッシュバーン、ブライアン・デネヒー、ガブリエル・バーン(制作費があればアル・パチーノがやりそうな役)、ジョン・レグイザモ(スティーヴ・ブシェミがやりそうな役)など曲者を集めた配役が良い。
それぞれのキャラクターも(それなりに)描いているので、作品世界に入り込みやすいのも良かった。
しかし、悪役をストリート・ギャングから汚職警官に替えたことで、最新の装備を使った派手なアクションが可能になったことと引き替えに、説得力は無くなってしまった。
ヘリコプターまで出動しているのだから、警察の内部で「何か事件が起きているのか?」と気づく人もいるのでは?
最後の脱出口である下水道も、それまで「忙しくて、忘れていた」ですませていいのか?この辺りの「脚本の弱さ」が無ければ、もっとスッキリと観ることが出来たのではないかと思う。
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■音速の世界を体感する“衝撃の100分”
[監][台]ジェラール・ピレス
[出]ブノワ・マジメル ジェラルディン・ペラス クロビス・コルニヤック アリス・タグリオーニ フィリップ・トレトン
[制作データ] 2005仏/UIP
[上映時間] 100分
■「ナイト・オブ・ザ・スカイ」公式サイト
【マクノスケ】
小田原のTOHOシネマズで見てきました。マクタロウがとにかくミラージュ(戦闘機です)の飛ぶ姿を見たいって言うんで…。
始まって2分くらいで、いきなり音声が切れ、前の座席の人が係の人に事態を教えに行ったので、てっきり最初から上映するのかと思って真剣に画面を見ていなかったのが失敗でしたーっ!(>_<)音声は復活したのですが、上映はそのまま続行したので、まともに映画に没頭出来たのが、仏空軍の戦闘機パイロット、アントワーヌとセバスチャンがジェット機の下の謎のミラージュに気がつく辺りから。どうやらこの間に、敵キャラ(!)の紹介とミラージュが盗まれるまでが描かれちゃったらしいのですよね。
それでも、まあ、なんとか話には付いていく事が出来たのですが、やっぱりミラージュの飛行シーンはマクタロウじゃなくてもため息ものでした。特にアルプスを飛ぶシーンは荘厳で思わずうっとり。ストーリーはミラージュ事件で仏空軍を去ったアントワーヌとセバスチャンが、事件の謎に迫るため、特殊任務部隊(SMS)に加入し、アメリカのF16とアフリカ大陸縦断レースに参加。そのままフランスサミットに突入してラストの大立ち回りがあるのかと思っていたら、おやーってな展開に。主人公も意外なお相手とくっついちゃうし、最期まで予測不能だーと思っていたら、終わってないじゃないですかー!これって続き物だったんですねえ。知らなかった〜。
コミックの映画としてはおととしの「ミシェル・ヴァイヨン」同様面白かったですね。さすが「トップガン」の原型コミックだけはあります。しかし主人公を演じたブノワ・マジメルの髭はない方がカッコよかったんじゃないかなあ。本人は威厳を出すために生やしたそなんですが…。それから、主人公の相棒のセバスチャンを演じていたのが、「ロング・エンゲージメント」で髭の兵士を演じていたクロヴィス・コルニアックだったそうで…。(帰宅してから調べているうちに判明!)私がいかにフランス映画に疎いかバレバレですねー。(*^_^*)
【マクタロウ】
久し振りに「大画面を飛び回る航空機」を堪能してきました。
しかし、これはもうダッソーの、と言うかミラージュのプロモーション・ムービーですね。それくらいミラージュの映像は存分に楽しめます。
言い方を変えると、そちらの方に興味のない方にとっては、ちょっと辛い作品かもしれませんな。
おしゃれなオープニングから気分は盛り上がり、ファンブロー航空ショーで盗まれたミラージュとの空中戦に興奮。その後も航空機の飛びっぷりには、ただただ感動。
ラストに向かって見せ場がしょぼくなってしまう(さすがにパリ上空でのドックファイトは無理だよね)のは残念だが、極力合成を廃した画面は良いね。
おまけ(?)としてコルセアの上で踊るオネーチャン(基地に併設されている博物館?)や、ド派手な塗装のピラタス・ターボポーターなんてものまで観られます。
お話の方は、無理があるのは良いとしても、ちょっと説明不足な感じは最近のフランス製アクション映画の定番か?
制作当初から続編の予定があったのか、事件が解決していないのはスッキリしないなあ。
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■愛で運命を超えろ
[監][脚]チェン・カイコー
[製][出]チェン・ホン
[撮]ピーター・パウ
[音]クラウス・バデルト
[出]真田広之 チャン・ドンゴン セシリア・チャン ニコラス・ツェー
[制作データ] 2005中/ワーナー
[上映時間] 121分
■「PROMISE」公式サイト
【マクノスケ】
女神と富や美貌などと引き替えに真実の愛を交換してしまった少女がやがて王妃となり、その後に出逢う3人の男達との間に繰り広げられるドラマを映像美とワイヤーアクションを用いて映像化した中国をベースにしたファンタジー映画。
予告に登場する人間サイズの鳥かごやチャン・ドンゴンが凧のようにヒロインを挙げながら屋根の上を爆走するシーンは、てっきりイメージ映像なのかと思っていましたが、然にあらず…。こんなのは序の口だったのですねー。お話は例えて言うと「杜子春」のような感じでしょうか。ヒロインと男3人(将軍の真田広之、奴隷のチャン・ドンゴン、公爵のニコラス・ツェー)全てに焦点を当てているのが、返って面白味を半減させていたようにも思いました。それよりも本筋には関係のない刺客のリウ・イェの方が印象に残ってしまったりして。スライドするふすまのアクションシーンは見物でした!
音楽は「パイレーツ・オブ・カリビアン」のクラウス・バデルト。かなり曲に助けられているようにも感じましたが、それは私がこの映画の冒頭で、このあまりにもファンタジックな(いや、漫画的な?)演出にビックリしてしまったからかも。
とにかく一番の見どころはチャン・ドンゴンの走りですかねー。着地も凄かったけど!
【マクタロウ】
ファンタジー作品だとは知っていたけど、その映像表現が「笑い」と紙一重(いや、どうしても笑ってしまう)なものだから、どうも真剣に観られませんでしたね。
超人的な身体能力を持つ「雪国(族?)」のチャン・ドンゴンが、四つ足で牛よりも早く走り、更に崖を駆けるシーンに至っては「未来少年コナンかよ」と心でツッコミを入れましたよ。
「グリーン・デステニィ」や「HERO」などで、ワイヤー・アクション&CGで描かれるチャイニーズ・アクション・ムービーの免疫は出来ていても、この作品の「やりすぎ映像」は、もうついていけません。
クラウス・バデルトのパーカッション主体のアクション・スコアが無かったら(音楽は良かった!!かなり燃えた)、本当にどうなっていたかと・・・。
制作者はあのような映像が「カッコイイ」ものだと思っているのかなあ?
まあ、そうは言っても色遣いの美しさなどは「さすが」と思わせるものはありますし、登場人物のキャラクター(「黒衣の男」とか「公爵」)も面白いのですがね。
だけど「この作品の見所は?」と聞かれたら「チャン・ドンゴンのコナン走り!!」と答えちゃうかも。
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■1972年のオリンピックで11人のアスリートが殺された
深い悲しみを胸に、愛する家族を残し、彼は暗殺者となる−
わたしは正しいのか?
[監][製]スティーブン・スピルバーグ
[脚]トニー・クシュナーほか
[音]ジョン・ウィリアムズ
[出]エリック・バナ ジェフリー・ラッシュ ダニエル・クレイグ マチュー・カソビッツ
[制作データ] 2005米/アスミック・エース
[上映時間] 164分・PG-12
■「ミュンヘン」公式サイト
【マクノスケ】
「ターミナル」「宇宙戦争」などに比べると、かなりの手応えを感じる作品である事は間違いありませんが「シンドラーのリスト」同様、そう何回も見たい作品かどうかと言えば、164分と長い上、内容がハードなだけにどうかなーと言ったところ。
1972年。ミュンヘンオリンピックでパレスチナゲリラ、ブラック・セプテンバーに殺された11人のアスリートの報復のため、イスラエル政府は特殊部隊モサドに所属していた5人のメンバーに暗殺を依頼。映画は暗殺を繰り返すメンバーの姿を丁寧に綴って行くのですが、これがサスペンス映画としても楽しめ、暗殺の手助けをする情報屋のパリのマフィア(?)・ルイの存在も映画にアクセントを沿えていて面白かったです。スピルバーグ監督が国歌=家としての比喩に彼や彼の家族を登場させてくれたおかげで、国家(家)と国民(家族)の関係を…よりわかりやすく理解する事が出来て助かりました。
報復を否定するだけでは終わらない、次世代のイスラエルの若者に未来を託すと言うスピルバーグ監督の姿勢には大いに共感させられましたし、国を失ったパレスチナのメンバーの1人が言う「自分たちは帰るところがない」という言葉がずしんと胸に突き刺さりました。
ところでこのモサドのメンバー、リーダーを演じているのは「トロイ」のエリック・バナなんですが、ナンバー2的な存在のスティーヴを新007に決まったダニエル・グレイグが好演。意外なオチの爆弾屋を「クリムゾンリバー」の監督・マチュー・カソヴィッツが演じており、へ〜と思っていたんですが、な、な、なんと!かたずけ屋のカールを「トータル・フィァーズ」でロシアの大統領を演じていた(←この時ちょっと惚れた!)キアラン・ハインズが演じていたんです!!あ〜知らなかった!知っていればもっとじっくり見ていたのに〜と後悔することしきりでございました。
【マクタロウ】
スピルバーグがまじめに仕事をしたのは「プライベート・ライアン」以来でしょうか。
「シンドラーのリスト」は、彼がユダヤ人であるが故の作品だったのだが、本作も同じくユダヤ人、イスラエルに材をとりながらも、テーマとしてはよりグローバルなところにもってきている。
ミュンヘンオリンピックに於ける「黒い九月」によるイスラエル選手団襲撃。それに対するイスラエルの報復。
暗殺部隊として選ばれたのはモサドの5人の男達。彼らは祖国から存在を抹消され、国のために働く。主人公であるアブナー(エリック・バナ)はその隊長を命ぜられるが、彼らは暗殺に関しては素人だった。
そんな彼らが初めて暗殺に成功した時、祝杯を挙げ、カフェではしゃぎ、踊る。だが、場数を踏むにつれ彼らの顔からは笑みが消え、「殺す」ことだけが目的の、真の暗殺者となっていく。
しかし、暗殺は次のテロを呼び、殺した人物以上に過激とされる後任者が来る。憎しみから始まった報復合戦は憎しみしか生み出さない。やがてアブナー達も「無名な有名人」となり、仲間が1人、また1人と殺されていく。
スピルバーグは、このむなしい戦いを緊張感たっぷりに描いている。
物語中盤、フランス人情報屋の策略(?)によりPLOの数人とアジトを共有する場面。ここでのパレスチナ人リーダーとアブナーとの会話は印象的だった。
人間、主義、主張、人種は違えど個人個人が顔を突き合わせて話し合えば、もしかしたら分かり合うことが出来るのではないかという希望も感じられる。肝心なのは「相手を思う気持ち、相手の身になって考えることが出来る心」なのではないだろうか。
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