のほほん映画観賞備忘録・2006年5月〜8月

SF・アクション映画が大好きなマクノスケ&マクタロウの映画鑑賞備忘録です。
ふたりで「のほほ〜ん」と感想を語っています。


■2006年 5月〜8月  基本的にネタばれしておりますので御注意を!
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  【2006】/1月〜4月/5月〜8月/9月〜12月

  【5月】立喰師列伝 /ナイロビの蜂 /グッドナイト&グッドラック /ダ・ヴィンチ・コード /
  【6月】史上最大の作戦 /GOAL! ゴール! /オーメン /インサイド・マン /バルトの楽園 /ウルトラヴァイオレット /
  【7月】カーズ / サイレントヒル / ブレイブ ストーリー / 日本沈没 / M:i:III / ゲド戦記 /
  【8月】パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト / 花田少年史 幽霊と秘密のトンネル /
          スーパーマン リターンズ
■2006. 8月
  パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト / 花田少年史 幽霊と秘密のトンネル /
  スーパーマン リターンズ

スーパーマン リターンズ 2006.8.26.(Sat.) 
■この夏真打ちは、最期にやってくる!!

[監][案][製]ブライアン・シンガー
[総]クリス・リーほか
[製]ジョン・ピータースほか
[出]ブランドン・ラウス ケイト・ボスワース ジェームズ・マーズデン ケビン・スペイシー
[制作データ] 2006米/ワーナー [上映時間] 154分
■「スーパーマン リターンズ」公式サイト

【マクノスケ】
「X-MEN」を蹴ってまで「スーパーマン」を撮っただけにブライアン・シンガー監督気合い充分!ひょっとして「X-MEN」より良い仕事していたかもしれないですね。「X-MEN」では主要メンバーが多く、それぞれの見せ場を生かし切れなかったのではないかと思っていましたが、「スーパーマン」では、長い時間を掛け、アクションやら細かいエピソードを展開して物語を語り尽くした…という感じ。
ただロイスの事で少々疑問に思う点が1点。ネタばれになるので書けないのがもどかしいのですが、映画を見たあとマクタロウに話したら「そうだよなあ〜。」と言っていたので、疑問に思った方は他にもいるはず…。

音楽もジョン先生の曲を直球で使ったり、アレンジしたりジョン・オットマンの器用な曲作りには好感が持てました。
役者さんでは、主役のふたり(オーリーの彼女のケイト・ボスワース。初見だったので、この人が…オーリーの彼女なの〜的なおばさん感覚で見てしまった!)も気になりましたが、特に気になったのが、ロイスの旦那役のジェームズ・マースデンですよー! X-MENでサイクロップスの役をやってるんですが、これがねえ。またしても三角関係で、どうしたらいいのよーって役なんですよ!!もう、第2のビル・プルマンじゃないかしらと…「X-MEN3」の展開が、ちょっと不安だったりするのは「X-MEN」の映画ファンの私だけかしら?(涙)

以下は野暮な話ですまないんですが、「2」で、スーパーマンと過ごした日々の記憶を全部消されてしまったロイスが、妊娠を知った時、どういう心境だったんでしょうか?もしかしたらお腹にいる時から「動き」が、凄くて「普通」の子ではないと気がついたとか…?でも、スーパーマンが力を失っていた時に出来た子だし、 人間とのハーフだから、スーパーパワーも、そこそこだったりするんでしょうか?



【マクタロウ】
まず驚いたのがこの作品、リメイクではなくクリストファー・リーヴ版の続きだと言うこと。
なるほど、主役の役者を始めデイリープラネット社の外観、悪役レックス・ルーサー(ケビン・スペーシー)まで旧作のイメージを引っ張ってきている。
おまけに、オープニングのクレジットもストリークを使用し、テーマ曲がジョン・ウィリアムズの「あの曲」とくれば、それだけでも興奮。
帰ってきたスーパーマンの最初の活躍など(シャトルを救うシーン)は、最近あまりお目にかかれない単純明快なヒーロー像を観ることが出来て感激した。
だが内容的にはクラーク・ケント(スーパーマン)よりもロイス・レーン一家(!!)の方にドラマがあり、しかも「2」を観ていないと、ロイスがいつ妊娠したのかが分からないというのはどうだろうか。
もう一つ気になったのが、レックス・ルーサーの凶悪さだ。力を失ったスーパーマンを殴る、蹴る、最後はクリプトナイトでスーパーマンの背中を刺すのは驚いた。かつて鎖で首に下げ、失敗した事への反省か?
色々とツッコミ所がある作品だが、154分という長さを感じさせる事も無かったので自分としては楽しんだと言えるのだろう。
ただ、ラストは寂しすぎる。せめてルーサーを捕まえて来て欲しかったなあ。



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花田少年史 幽霊と秘密のトンネル 2006.8.20.(Sun.) 
■幽霊に出逢って、家族の絆を知った、不思議なひと夏。

[監]水田伸生
[原]一色まこと
[脚]大森寿美男
[音]岩代太郎
[歌]サンボマスター
[出]須賀健太 篠原涼子 西村雅彦 北村一輝 安藤希 杉本哲太 もたいまさこ
[制作データ] 2006松竹 [上映時間] 123分
■「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」公式サイト

【マクノスケ】
アニメにもなった一色まことの同名漫画の映画化。事故で幽霊を観ることが出来るようなった主人公花田一路。知られざる両親の秘密や幽霊との交流を描くヒューマン・コメディ。
アニメで1〜2話見たことがあるんですが、舞台はかなり昔だったような…。それを映画では現代の漁村に舞台を移しているんでしょうか。髪型やテレビのネタなど漫画から持ち越したようなんですが、一路の両親の話は映画オリジナルなんでしょうね。

全体的にはかなり「泣かし」のシーン連発で悪くはなかったとは思うんですが、ぐだぐだと長いシーンが目に付き、せっかくの感動も薄れがち。一路が主人公の割には、同級生の壮太や桂の方がむしろ目立っていたのもどうかなあと。役者は「戦国自衛隊」で飯沼七兵衛を演じていた北村一輝が、これまたよく合ってる役で出ていたのが儲け物でした。あとは「さくや」の安藤希ちゃんの24歳のセーラー服姿がまぶしかった!!
で、おたくな私としては漁師役で春田純一さんが出ていたのが嬉しかったなあ!!青春時代「アクマイザー3」や「ジャッカー電撃隊」で主人公のスーツアクターとして活躍していた春田さん!(その頃は本名の「春田三三夫」表記だった!)今調べたら「ハチミツとクローバー」とか「男たちの大和」にも出ていたのね。頑張ってたんだー。良かった!良かった!



【マクタロウ】
原作もアニメも観ていないので、それらとの比較は出来ません。
事故により幽霊を見ることが出来るようになってしまった少年、一路。彼の回りに現れる幽霊の正体は・・・というミステリー部分が彼の家族、友人を絡めて語られていくのだが、どうにもテンポが悪い。
感動を誘う良いシーンも多いのだが(最もグッとくるのは運動会のシーンだろうか)、演出に切れが無く1シーンがダラダラと長いために、観ているコチラとしては飽きてきてしまう。
最後の幽霊との別れもやたらと長く、一路を抱えたままの父の事が気になって感動どころではなかった。
また、ドラマは主人公の回りの人物(友人、両親、幽霊)ばかりにあり、主人公はそのドラマを語るための狂言回しにしかなっていないのも良くない。
題材や役者は悪くないので、うまく作れば笑って泣ける上質の娯楽作品になったかもしれない



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パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト 2006.8.6.(Sun.) 
■さらば、ジャック・スパロウ−

[監]ゴア・バービンスキー
[製]ジェリー・ブラッカイマー
[脚]テッド・エリオットほか
[出]ジョニー・デップ オーランド・ブルーム キーラ・ナイトレイ
 ビル・ナイ
[制作データ] 2006米/ブエナ・ビスタ [上映時間] 151分
■「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト 」公式サイト

【マクノスケ】
すっかり「1」の細かいストーリーを忘れちゃっていたのですが、これがちょっと不味かったかなあ。 「あれ?この人?観たことが…」「あー!そうか!あの片眼が義眼の手下かー!」「うん?待てよ?前回船長どうなったんだっけ?」「あー!!そうかー!!」とかね。よく設定もわからないまま、次から次へとくりださせれるアクションとギャグに乗っかってそれなりに楽しんできました。 いやーだけど、やっぱり予習はしておいた方がもっと楽しめたハズ…。

日本の宣伝やポスターなどで、もしかしてジャック(ジョニー)が主人公になっちゃったのか?…と思い込んでいたら、ちゃんとウィルが活躍していてくれて嬉しかった!いろんなところで言われているますが、なにやら「スター・ウォーズ旧3部作」のような展開も臭わせてますが、(つーことは、ウィルがルークで、ジャックがハン、エリザベスがレイア!つーことは結ばれるのは…!!)父と息子のくだりは、ちょいと萌えましたねー。うふふ。オーリーも好きだけど、おやじ好きの私はステラン・スカルスガルドさんにも惹かれるんですねー。デイヴィ・ジョーンズ のビル・ナイさんも好きなんですけど、ほとんど顔がわからないのが残念だった。(私はジョニーは好きですが)この映画に関してはこの3人のその後を観たいがために「3」も行くつもりですよー。

期待のタコとデイヴィ・ジョーンズ&海系海賊のメイクは、特殊メイク好きの私としては乗りまくりでしたねー。呪術師(?)のティア・ダルマの家の外観が「カリブの海賊」の入ってすぐ左手のところにある小屋と同じような感じだったところや、酒場で女を追いかけ回す男や井戸にくくられて引き上げられたおっさんが水をぴゅーと出すところもアトラクションファン心をくすぐられてグーでした。
まあ、あとは、音楽なんですけど、今回ハンス・ジマーがクレジットされてますが、前回の曲、かなり出てきますよねえ。出来たら前作のクラウス・バデルトの名前もいっしょに出しても良かったんじゃないかと思うんですけどねえ。あれは実は俺がやった発言だけはしないで欲しいですよー。本当にお願いします。ジマーさん!



【マクタロウ】
1作目も、とびきり面白かったわけでもないので「それなり」の出来であろうと思い劇場へ。
やはり出来の方はそれなり。1作目と変わらぬと言うと立派そうに聞こえるが(多くのPart2は「1」より出来が悪いものだ)「1」のレベルからすると褒められたものでもない。
多数出演のクリーチャーは出来も良く見応えがある。手を変え品を変えてのチャンバラもたいしたもの。なんとか新しい見せ場を作ろうという意欲は感じられる。
だが、海戦シーンは「1」の方が面白かったように思う。怪獣相手より船同士の撃ち合いの方が好みだからだけど。
ストーリーは「1」の設定の多くを忘れていたので、よく分からない部分もあり。相変わらず尺が長いのは辛かった。



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■2006. 7月
  カーズ / サイレントヒル / ブレイブ ストーリー / 日本沈没 / M:i:III / ゲド戦記 /

ゲド戦記 2006.7.29.(Sun.) 
■見えぬものこそ。

[監][脚]宮崎吾朗
[原]アーシュラ・K・ル=グウィン
[プ]鈴木敏夫
[歌][声]手嶌 葵
[声]岡田准一 田中裕子 小林薫 夏川結衣 香川照之 内藤剛志 倍賞美津子 風吹ジュン 菅原文太
[制作データ] 2006東宝 [上映時間] 115分
■「ゲド戦記」公式サイト

【マクノスケ】
ル=グウィン原作(全6作)のファンタジー巨編のアニメ化。 島と海の世界、アースシー。ある日、西の果てに棲む竜が人間の住む東の海に現れ、同時に世界中でさまざまな異変が起こるようになる。災いの源を探る旅に出た大賢人ゲドは、道中で国を捨てた王子アレンと出会う。(eiga.com解説より)

見た直後は「ハウル」より面白かったかなーと思ったんです。ところどころ、「なぬー!!」と声を上げたくなる場面もあるし、「それってどういう事?」とツッコミたくなる展開もあるんですが「ハウル」よりはまとまっていたし、お話として成立してるんじゃないかと思ったわけなんです。 アレンが父を殺した理由や崩れた世界のバランスはどうなってしまったのか…どうも私には、はっきりとわからないままだったんですけれど…。 技術的には、人物と背景はタイトルが出るまでと竜の部分は健闘しているものの、これまでにくらべると多少雑なところがあったのが残念だったかな。海外へ外注に出しているのが原因だとしたら、それはそれで何とかして欲しいところ。

…というわけで、まあ、概ね、OK!…とウチへ帰ってパンフレットのあらすじを読んでビックリ!!ここに解けなかった疑問…アレンが父を殺した理由や崩れた世界のバランスはどうなってしまったのか…の答えが書かれていたのですよー。それによると…

「父王を刺し国を出た少年は“影”に追われていた。世界の均衡を崩し、
人の頭を変にする災いの力はアレンの身にも及んでいたのだ。」

「ハイタカはクモという魔法使いが生死両界を分かつ扉を開け、
それによって世界の均衡が崩れつつある事を探り出す。」


…というわけで「アレンが父を刺したのは、クモがすでに生死両界を分かつ扉を開けており、 それによって世界の均衡が崩れ、アレンもおかしくなって来た」という事かと。 映画を観た時には、アレンの自己崩壊と世界の均衡が崩れているのは、別の話 かと思っていましたが、アレンにそういう兆候があったにせよ、 原因はクモが生死両界を分かつ扉を開けていたから…。 …だとすると、また話がややこしい事になってきます。 私はてっきり、話の終盤まで「生死両界を分かつ扉」は開いていないのだと 思っていました。途中ゲドが「こんな事が出来るのはあいつしかいない」と 言うような事を言いますが、それはクモがこの扉とは別の妖術かなにを使って いたのだと思っていたんです。ところが、この書き方だと扉は物語の最初から 開いていて、世界の均衡が崩れていたという設定と取れるんですよね。 このあらすじに書かれている事(監督の意図した事)が果たして映画を観た何人の人に伝わっているのか…と考え込んでしまいました。疑問が解けたのは良かったのですが、逆に「概ねOK」だった気持ちが半減してしまいました。



【マクタロウ】
冒頭、嵐の海にもまれる船へと、突如現れた竜が迫るシーンはなかなかパワフルで良く、素人監督宮崎吾郎も悪くないかも・・・と思っていたのだが、タイトルが出てストーリーが本題に入った途端にテンポは悪く、ついに最後まで盛り上がらずに終わってしまった。
物語の発端である、主人公アレンの父親殺しについては「なぜ」殺さなければいけなかったのかという理由は明確にされず、世界中で起こっているバランスの崩壊も(どうやらクモの仕業らしいとは思えるものの)理由や顛末が語られているとは思えない。これでは、作者が「(なんとなく)現代の世相を反映させてみようかと入れてみました」といった程度にしか感じられない。
また、ラストのテルーの変身(?)に至っては、あまりに唐突で唖然とするばかりだ。せめて「それらしい」事を振っておくべきだろう(テルーが本当の名前をアレンに告げるシーンのとんでもないイメージカットがそうだと言われればそうなのだが、あれも唐突すぎる)。
宮崎監督の演出は、アレンとオオカミの対決(オオカミ目線の後、何が起きたのか?)や、前出したテルーの変身など、本来見せるべき物を見せず説明不足に感じる(言い訳として「見えぬ物こそ・・・」なんてキャッチフレーズを付けたわけではないだろうな)。意地悪な見方をすれば表現力が乏しくて描けなかったのかと勘ぐってしまう。
ジブリも(いや、ジブリに限らずどこの会社もそうだけど)ヒット作を出し続けなくてはいけないのは分かるが、宮崎駿監督の息子を引っ張り出し、話題作りは熱心にやっているが、作品の内容はおざなりになっていやしまいか。



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M:i:III 2006.7.23.(Sun.) 
■タイムリミット48時間―― この夏、世界各国で 最も不可能なミッションが始まる!

[監][脚]J・J・エイブラムス
[製][出]トム・クルーズ
[製]ストラットン・レオポルド
[音]マイケル・ジアッキノ
[出]フィリップ・シーモア・ホフマン ローレンス・フィッシュバーン
[制作データ] 2006米/UIP [上映時間] 126分
■「M:i:III」公式サイト

【マクノスケ】
実は「1」「2」もそれ程乗れなかったので(とは言え「2」のジョン・ウーの映像美は印象的でしたが…。)今回もあまり期待せずに観に行ったら、これが、それなりに乗れて「いつか買うかも知れないDVDマイリスト」(グレムリン、MIB2、スチュアート・リトルなど)に追加したいくらいの出来に満足して帰ってきました!

スパイと言うと、人知れずこっそり行動するイメージがある私ですが、今回も最初からどっかん!ばっかん!ど派手にやらかしてくれます。ヘリや脳内爆発のシーンを短いカットで繋ぎながらハラハラドキドキ見せていくJ・J・エイブラムスの手腕はなかなかだと思いましたし、もしかしたら、テレビ出身である事がテンポの良い展開作りに向いていたのかもしれません。特にバチカンのシーンはこれぞ「スパイ大作戦」という感じで、スパイ映画の醍醐味を思う存分見せてくれて、今回はチームワークもちゃんと機能してるぞーというところが観られて満足でした。とにかく冒頭から息つく暇もないので、半分くらい観たところで息切れ症状(頭がガンガンしてお腹にも痛みが)出てしまい、こりゃあ困ったと思いながら、なんとか最期まで観ましたが、あー、自分の体力の限界を感じましたねえ。(^_^;)

橋のシーン、トム君の変装、病院での探索、ラストのどんでん返しと、どれも面白かったですが、欲を言えば「上海」のビルのシーン。もうちょっと描写が欲しかったですかねえ。あんなギャグ(?)やってないで見せるところは見せて欲しかったかなあ。 でもねえ。それを言ったら始まらないんですけど、結婚するならスパイ家業から足を洗うべきですよ!ハントくん!スパイは本気で恋をしてはいけません…。

【マクタロウ】
相変わらず「スパイ」にしてはハデに銃撃戦を繰り広げております。
今回、最も「スパイ大作戦」らしいヴァチカン潜入、デイヴィアン誘拐のシークエンスが面白い。現場でマスクを作るマシンなど、モデラーとしては是非欲しいモノだ。
主人公ハントが結婚。その女性を人質にとられ殺害か(オープニングにこのシーンを挿入し、観客にどうやって助けるのかと思わせ、実際に殺害。しかし・・・)という演出はなかなか良く、観ている者の感情を盛り上げてくれる。
アクションシーン満載で息も吐かせぬ展開は良いけど、手持ちカメラばかりでブレブレの画面には閉口した。そんなものは部分的に使用して、役者の表情などはしっかりとカメラを据えて撮って欲しい。
欲を言えば、チームのメンバー(3作とも出演しているヴィング・レイムス以外)のキャラクターがもう少し描かれていると良いかも。



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日本沈没 2006.7.22.(Sat.) 
■2006年、夏    すべて消える

[監]樋口真嗣
[原]小松左京
[脚]加藤正人
[音]岩代太郎
[歌]SunMin thanX Kubota
[出]草なぎ剛 柴咲コウ 豊川悦司 大地真央 石坂浩二 及川光博 福田麻由子
[制作データ] 2006東宝 [上映時間] 135分
■「日本沈没」公式サイト

【マクノスケ】
開巻、いきなり我が故郷「沼津」が舞台で大ウケ!! 柴咲コウの登場シーンも格好良くて、これはいいかもーーーーぉと思いながら見始めたのですが、なんだかキャラに共感出来ないうちに終わってしまいました。草なぎくんは、思っていたより良い演技をしているのですが、朋友の及川ミッチとの友情など全てが中途半端。柴咲コウとのラブシーンも安っぽくて、ドラマの部分はいろいろなエピソードを描くものの全てが消化不良で表面的な展開にノレず仕舞いでした。

でも特撮は!!と期待していたのですが、北海道や六本木、渋谷など「おぉ!」と思えるシーンもあるのですが、期待していた「清水寺」や「奈良の大仏」の崩壊シーンが見事になくて、ガッカリ。やはり阪神大震災の事もあり震災された方への配慮があったのでしょうか。それに富士山がなあ…。

興奮したシーンが冒頭の柴咲コウの登場シーンと大地真央が新聞を引っ張るシーンだけだった(笑)のが、ちょっと淋しかったですかねえ。まあ、個人的にはガンダムの富野さんのお顔が拝見できて楽屋落ちとしては楽しめましたが、もうちょっと面白くても良かったのでは…と思った1作でした。(監督)の樋口さんには、もうちょっとドラマを撮れるよう頑張って貰いたいですね。

【マクタロウ】
日本が沈没するという未曾有の出来事に対する政府の対応、市民の生活、主人公の愛と成長、そして大災害と一通りは描いている(つもり)のだが、そのどれもが心には迫ってこない。
すでに日本列島のあちこちで大災害が起きているというのに、主人公が実家に帰ったり、東京に戻ったりと移動しているが、いったい何を使って移動していたのか(自家用車?列車?飛行機?すべて機能は麻痺していそうだったが)疑問に感じた。
田所博士とも連絡を取っていたようだが、携帯電話は機能していたのか?こういった細かい部分の描写がしっかりなされているようには思えず、日本がとんでもないことになっているはずなのに臨場感、危機感がない。
スペクタクル映像(実際、これを楽しみに行ったのだが)も、「観たい」という画はほとんどいって無かった。
予告にある国会議事堂、大仏、清水寺などは、災害に遭う映像はなく、すでに崩壊、浸水した(予告にあった)映像だけ・・・。しかもそれらの災害に主人公達が巻き込まれない。これでは盛り上がろうにも盛り上がらない。
そして、最も気になったのは作品の根底にあるテーマである。
総理大臣(石坂浩二)が言う「(日本が沈没するに当たって)何もしないことが、心情的には一番しっくり来る」とか、主人公の母も「脱出せずにここで死ぬ」という事を言うのである。
そして主人公は「愛する人を守るため」に自らを犠牲にする。これは「特攻」の思想ではないだろうか。
私は「お話」である以上、自己犠牲を美化して感動を得ようとすることを否定するつもりはないが、本作では主人公の行動に説得力がなく、お題目のように(セリフだけで)「愛する人を守る」などと言っているから「特攻」シーンに違和感を覚えるのだろう。
結局、「愛」も「人間」も描けていないのに、安易に「お涙ちょうだい作品」に走ってしまった作者の力不足ばかりを感じた。



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ブレイブ ストーリー 2006.7.15.(Sat.) 
■これは、ボクの勇気のハナシ。

[監]千明孝一
[原]宮部みゆき(角川書店刊)
[総]亀山千広
[脚]大河内一楼
[音]JUNOREACTOR
[出]松たか子 大泉洋 常盤貴子 ウエンツ瑛士 今井美樹
[制作データ] 2006/ワーナー [上映時間] 112分
■「ブレイブ ストーリー」公式サイト

【マクノスケ】
原作は宮部みゆきの異世界冒険ファンタジー小説。家を出た父、ショックで倒れた母。家族を救うため、扉の向こうの世界へ願いを叶えて貰うために冒険の旅に出掛けた少年ワタルの試練と成長を描いたアニメーション製作会社「ゴンゾ」の長編アニメ。

宮部みゆきのサスペンスは何作か読んでいるのですが、これは未読。多少期待はしていたのですが、う〜〜〜ん。世界観、キャラクター共にありがちな感じでイマイチ盛り上がれず帰ってきました。キャラデザが良かっただけにもったいなかったかなあ。表情の付け方も、なかなかいい線行っていて、ラスト辺りはストーリー展開とあいまって、涙ぐんだりしてしまったのですが、それでも全体的に物足りない。キャラクターも、もっと掘り下げたエピソードを作ればそれなりに共感出来たのでは…と思うと、これまた残念でした。

しかし、あのラストは、原作もああいう展開なのかしら? あれでは辻褄が合わなくなってしまうように思うんですが、どうなんでしょう? 原作を立ち読みするしかないかしら…。 あぁ、それからILMが担当した音響! あまり大きな劇場ではなかったので(MOVIX清水のスクリーン9)、 それ程実感出来ませんでした。(それも悲しかったりして…。)

【マクタロウ】
序盤、少年が主人公の青春モノとして「いけるか」と思ったのだが、物語がヴィジョンに移った辺りから徐々に魅力を失っていった。
キャラクターの配置、絵柄はとても好みなのだが、それを生かし切るだけのエピソードやセリフが足りないように感じる。
主人公ワタルをもっと魅力的なキャラクターにしないと、彼と係わっていく人物達が彼のどこに惹かれて惚れ込んでいるのか伝わってこない。
「不器用で弱虫だけど、一途で頑張り屋」といった彼の魅力がもっと前面に出ていたら良かったのに。
それから、あの終わり方だが、あれでは「ワタルがヴィジョンで経験したことはなんだったのだろう」という気がする。
ラストに現れるミツル(らしき)人物は全くの別人(妹も存在しているし)として、それでは、ワタルがヴィジョンへと行くきっかけとなるミツルは存在していなかったのか?(少なくとも彼の友人はそんな転校生は知らないらしい)
なにも、全ての事柄に「理屈」をつけて説明しろと言う気はないが、このような矛盾を「雰囲気」だけで演出してしまうのは、制作者の力不足ということではないだろうか。
作品のテーマ、作画技術、音楽など、高いレベルを持っていただけに残念な1本となってしまった。



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サイレントヒル 2006.7.8.(Sat.) 
■その街では、祈りさえも、悲鳴に変わる――

[監]クリストフ・ガンズ
[総]ビクター・ハディダ 山岡晃ほか
[出]ラダ・ミッチェル ショーン・ビーン ジョデル・フェルランド 
ローリー・ホールデン
[制作データ] 2006米/松竹 [上映時間] 126分・PG-12
■「サイレントヒル」公式サイト

【マクノスケ】
静岡県民と言うことで清水まで見に行って来ました。(注1)

夢遊病の娘シャロンがつぶやく“サイレントヒル”という言葉。実在する地名と知ったローズは娘といっしょにその原因を探りにサイレントヒルへ向かう。しかしそこには想像を絶する恐怖が待ち受けていた!全世界で約530万本を売り上げた日本の人気ゲームが原案。「ジェヴォーダンの獣」のクリストフ・ガンズ監督が映画化したホラー。

うーーーーん。こういう作品でストーリーがどうのっていうのは野暮だとは思うんですが、これでもかと登場するクリーチャーにもう少し登場人物との因果関係があればおもしろかったかなーと。たぶんゲームをやっている人はそれらが映像として動くだけでワクワクしちゃったんだろうと思うんですが、知らないと「???」のまま映画が終わってしまうので。 それから敢えてああいうラストだったのは「2」があるのかしら?今度はショーン・ビーン主役でって言うわけにはいかないかしら?コナミさん♪ ショーン・ビーン好きの私としては、思ったより出番があったのと、クリスタベラ役をボーグクィーンのアリス・クリーグさんがやっていたのが、おいしかったですー!!やっぱり、そういう役なんかーって自分的には大ウケでした。(^∇^)

注1:「サイレントヒル」というタイトルは、サンプルを海外へ監修に出す際に急遽つけられたものだそうです。ゲーム中に登場する架空の街はリゾート地という設定から、静岡を直訳したものを仮タイトルとしてつけたが、海外チームから「怖そうでよい」という返事をもらったため、そのまま正式タイトルとなったのだとか。サイレントヒル - Wikipediaより

【マクタロウ】
なにやら奇妙なクリーチャーの画像に惹かれて、ちょっと期待していたのですが・・・。
主人公がサイレントヒルに迷い込み、黒こげの子供のような化け物に襲われる辺りまでは「なかなかいいぞ」という感じだった。
その後現れる化け物もデザインや雰囲気は良いのだが、カットの短さや画面の暗さが災いして、その魅力を発揮していないように感じる。
それぞれのクリーチャーに、サイレントヒルの謎と殺された少女との関わりなどが投影されていたら良かったのではないかとも思う(一部、あることはあるのだが)。
ストーリーも「母と子」「家族」の物語として語るならば、前半部分で家族の姿をもう少し描いておいた方が効果的であったろう。あまりにも早くサイレントヒルに迷い込んでしまい、娘を捜し出すという部分が形骸化していて、感情に訴えるまでに至っていないのは残念だ。
最後は「こちら」の世界に帰ってこられるものかと思っていたのだが、続編でも考えているのかと思える展開。
大活躍した巡査の最期といい、どうにもスッキリしない終わり方だった。
ところで、「あちら」の世界はパラレルワールドと考えて良いのだろうか?「あの世」だとしたら、そこで更に「死」を迎えるというのも変な話だし・・・。



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カーズ 2006.7.2.(Sun.) 
■そこは、地図から消えた町――

都会育ちの人気レーサーが迷い込んだのは、
クルマたちが平和に暮らす町、ラジエーター・スプリングス。
しかし、その町には《悲しい運命》が待ち受けていた…。


[監][脚]ジョン・ラセター
[音]ランディ・ニューマン
[声]オーウェン・ウィルソン ラリー・ザ・ケーブル・ガイ ボニー・ハント ポール・ニューマン マイケル・キートン
[制作データ] 2006米/ブエナ・ビスタ [上映時間] 96分
■「カーズ」公式サイト

【マクノスケ】
そんなに期待しないで行ったのですが、後半、泣きっぱなしで(注:泣き上戸です)…、久々に「来たー」って感じです!!!

思えば「トイ・ストーリー」を初めて観た時、革新的な3D映像はもとより「ピクサーって凄い!ディズニーの長編アニメより面白いツボを押さえているーっ!」と大絶賛したものでした。続く「バグズライフ」では笑いと泣きのツボを更に刺激され、今後のピクサーに大いに期待したのですが「モンスターズインク」以降、どうにもノレなくて、ちと悲しかったりしていたんですが、そうじゃなかったんです!!

私が好きなのはピクサー作品ではなくて、

ラセター監督作品だった!!

…という事に「カーズ」を観て気づきました。(本作は「トイ・ストーリー」「バグズライフ」「トイ・ストーリー2」に続きラセター監督の4本目の監督作品) すんばらしい3D映像も、脚本の出来でこうも違うのかーっと、改めて感心。とにかくオーソドックスな筋にして、この面白さ。もうマイケル・J・フォックスの「ドク・ハリウッド」やビル・マーレーの「恋はデ・ジャブ」なんかと同じ運びなんですが、やっぱりキャラクター1人1人(いや、1台1台?)が実に生き生きとしていると言うか、キャラの持ち味を120%出し切ってるんですよねえ。終わる頃には、ラジエーター・スプリングスの住民(車)全部がいとおしくてたまらなくなります!

時折挿入されるくだらないギャグと最期のビッグスター登場も更に嬉しい!!エンドロールもNG集ではなく、ディズニーではない、これまでのピクサー社総括という意味合いも込められていてナイスでした!!

【マクタロウ】
最近のピクサー作品に今ひとつ乗れなかったし、予告を観てもあまり面白そうだと思えなかったので、期待はせず鑑賞。
ところがこれは良い!!面白かったですね〜。いや、ストーリー展開は王道中の王道。ただ、いくら王道なお話でも下手くそがやったらダメダメになってしまうところを、ジョン・ラセター監督はお得意の小ネタを挟みつつ笑わせ、ほのぼのさせて、最後は興奮と感動を与えてくれる(泣けちゃったし)。
各キャラクターもそれぞれが魅力を発揮している。選ばれている車種がキャラクターを現していると思うけど、この辺りは詳しければもっと楽しむことが出来るのだろうなあ。
そんな中でも、わかりやすくて際だっていたのがタイヤ屋のルイジ(フィアット)。レースが大好きだけどフェラーリしか認めないってところが絶妙で、しかも終盤に登場するスペシャルゲストのフリになっているのも良い。
122分という上映時間はちょっと長く感じた。もう少し切ることが出来たらなあと思うのは贅沢かな。
映像はさすがピクサーといったもので、磨き込まれたレースカーのボディへの写り込み(良い意味でアメリカンな安っぽさが出ている)、自然描写など美しく再現されている(これから公開される他社製3DCGアニメの予告をやっていたが、明らかにレベルが違う)。
エンドクレジットの映像はNG集から、本編の後日談的パロディになっていて、正直「ほっ」とした。
もともと有りもしないNG集で楽しめるのは最初の1本だけでしょう。
さらにクレジットの後にあるオチも良かったね。こういうのは好きです。



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■2006. 6月
  史上最大の作戦 /GOAL! ゴール! /オーメン /インサイド・マン /バルトの楽園 /ウルトラヴァイオレット /

ウルトラヴァイオレット 2006.6.25.(Sun.) 
■感染は広まり世界を変えた。それでも生き残る――
君を守るため。


[監][脚]カート・ウィマー
[製]ジョン・バルデッチ
[音]クラウス・バデルト
[出]ミラ・ジョボビッチ キャメロン・ブライト ニック・チンランド
[制作データ] 2006米/ソニー [上映時間] 87分
■「ウルトラヴァイオレット」公式サイト

【マクノスケ】
「リベリオン」のカート・ウィマー監督が、「バイオハザード」のミラ・ジョヴォヴィッチを主演に迎えて贈るSFアクション。驚異的な能力を持つ<超人間(ファージ)>とその撲滅を目指す政府が対立する近未来を舞台に、人間の少年を守るため、両勢力を敵に回したファージの女戦士の戦いを、息をもつかせぬアクションの連続で描く。(allcinema.net解説より抜粋)

清水のエスパルスドリームプラザにあるMOVIX清水で観てきました。 ジョヴォビィッチ好き(そこそこのファン)としては、彼女のアクションとプロポーション、そそられる口元が堪能出来てそれなりに楽しんで帰ってきました。
設定がなにやら「X−MEN」や「イーオンフラックス」「Vフォー・ヴェンデッタ」と同じなんですが(政府と特別な能力を持ってしまった新人類との闘争という図式)監督はジーナ・ローランズ主演の「グロリア」の未来版としてこの作品を作ったそう。 なるほどーとも思えなくはないんですが、なにしろCGが命のこの作品にあって、肝心のCGがちゃちなのが致命的。 それでも所詮、B級と思い直し、お話に集中しようにも、ファージ(超人間)の設定が説明不足なものだから、観ているこちらは「服の色が変わるのはファッションか〜?」などと勝手に想像しながら観るしかないのが、更にこの作品の評価を落としている原因かと思いました。

あとでネットで方々を探ってみたら「ファージ」って吸血しない吸血鬼のような設定だったんですね。身体能力、治癒能力が高く、夜目が利き、昼間の闘いには向いていない(だからヴァイオレットはサングラスをしていたらしい)。それなのになぜ彼女が暗闇に弱いのか…設定だけで説明がないっていうのもどうかなあーと。それにファージは12年の寿命しかないんだそうですが、それって「6」(シックス)の立場は? だったら、彼の抗体から「ファージ」が長生き出来る物質がみつかるとかいうオチでも良かったんじゃないかなーと思いましたが、この手の作品にあれやこれや求めるのも筋違いかしらん。(笑)

音楽はクラウス・バデルトで、これまたもういいからってくらいに終始鳴りっぱなし…。最近では「ポセイドン」や「コンスタンティン」「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」などをやっているわけですが、どちらかと言うと好きな方。曲自体はノリも良くて良かったように思います。この作品は「リベリオン」つながりだったようですね。

【マクタロウ】
久し振りに「バカっぽいアクション」を観たくて行ってきました。
まあ、予想通りの出来でそれなりに楽しむことが出来たのは○。ただ制作者側が考えている設定を作品の中でちゃんと説明していないので、物語の展開や描写に納得できない部分が多いのは困る(物語の発端たる「ファージ」の設定さえよく分からない)。
カーアクションは、ほとんどCGで作られていたように思うが出来は今ひとつ。
一番の魅力はミラ・ジョヴォヴィッチ。彼女はスタイルが良く、立ち姿はゲームかアニメのキャラのようで、本作や「バイオハザード」などで重宝されるのは分かる気がした。
髪型のせいもあるが、サングラスをかけた顔のアップでは「甲殻機動隊」の草薙素子実写版といった趣もあった(かなり影響されていると思うけど)。
登場人物には魅力的な部分もあったので、物語や設定の独りよがりな部分をうまく処理して、もう少し主人公の感情を描いてやれば良い作品になったかもしれない。
それにしても、集団で1人に銃を突きつけて円く囲むなよ!!同士討ちになるのに決まっているじゃあないか、馬鹿者!!



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バルトの楽園(がくえん) 2006.6.17.(Sat.) 
■第九の扉が開くとき軍人は「人間」に帰る。
なぜ彼はドイツを信じようとしたのか。


[監]出目昌伸
[脚]古田求
[出]松平健 ブルーノ・ガンツ 阿部寛 國村隼 オリバー・ブーツ 
コスティア・ウルマン 市原悦子 高島礼子
[制作データ] 2006東映 [上映時間] 134分
■「バルトの楽園」公式サイト

【マクノスケ】
第一次大戦下、中国の青島から送還された徳島県・板東俘虜収容所に送りこまれたドイツ人捕虜たちと所長の松江初め収容所や街の人々との心の交友を描く。
思ったより期待のブルーノ・ガンツさん(「ヒトラー 〜最期の12日間〜」の演技がすばらしかった!)の出演シーンが少なくて残念でしたが、他のドイツ兵と収容所やそこに出入りする人たちとの交流が描かれていて好印象でした。マツケンも思っていたより自然な演技で良かった。人情味溢れるこの役と合っていたんでしょうね。所長の補佐役の國村隼さんの飄々とした感じと熱血型の阿部(寛)ちゃんが対照的でキャラの配分としては、なかなかだったと思うんですが、欲を言えば、物語としてもう少し盛り上がりが欲しかったかなあ。

それでも中盤の会津若松のマツケンの子供時代のシーンは結構熱くなってみました。マツケンのお父さん役を三船史郎さん(三船敏郎の息子で「雨上がる」の殿様役が良かった!)がやっていて、これまた好印象!
セリフ回しが一本調子で決して上手いとは言えないと思うんですけど、返ってそこが味があるって言うんでしょうか
今回も出番は短いですが、印象に残る良い役でした。
で、物語中盤で登場する「志を」という少女がいるんですが、どこかで見たことがあるなあと思いながらも…
なかなか思い出せず、終盤にさしかかった頃、急に…
あー!!「SAYURI」の少女時代の子だーっと!!
思い出しました!! …って、あまりにも、まんまなんですけど…いいんですかねえ。(笑)
いや、でも、大後寿々花ちゃん。今回も泣かせてくれました。相変わらずの芸達者に脱帽です。
ラストの「第九」が、あの映画の中の人たちだけでなく、見ているこちら側にも「音楽」の素晴らしさを伝えてくれます。音楽の力ってやっぱり凄い!

【マクタロウ】
板東俘虜収容所のエピソードを初めて知ったのは20年ほど前のことだろうか。何かのテレビ番組で紹介されていたのだと記憶している。
「こんないい話があるのなら誰か映画化しないものかな」などと思っていたのだが、ここに来てようやくその夢(?)が叶った形となった。
本作は収容所長、松江(松平健)を軸に、捕虜側と日本側両方の心温まるエピソードを描いている。
その中にあってドイツ側ではカルル、日本側は伊藤(阿部寛)と、うまさん(平田満)が「敵国人」に心を開けない人物として配置され、物語に良い緊張感を与えている。
やや長いと感じた松江の少年時代(父親を三船史郎が演じていて嬉しかった)も、彼の行動を理由づけるものとして効果的だった。
だが、全体的にメリハリがなく、ラストの「第九」演奏会も思っていたほどの盛り上がりを感じられなかった。映像での楽団編制よりも豪華な音が付いていたこともその要因なのかもしれない。ここは「当時の音を再現してみる」というような方向だったら面白かったのではないだろうか。
ただ演奏の途中で挿入される第1次大戦の実写映像を観ていたら、この演奏が「戦争で被害を被った全ての人達」のためのように思えて、目頭が熱くなった。
この物語から20年もたたずに、再び世界大戦が始まることを考えると更に悲しさが増す。
松江の心情である「相手を信頼する」ということは、簡単なようで難しいことなのか。
即物的な感動を売り物にする邦画が多い中、ほのぼのとした気持ちと一緒に様々なことを考えさせられた1本であった。



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インサイド・マン 2006.6.10.(Sat.) 
■それは、一見誰が見ても完璧な銀行強盗に思われた…。

[監]スパイク・リー
[脚]ラッセル・ジェウィルス
[出]デンゼル・ワシントン クライブ・オーウェン ジョディ・フォスター クリストファー・プラマー
[制作データ] 2006米/UIP
[上映時間] 128分 ■「インサイド・マン」公式サイト

【マクノスケ】
「インサイド・マン」は「マルコムX」などで人種差別問題に焦点を当てた作品でも知られる社会派監督スパイク・リーの娯楽サスペンス映画。スパイク・リー作品を1作も観たことがないのですが、今までのスタイルからするとどういう心境でこんなオシャレな娯楽作を撮ったのか、ちょっと不思議な感じもするのですが、映像もお話もそれなりで、全体的にはまあまあの印象でした。

当然ながら、予告などにもあった「意外なオチ」を期待して観に行ったわけなんですが、オチよりも流れを楽しむって感じでしょうか?まだ解決していない銀行強盗事件の途中で、すでに解放された人質が主人公に事情聴取を受けるシーンが挿入される辺りが、新種の演出(観ている側を惑わす演出?)かー?…と思ってみたりしたのですが、なんですかねえ。構成は凝っているものの、なんだか、それ以上でもなくそれ以下でもないんですよねえ。「セルピコ」や「amazon」や「ダーティー・ハリー」など…ギャグのキレは、申し分ないんですが、前後のおしゃれなタイトル映像やデンゼル・ワシントンやジョディ・フォスターなどの粋なキャラも、それだけに終わっちゃってるのが残念だったかな。

悪役のクリストファー・プラマーは「シリアナ」に続き、相変わらずの悪役振りを発揮していて◎!その割にデフォーさん(ウィレム・デフォー)が、普通の役をやっていて、ちょっとガッカリでしたかねえ。銀行強盗役のクライヴ・オーウェンは「シン・シティ」同様、濃い印象でまあまあでした。私としては彼にボンド役はやって欲しかったんですけれどねえ。

【マクタロウ】
一癖も二癖もある登場人物達。先の読めないストーリー。強盗犯の真の目的は?完全犯罪の手法は?・・・と、すごく面白そうだったのだけど、観賞後、なぜかスッキリしない気分で劇場を後にしました。
本当は痛快な犯罪映画になるはずだったのに、登場人物達だけが楽しそうにしていて、観ている方は彼らほど楽しくないという、制作者の独りよがりな部分が気になった。
では何が悪かったのか。かみさんと話しつつ思ったのは、「犯人をもう少し描いていたらなあ」と言うこと。
観客は主役の刑事(デンゼル・ワシントン)の視点から事件を追っていくのですが、もう少し犯人の情報を入れて、犯人と刑事を対等(くらい)に描いていれば、最後の「あの野郎、やりやがったな」という展開もすっきり観ることが出来たように思う。知能犯であるはずの犯人の魅力が今ひとつといったところが「してやられた」感に欠けるところなのではなかろうか。
配役は魅力的だし、話の筋立ても面白いと思うだけに残念な作品だった。



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オーメン 2006.6.10.(Sat.) 
■人類は、ダミアンの最後の遊び相手。
06年06月06日。未来が終わる…


[監][製]ジョン・ムーア
[脚]デビッド・セルツァー
[音]マルコ・ベルトラミ
[出]リーブ・シュライバー ジュリア・スタイルズ ミア・ファロー シーマス・デイビー=フィッツパトリック
[制作データ] 2006米/FOX
[上映時間] 108分・R-15 ■「オーメン」公式サイト

【マクノスケ】
「オーメン」は、今を遡ること30年前の1976年。オカルト映画真っ盛りの中作られたリチャード・ドナー監督の「オーメン」のリメイクで、サントラファンには、不気味なコーラスが印象的なテーマ曲“アヴェ・サンターニ”などで(音楽担当の)ジェリー・ゴールドスミスがアカデミー賞を受賞した事で知られております。



で、本作、オリジナルではグレゴリー・ペックが演じたダミアンの父親役をあの「スクリーム」のリーヴ・シュレイバーが熱演。神父役のピート・ポスルスウェイトさん(「ナイロビの蜂」にも出てました!)やカメラマン役のデヴィッド・シューリスも良い味出しています。(先週の「ゴール!」では、シューリスの奥さん、アンナ・フリエルを観たばかりだったので運命を感じたー!) ただやはり、再映画化したのなら、もう少し特色を出して欲しかったですねえ。あまりにもまんまだし、映像的にショッキングな物を全面に出し過ぎて返ってえげつないようにも思いました。音楽もマルコ・ベルトラミ(「ヘルボーイ」や「ブレイド2」の人です。)が、頑張っているんですが、まだまだ巨匠(ジェリー・ゴールドスミス)には、遠く及ばないと言う感じ。出来れば、オリジナルの背中がぞぞっと寒くなるような怖さが欲しかったですね。

それでも、リーヴ・シュレイバーが飛行機でロンドンに帰ってくるシーンがあるんですが、あそこのシーンは「ダミアンが悪魔の子かもしれない…」と思ってもまだ信じたいという父親の心情が汲み取れて、なんだかじわ〜っと来るものがありました。なので、お父さんが教会でくさびを打ち込むシーンは、当然、戸惑いを見せるだろう(ここが見所かぁー!)と期待していたのですが…

思い切り期待を裏切られまして…ちょっとガッカリしてしまいました。 まあねえ。2006年の6月6日に上映したかったってだけでリメイクしたのかもしれないんですけど、ちょっとなあ。なんだかオリジナルを観たくなってしまいました。6月6日が結婚記念日のマク家としては、やはりオリジナルのDVD買うしかないですかねえ。

【マクタロウ】
この作品、「2006年6月6日は6が6個並ぶじゃないか。オーメンをリメイクして、その日に公開したらいいのでは」という発想だけで作られたとしか思えません。
オリジナルと全く同じ展開、結末で、新たな視点とか、アレンジなんてものは皆無。殺戮シーンでさえも(今の技術でよりグロくなっているものの)死に方自体は同じ。新たな部分は、音で脅かす低級な夢のシーンが付け加えられているくらいで、監督の力の無さを露呈している。「ビックリさせること」は「怖がらせること」ではないだ。
ダミアンは最初から最後まで、ただの目つきの悪い子供で可愛げもない。それ故、ラストの父の葛藤も心に迫る物はなかった。
私は、オリジナルの「オーメン」も(当時の「オカルト映画」の香りは充分有り、雰囲気は抜群だが)決してA級の作品だとは思っていない。あの作品ならアレンジの仕方次第でオリジナルを超える(または匹敵する)くらいの作品が出来たのではないかと思うのだが。



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GOAL! ゴール! 2006.6.3.(Sat.) 
■少年の夢は、みんなの夢になる。

[監]ダニー・キャノン
[脚]ディック・クレメントほか
[出]クノ・ベッカー アレッサンドロ・ニボラ マーセル・ユーレス アラン・シアラー デビッド・ベッカム ジネディーヌ・ジダン ラウール・ゴンザレス スティーブン・ジェラード
[制作データ] 2005米.英/東芝エンタテインメント [上映時間] 118分
■「GOAL! ゴール!」公式サイト

【マクノスケ】
「GOAL! ゴール!」は、FIFAが全面的に製作協力をしたサッカー映画で、メキシコ生まれのサンティアゴが、イングランド・プレミアリーグの名門チーム、ニューカッスル・ユナイテッドで活躍するようになるまでを描いた全3部作のパート1。

いやいや、もうこれ、スポーツ映画の王道を行っている作品でありまして、サッカーシーンは、それこそ、自宅でテレビを観ながら、応援するかのように興奮してしまいました。あやうく声が出そうになった事はここだけの話。(笑) しかも「父と子もの」に弱い私には思いっきりツボの映画でした。

こういう映画は、ライバルなんかが出るのが相場となっていますけれど、ライバル役と目されていた、ガバン・ハリスくんは、単なる女好きのだらしない性格で愛嬌もあり、主人公のサンティアゴとも厚い友情で結ばれていて、新鮮で良かったです。
所々に挿入されるギャグにも切れがあり(イギリスとアメリカの違いとかタクシー会社の無線のやりとりの場面とか…)大いに笑わせて頂きましたし、最初はイマイチだと思っていた監督が、結構良い人で、最期の方で「パスだー!パス!」と監督と一緒に(心の中で)叫んでいる私は、やっぱりおじさん好きなんだなあと自覚した次第。(笑)

で、その監督を演じたマーセル・ユーレスって、何処かで観たことがあるなーと思っていたら「ピースメーカー」のリュックの男&「ジャスティス」のドイツの将校だという事が判って、ちょいとビックリしました!たしか、もっとスマートでしたよねえ。 いつの間にこんな良い体格に…。

おまけにパンフレットを良く読んだらサンティアゴの彼女・ロズ・ハーミソンを演じたアンナ・フリエル嬢は、実生活では、デヴィット・シューリス(「キングダム・オブ・ヘブン」の十字軍兵士の役も良かった!)の奥さんだと判り、またまたビックリ!あのシューリスにこんなきれいな奥様が…。やるなあ!シューリス!!(「タイムライン」で共演して結ばれたそうです。)
しかし秋に公開される「2」が楽しみです! レアル・マドリードでの活躍はもちろん、マネージメントを担当するグレンさん(スティーヴン・ディレイン)やロズとの関係、ガバンとの友情も注目だわー!!う〜ん。でも「3」でイングランド代表になるって事は帰化するって事なのかな? よく事情をわかっていない私…。

追記 サンちゃんはイングランド代表になる訳ではなかったようです。 こちらのクノ・ベッカー・インタビューで、「3」について、どこの代表になるか主役のクノ・ベッカーくんが語っています。 なるほどー。パンフレットに書かれていた「2」の展開は、そういう事だったのか…。

【マクタロウ】
私、Jリーグ発足当初からの俄サッカーファンです。さらにスポーツ映画が好きなんです。となれば本作は観ておかなければいけない1本なんです。しかも3部作となれば1本目を逃すわけにはいかないんです。

スポーツ映画の醍醐味は、「主人公が苦難を乗り越え試合に勝利する」ということでしょう。それが予定調和だと言われればそうかもしれないけど、ことスポーツ映画に関しては変にこねくり回さず素直に描いた方が良いね。

主人公サンティアゴは好青年で好感が持てるし、彼を見いだす伝説のプレーヤー、グレンは人情味あふれる好人物。チームメイトのガバンは女ったらしだけど憎めない上に、コメディーリリーフという美味しい役所。その他、監督、リザーブチームの面々など魅力的なキャラクターを配していて良い。
更に、ニューカッスル・ユナイテッドの地元の人々。彼らのチームに対する、ひいてはサッカー、失礼、「フットボール」に対する愛着がそこかしこに描かれていて微笑ましくなる。

「お決まり」のストーリーを盛り上げるには、こういった魅力的な登場人物が重要なのだ。

「お決まり」と言いつつも、ストーリー展開は丁寧で主人公が安易にトップチームに入れないところなど、好感が持てるし、試合のシーン(もう少し見せて欲しかった)も迫力があり、父と息子の葛藤、家族の愛などを盛り込み、まんまと乗せられて(そのつもりで観に行ったのだから、期待通りだ)、ラストはじんわり。
「1」ではやっとトップチームで出場、初得点を決めたサンティが、秋に公開される「2」ワールドカップ時に撮影される「3」でどのように成長していくのか、これからの展開が楽しみだ。



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史上最大の作戦 2006.6.3.(Sat.) 
■史上最大のマーチがきこえる!《世界で一番長い日》を描いた永遠の叙事詩−−あの感動の名作がやってくる!

[監] ケン・アナキン ベルンハルト・ヴィッキ  アンドリュー・マートン
[原]コーネリアス・ライアン
[音]モーリス・ジャール
[出] ジョン・ウェイン ヘンリー・フォンダ ジャン=ルイ・バロー 
ロバート・ライアン リチャード・バートン ロバート・ミッチャム 
アルレッティ ショーン・コネリー ロッド・スタイガー 
ロバート・ワグナー ジェフリー・ハンター リチャード・ベイマー 
ポール・アンカ メル・ファーラー フェビアン 
スチュアート・ホイットマン  スティーヴ・フォレスト トム・トライオン  サル・ミネオ  ロディ・マクドウォール
[制作データ] 1962米/FOX [上映時間] 179分
■「史上最大の作戦」DVDアルティメット・エディション紹介サイト

【マクノスケ】
TOHOシネマズ小田原が「20世紀FOX 70周年記念 スタジオ・クラシック・シリーズ −今なお映画史に輝く永遠の傑作・名作がここに−」と題し企画公開した「史上最大の作戦」を観に行って来ました。

「史上最大の作戦」は1962年に公開されたモノクロ映画(179分)で、第二次大戦におけるノルマンディの攻防戦を連合国側から描いた戦争スペクタクル巨編です。原作はコーネリアス・ライアンのノンフィクション・ベスト・セラー小説。いわゆる群像劇もので、これといった主人公は登場しませんが、原題の「THE LONGEST DAY」が示すとおり、この長い1日を英国、米国、フランス、ドイツなど、それぞれの立場で描いた秀作と言えるでしょう。

DVDを観ているとは言え、映画館で観る戦闘シーンは、やはり迫力が違いました!特に後半のドイツ軍が立てこもるホテルの攻撃シーンの長回しは、本当に凄い!構図といい、その中で展開するアクションといい、戦争映画の中でも上位に位置するベストシーンと言っても過言ではないのではないでしょうか。 ノルマンディ上陸とこのホテル攻撃シーンなどを観ると、改めて「プライベート・ライアン」が、この作品にいかにオマージュを捧げていたのかがわかります。見どころはたくさんありますが、フランスのレジスタンスの女性とパラシュート部隊の死体を呆然とみつめるジョン・ウェインの演技に魅せられました。

ラスト。足を負傷した兵士がそこに偶然居合わせた若い兵士に言う…

「おかしいね。彼は死んで、俺は動けなくて、君ははぐれている。そんなものらしいね。戦争はね。」

というセリフが心に染みました。 単なる豪華キャスティング戦争映画とだけではくくれない戦争映画史に残る映画だと思います。主題歌の作曲は出演もしているポール・アンカ。邦題は当時FOXの広報だった水野晴朗先生が命名したそう!「007・危機一発!」(髪ではなく発!)といい、当時はセンスあったんですねー。いや、ある意味今もかしら?

【マクタロウ】
私はこの作品をレーザー・ディスクやDVDで何度も観てきたのだが、「観に行こう」と思った瞬間から上映開始まで、今年観たどの映画よりもワクワクしていた。
とにかく「史上最大の作戦」をスクリーンで観ることが出来ると言うことだけでも感激なのだが、では、どこにそれほどの魅力を感じるのか?

まずは本作の原作者であり、脚本も手がけたコーネリアス・ライアンの功績を挙げたい。
彼は、各国の将軍から1兵士、1市民にまで焦点を当て、様々なエピソードの積み重ねにより「1944年6月6日」という歴史の中の1日を描き出している。
その日に起こった悲喜劇、決定的な判断ミス、絶望と希望・・・それら全てが人間の行いであり、この俯瞰で描かれた人間ドラマこそが本作の最大の魅力である。
特に「戦場」という混乱した非日常で起こる喜劇的なエピソード(その多くは英国的ユーモア)が作品に良いリズムを与えている。

そして映像。圧倒的な物量を投資した戦闘シーンの迫力と、見事なカメラワークだ。そのいくつか、私の好きなシーンを上げてみようと思う。
オマハビーチに押し寄せる上陸用舟艇。海岸に降り立った無数の兵士達がドイツ軍の攻撃を受けつつ、丘陵の下にたどり着くまでをカメラの横移動1カットでとらえたシーン。横移動こそ映画の醍醐味だと思っている私には大変印象深いシーン。
たった2機の戦闘機でイギリス軍上陸地点に機銃掃射を行い、ドイツ空軍の意地を見せるプリラー。その空撮で再現されている戦場は、数キロもあろうかと思われ、その規模に驚かされる。
そして、本作屈指の名シーンと私が思っているのが、フランス軍コマンドがドイツ軍の拠点であるカジノを攻撃する場面である。
ここでも空撮を使用し、川沿いに立ち並ぶ建物の影から出てくる兵士達を追いながら、カジノの建物までを写しだし、さらにカメラは回り込んで街並みと、攻撃してくるフランス軍をとらえるという見事さである。
これらの場面で感じることは、本物の迫力ということだ。それは、上記のシーンだけではなく、本作全般に言える。現代では到底再現し得ない規模の作品と言えよう。
このことは配役にも言えることで、当時のスター達が単なる顔見せに終わらず、それぞれの役に血を通わせる仕事をしている。
私が観た大作戦争映画の中で、作品の構成、映像において本作と肩を並べることが出来るのは「トラ!トラ!トラ!」くらいだろう。

今回の上映は20世紀フォックスの70周年記念上映ということのようだ(他に「サウンド・オブ・ニュージック」「タイタニック」などが上映されたようだ)。私としては定期的にこのような過去の名作を(もちろん「トラ!トラ!トラ!」も)上映してもらえると嬉しいのだが。



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■2006. 5月
  立喰師列伝 /ナイロビの蜂 /グッドナイト&グッドラック /ダ・ヴィンチ・コード /

ダ・ヴィンチ・コード 2006.5.27.(Sun.) 
■1954年、アメリカ
ダ・ヴィンチは、 その微笑みに、何を仕組んだのか。


[監]ロン・ハワード
[原]ダン・ブラウン
[音]ハンス・ジマー
[出]トム・ハンクス オドレイ・トトゥ ジャン・レノ イアン・マッケラン
[制作データ] 2006米/ソニー [上映時間] 150分
■「ダ・ヴィンチ・コード」公式サイト

【マクノスケ】
私としては、題材が題材なだけに、自分のイメージの中にある「名声の割に平凡な監督」というロン・ハワード象を打ち破るものを望んでいたわけですが、やはり…いつものように、あくまでもエンタテイメント重視なんですよねえ。期待の謎解きは駆け足気味、肝心のキリスト教が歴史に及ぼした影響についても、説明程度にしか触れないのがパンチ不足…。その結果、全体的にそつなく無難なものになってしまっていて、原作を読んだ時のような高揚感がなかったのが残念でした。

限られた時間に全部を詰め込む事が出来ないのは重々承知の上であえて書くと、原作ではシラスの過去やソニエールが行っていた儀式などの裏に、信仰や男女の性、女神信仰、女性の貶められた地位の問題が見え隠れしているわけですが、映画では、映像がさらっと流れるだけなので、到底そこからそれらの意味を汲み取るのは不可能なのでして、原作のそういった部分に興味を抱いていた私としては、いささか物足りなかったという印象です。 とは言え、テンプル騎士団や魔女狩りのシーンには萌えるものがあり(単なる中世好き?)その部分を映像として見る事が出来た幸せを監督には感謝したいと思いましたし、最期のラングドン教授のシーンは、ジマー先生の音楽もあいまって、胸に込み上げてくるものがありました。

キャストについては、予想通り、ベタニーくんとマッケラン氏は◎(にじゅうまる)。トム・ハンクスもなかなか頑張っていたとは思いますが、なんだろう?色気がないって言うのかなあ。花がないっていうのか…これまた無難な感じに終わっちゃてるところが、更にこの映画を可もなく不可もないものにしちゃっているのかもしれませんね。

【マクタロウ】
今年一番の話題作。それだけにカンヌでの評判やバチカンの抗議など、作品のネタも含め原作で描かれている部分などの情報が(中途半端に)入ってきてしまい、素で映画と向き合うことが出来なかった。もちろん原作は読んでいません。

結論から言うと、作品の出来としては「可もなく不可もなし」です。観終わった時の印象は「普通のトレジャー・ハンター物」としか残らなかった。
これは監督がロン・ハワードだと知った時から予想していたことなので「ああ、やっぱり」といったところ。
キリストが子孫を残し、更にそのことを隠すために教会が陰謀を張り巡らしていたなんてネタは、彼らにとっては由々しき問題で、文句も言いたくなるのだろうが、少なくとも映画ではその部分に説得力があったとは言い難い。
せっかく衝撃的なネタを使って作品を作っているのに、キモであるはずの「謎解き」と、ネタの説得力を描き切れていないのでは、面白さは半減どころか皆無に近い。
このような作品は、いかに知的好奇心を刺激し「見てきたような嘘」をうまくつけるかにかかっているし、その嘘を「ほほ〜、それは面白い」と楽しむことが喜びになると思うのだが。
私の好きなテーマを題材にしていただけに、残念だ。



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グッドナイト&グッドラック 2006.5.27.(Sun.) 
■1954年、アメリカ
百万人の視聴者が、ひとりの男(ニュースキャスター)に
未来を託した―― 自由を再び手にするために

これは、全米を勇気で満たした感動の実話である


[監][脚][出]ジョージ・クルーニー
[総]スティーブン・ソダーバーグほか
[出]デビッド・ストラザーン ロバート・ダウニー・ジュニア パトリシア・クラークソン
[制作データ] 2005米/東北新社 [上映時間] 93分
■「グッドナイト&グッドラック」公式サイト

【マクノスケ】
ジョージ・クルーニーの監督第2作!!“赤狩り”旋風吹き荒れる1950年代のアメリカで、CBSテレビのキャスター、エド・マローと彼のスタッフが、共産主義者摘発の急先鋒であるマッカーシー上院議員を自らの番組で批判し、テレビのあり方と自由とは何なのかをドキュメンタリータッチで描く社会派ドラマ。

モノクロの画面にシーンの展開事にジャズが挿入されるというおしゃれな作りは、そのままジョージ・クルーニーの人となりを感じされられ、味のある作品となっておりました。主人公を演じたデビッド・ストラザーンの色気があるまなざしと言い、静かな怒りがいつ爆発するともわからない雰囲気のフランク・ランジェラ(結構好き!)と言い、大人の魅力たっぷりで良い感じ! ただ、ドキュメンタリータッチが災いしてか、物語としての山がなく、地味なのが少々退屈。。それでも後半、ドン・ホレンベックの事件でかなり盛り返し、最期のエド・マローの言葉に監督であるジョージ・クルーニーのメッセージを見たような気がして、ちょっぴり熱くなったりしました。

今、この感想を書くために調べたら、ドン・ホレンベック役のレイ・ワイズさんて 「ツイン・ピークス」のローラのお父さんを演じてた人でした!! あの怪しさは今でも健在だったのですね!

【マクタロウ】
マッカーシーによる「赤狩り」の嵐が吹き荒れる1950年代のアメリカを舞台に、その政策に異を唱えたテレビキャスター、エド・マロー(デヴィット・ストラザーン)とそのスタッフ達の戦いをドキュメンタリータッチで描いている。
マッカーシーのやり方に反対すれば、即「アカ」の烙印を押され、社会から抹殺されるかもしれないという状況で、「自由」を取り戻すための戦いを挑むマロー達の姿は、俗っぽい言い方だが「格好良く」その姿勢こそが真のジャーナリストと言えるのだろう。

あまり感情を表さないマローが、マッカーシーを糾弾する放送の直前ではさすがに緊張しているところをとらえる演出など、監督であるジョージ・クルーニーも芸が細かい。
また、全編白黒で撮影された映像は、所々に挿入される当時のフィルムをより効果的に見せ、臨場感がある。
ただ、生真面目にドキュメンタリータッチで描いた分、映画としての外連味に欠け、物足りなく感じたのは私が娯楽映画の方程式に染まりすぎているからかな。



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ナイロビの蜂 2006.5.14.(Sun.) 
■地の果てでやっと君に帰る。

[監]フェルナンド・メイレレス
[原]ジョン・ル・カレ
[脚]ジェフリー・ケイン
[出]レイフ・ファインズ レイチェル・ワイズ ダニー・ヒューストン
[制作データ] 2005英/ギャガ [上映時間] 128分 ■「ナイロビの蜂」公式サイト

【マクノスケ】
アフリカのナイロビでイギリスの外交官として働く園芸が趣味のジャスティン(レイフ・ファインズ)が、弁護士で救援活動家の美しい妻テッサ(レイチェル・ワイズ)を殺され、妻が追っていた事件を突き止めるうちに、彼女の愛の大きさを知っていくというラブサスペンス。

上映時間が3時間近くの大作ですが、レイフ・ファインズが事件を追及する事になるまでが、思った以上に長く、サスペンスの部分がその割に短めで、最終的に彼が弾ける事なく、彼女への想いだけに浸って終わっていくのが、物足りなかったかなーと。 事件の真相に迫りこそすれ、彼女の意志を受け継いで彼がアフリカ問題に立ち行っていくという展開に敢えてしなかったのは、そういう優しさの固まりのような男が、テッサ(レイチェル・ワイズ)にとって、心の拠り所だったわけだから、彼は最初から最後まで変わらないのかなァ…と、自分に言い聞かせつつ見ていたわけなんですけれど…。

あと、もうひとつしっくり来ないのは、彼の事を思って真相を隠し続けた彼女の行動が、怪しすぎるようにも思うし、彼女が求めていた夫への愛は、自分の安らぎが欲しい時だけだったように見えてしまって、ジャスティン(レイフ・ファインズ)が再確認していく妻への愛に、どこか感情移入出来ない違和感のようなものを感じました。
アフリカ問題、広大で美しいアフリカロケ、演技達者な役者陣…と映画館で見る映画としては、なかなか良質な作品だとは思いますが、私としては、手応えの方はいまひとつでしたねー。

尚、「ナイロビの蜂」というタイトルは、テッサが追っている事件に関わりのある会社のシンバルマークから来ているようですが、もうちょっと気の利いた邦題はなかったのかなあ。翻訳されている原作のタイトル通りでなくても良かったとも思うんですが…。

【マクタロウ】
アフリカへの救済活動を隠れ蓑にした、医薬品の実験。そこに生まれる利益に群がる国、企業。
その事実を知り、公表を迫った末に殺害される主人公ジャスティン(レイフ・ファインズ)の妻テッサ(レイチェル・ワイズ)。
庭いじりにしか興味が無く、裏の世界など何も知らなかったジャスティンは妻の死に疑問を抱き、1人で調査を始める。それはテッサの辿った道を追体験すること。やがてジャスティンはテッサと一つになる道を選ぶ。
物語としてはアフリカの現状を描いた社会派ドラマだが、作品のテーマはジャスティンとテッサの愛情の方に重きを置いていたように感じた。
ジャスティンはテッサの死の謎を解明し、彼女が公表しようとしていたレポートを探し出す。彼はその後、(おそらく逃げようと思えば出来たはずだが)妻を殺した男達がやってくるであろう湖に向かう。自ら死(彼女のもとへ行く事)を望んだのだ。
つまり彼はアフリカの現状や上司、同僚の裏切りなどどうでもよく、ただテッサの死の原因となった物を突き止め、彼女が望んだレポートの公表さえ出来れば良かったのだ。
私としてはこの、彼の決着の付け方に納得がいかず、すっきりと作品を観終える事が出来なかった。
また彼らの「愛情」についても、作品で描かれる二人の生活はすれ違いばかりで、特にテッサはジャスティンを守るために自分の活動内容を話していなかったとされているが、私としては、テッサが彼には干渉されたくないだけのように感じた。
演出も、手持ちカメラの多用が作品の「質」とは合っていないように思う。
内容、演出共に、私としては「ちぐはぐ」な1本であった。



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立喰師列伝 2006.5.14.(Sun.) 
■衝撃の新感覚アニメーション やばい。ヤツは立喰いのプロだ…!
[監]押井守
[製]Production I.G 西久保利彦  [脚]押井守
[出]吉祥寺怪人 兵藤まこ 石川光久 川井憲次 河森正治 樋口真嗣 寺田克也 鈴木敏夫 品田冬樹 神山健治 
[声の出演]山寺宏一 榊原良子
[制作データ] 2006米/東北新社=Production I.G
[上映時間] 104 分 ■「立喰師列伝」公式サイト

【マクノスケ】
蕎麦屋やファーストフード店で代金を払わずにいかに食すかを生業にしている伝説の「立喰師」のテクニックを(あくまでも事実を元にした)似非昭和史と共に語る「イノセンス」「甲殻機動隊」の押井守監督のドキュメンタリーアニメ!

手法は、実際の人物の写真を3DCGに加工し、アニメとして動かす独自の技法「スーパーライブメーション」で、見た感じはパタパタアニメのようなのですが、これがですねー。動かない時は果てしなく動かないのですよー。そこに怒濤の押井語(むずかしい言葉を必要以上に駆使して嵐の如く語り倒す!)が、これでもかと挿入され、思った以上に見る人を選ぶ映画になっていて、「押井さん、よくぞ、ここまで自分の趣味を押し通した!」と…ファンならウハウハ…、知らないで見た人にとってこれ以上の不幸はないという…映画になっておりました。

まあね。ファンと呼ぶには作品を見ていない私ですけど、押井さんの事が好きで良かったかなーと。(笑)なんかこう…映画を楽しむって言うより、押井さんの趣味(愚痴?)を黙って聞いてあげる聞き手である自分という立場に陶酔しつつ(…って、おたくってこと?)、全編、語り続けの山ちゃん(山寺宏一)のトークに惚れ惚れし、ロッテリアのシーンでハンバーガー100個注文する役で出ている音楽の川井憲次さんとその川井さんの音楽を堪能してきました。(出だしからいつもの川井さんで笑っちゃいましたけど、チューカラーのインドの立喰師のシーンで流れるインド風な曲が新鮮でした。) んー、でも、DVDを買いたくなるような作品ではなかったかなあ。 (とどのつまり…押井信者じゃないって事デスね…私。)

【マクタロウ】
押井守が創り出した「立喰師」とは、平たく言えば無銭飲食を生業とする者達のことである。
本作はその「立喰師」達の伝説にメスを入れ、分析するという、論文形式で展開されていく。

終戦直後、闇市のそば屋に現れた説教強盗のような「月見の銀二」から、60年安保、高度成長期までの立喰師が、それぞれが技と誇りを持って立喰に臨んでいたのに対し、ファーストフードの時代(バブル期)に至ると集団で店を襲撃、徹底的に食い尽くす様は正にその時代の象徴と言えよう(チェーン店への攻撃は大量消費時代への反撃ともとれるだろう)。
やがてバブルの崩壊はアイデンティティの喪失をも招き、この時代の立喰師はデ○○○ーランドを夢想したり、インド人になりすますなど、本来の自分とは違う立ち位置から立喰を行い、あたかもその行為が「自分探し」であったかのように描かれる。
そう。この作品は各時代に現れた「立喰師」を描くことによって「時代」を切り取って見せる、押井守による押井守的戦後史、日本人感なのである。
映像はデジタル紙芝居とでも言える、デジタル化した静止画像を繋いでアニメーションのように見せる手法である。それは物語同様、私的であり実験的である。
その映像に「押井守的回りくどいナレーション」が付くのである。この「押井守的回りくどいナレーション」を楽しめる感性の持ち主と、動かない場面は徹底的に動かない映像に耐えられる方、押井守の世界にドップリ浸かってみたいという方にはオススメの作品だろう。
私は「終盤辛かった」事を告白しておく。



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