イラスト・南十字あたる
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「あれが、オーロラ姫!?なんて、美しい・・・!」
空中戦に気を取られ手薄になっている基地内最奥の古びた塔から、
その力は発していた。
フェイはもはや、視力に拠らない「何か」で、周囲の存在を感じていた。
間違いない。これが、オーロラ姫だ。ものすごく温かくて透明なオーラ!
「誰だ!?」
オーロラの監禁された部屋のすぐ隣は通信室兼見張りの
待機室となっていた。
手薄、といっても十数人は兵士がいる気配がした。
早鐘のように鳴る鼓動を抑え、素早く見張り穴から発光弾を放ち、
ドアの真横で息を潜める。
と同時にドアが蹴り開けられ数人の兵士が駆け出す。
残ったのは話し声からして・・・5人・・。
傷ついた今の自分では5人の相手は無理だ。
すると、不思議なことが起こった。
「基地内に侵入者が複数居るぞ!
ガイマ様は戦闘に出てしまっている。
3人、来い!侵入者を捕らえ、手柄をあげようぜ!」
フェイが身を隠すドアの前を通って4人が出て行った。
残った1人を後ろから不意打ちにして、
モニターの前に立ったとき、その理由がわかった。
「ベラミス様!」
幾つかの場所を映し出しているらしいモニターパネルのひとつから、
ベラミスと3人のサイボーグ達の声が拾われてきた!
どうして敵のサイボーグ達と一緒に行動しているのかは、わからない。
わからないが、ここにオーロラが居る以上、
目指しているのは、きっと、ここだ!
フェイは必死で、他にわからないようラセツ軍の暗号で打ちはじめた。
「!!」
ベラミスは、樹海で応急修理をしただけの、
あの、簡易通信機でそれをキャッチした。
「フェイ!!フェイか!?無事だったんだな、何処だっ!?」
「ベラミス様、一度外に出てください!
東側の奥に塔の先端が見えるはずです。
オーロラも私もそこに居ます!!」
既に走り出しているベラミス。クーゴ達が追う。
そこで先ほどのギューマ兵たちと出くわす。
直ぐに相手が増え数十人になる。
「クーゴ!ベラミス!ここは俺たちが引き受けた!!行け!!」
ジョーゴがきっぱりと振り返る。長髪がなびいた。
「よし!!頼むぞ!ジョーゴっ、ハッカ!!」
頼まれては燃えないわけにいかない、
「男」ドン・ハッカが本領発揮する!
「おいおい!どこに眼ぇつけてんの!?
このハッカ様がお相手するぜぇ!!」
もはや、誰もクーゴ達の後を追う事は出来なかった。
「おかしい・・・!」
ギリア達飛行部隊の戦い方に、次第にガイマは疑問を感じた。
よく観ると、有利な状況になっても少しずつだが引いている。
そのせいで、どんどん、134基地から離されて行っているのだ。
「そうか!プリンス・ガイマともあろう者が、今ごろ気付くとは!!」
怒りと焦りが沸き起こる。
戦っている仲間を残し、ガイマ機が戦線を離脱した!!
「フェイ、もうすぐだ!!大丈夫か!?」
「ベラミス様、何か来ます!」
「何!?」
「プリンス・ガイマらしい戦闘機が!!あー!!」
「オーロラを・・、フェイ!!」
通信が破壊音とともに切れた。
塔の天井をぶち破ってガイマ機が頭上に迫った。
フェイは崩れ落ちてくる瓦礫から身を呈してオーロラをかばっていた。
周りの壁が崩れ始め、空気が竜巻のように逆流する。
「逃げなさい!早く!」崩れた壁の向こうに抜け道の螺旋階段がある。
フェイがオーロラの楯になる。
「でも、でも!あなたは!?」
「私は平気です!ベラミス様が来てくれます!だから、早く!」
ガイマ機のハッチが開く!
「行って!早く!!」
来る!!
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