1978年4月2日から1979年8月26日まで 全73話が放映されたテレビアニメ「SF西遊記スタージンガー」のファンクラブです。        



スタジン小説 その9

「別れ」                               作・さつき



イラスト・南十字あたる

                            <9/9> フェイの全身に緊張が走り、もう一度オーロラを見る。 オーロラはこっくりと頷くと、壊れた壁塊を超えて駆け出した。 フェイには、最後にベラミスが言おうとしたことが、 はっきりと判っていた。 だからこそ! フェイはオーロラの抜けた通路を背にして、何度でも立ち上がる! 気力だけで!目の前には・・プリンス・ガイマ!! 「しぶとい奴め。」 壁の一角がまた崩れ落ち、塵煙が立つ。 ガイマのレーザー銃が、ゆっくりと、フェイの胸に的を絞る。 「・・これで、最後だ!」 (ごめんなさい、ベラミス様。何もできなくて・・。) 次に!彼女が見たものは、 全身から炎を放ち降臨したベラミスの姿だった。 降臨、としか思えなかった。その時のフェイには。 怒りのオーラが熱い! 「フェイ!下がっていろ!!」 「は、はい!」 電磁剣が眩しいほど煌いた。 「ガイマ!!!」切る! さすがガイマも一太刀はかわしたが、 崩れた体勢を立て直すヒマがない。 ベラミスが懐に飛び込む。 ガイマが無茶苦茶に銃を乱射する。 腕に激痛。電磁剣が落ちる。 しかし、ひるんだのはガイマのほうだった。 ベラミスは、そのまま、素手でガイマの銃を叩き落すと、 渾身の力でガイマをなぐり倒す。 (こんな奴に武器なんかいらない!)唇に微笑みが浮かぶ。 「こ、こいつ・・。」じりじりと、じりじりとガイマが後退する。 落とした銃に近づいている。 「ベラミース!無茶するな!!」 割って入ったクーゴがその銃を更に遠くへ蹴飛ばした。 クーゴの出現で戦局が動いた。 「ア、ストロ棒!!」 大きく飛びのきつつ、ガイマが頭上の機体に狂ったように叫んだ。 「収容しろ!!」 「もういい!クーゴ、早くオーロラを!!」 「わかった。」 クーゴは瓦礫に埋もれ始めた階段を急ぐ。 「姫!オーロラ姫ぇ!!」 「・・・クーゴさん。」震える声が応える。 踊場の隅で進めなくなっていたオーロラの細い姿。 「姫っ!!・・・よかっ・・。」 「クーゴさん!!」 涙が思わず滲みそうになるのを堪え2人は見詰め合った。 しっかりと手を取り合ってクーゴとオーロラは外へと、光へと向かう。 やがて。 「これからどうする?ギリア。」 「はは・・・。134基地を壊滅させましたからね、 ギューマもラセツも敵にまわしました。 私はこのまま、生き残った者達を連れて新天地へわたります。」 「・・あてはあるのか?」 「幸い任務のおかげでラセツも手の届かない辺境の星系まで 知っています。1つ、2つは・・。」 「では。フェイを連れて行ってくれ。」 「え!?ベラミス様、何を!?」 「フェイ・・・もう充分だ。ありがとう・・。」 「何をおっしゃるんですか!? 私はベラミス様のお傍を離れません!!」 フェイは激しくかぶりを振ってベラミスに抱きついた。 「・・・例え、遠く離れても、 私はおまえが幸せに生きていてくれるほうが・・嬉しい・・・ これは指揮官としてではない私の・・・わかるね、フェイ?」 「嫌です!わかりません!!私はっ・・。」 「ベラミス様も一緒に来ませんか?」 誠意を込めて、ギリアが訊いた。 フェイは言葉を飲み込んで、ただ一心にベラミスの答えを待つ。 沈黙が支配する数分が永遠にも思えた。 「私は、ラセツ星へ戻る。」 噛み締めるようにベラミスが言った。 その決意に、ギリアがゆっくりと敬礼した。 「フェイのことは、お任せください。」 フェイの瞳から涙が溢れた。 「後でセレイを行かせる。途中で合流するといい。」 「妹も!?・・有難うございます・・。 でも、でも・・・。ベラミス様!! 必ず来てください。目的を遂げたら・・。」 「うん、そうするよ。」 「本当ですか!?ベラミス様、約束ですよ?必ず・・!!」 「ああ。」 フェイにバラのような笑顔が咲いた。 失ったはずの視力が、 オーロラの無意識のギャラクシーエネルギーにより癒されているのは、 別れた後に判るのだがベラミスは笑顔の中にその片鱗を・・見た。 フェイは安心してギリアの艦に乗った。 ・・大丈夫。ベラミスが自分に嘘を言ったことなどないのだから・・。 その艦が星の海のかなたへ消えてしまっても、 ベラミスはずっと見送っていた。ひとり。 目的を遂げたら・・・その時はフェイやギリアのいる惑星に本当に行こう・・・、 そんな夢を見ていたのかも知れなかった・・叶わぬ夢を。 遠くから見守っていたクイーン・コスモス号が、 静かに発進したのにさえ、気づかなかった・・。 宇宙に優しい波動が打ち寄せている。 オーロラ姫が祈っているのだろう、銀河系の中心である大王星へ向けて。 ・・・「ギャラクシーエネルギー、それは 愛です。」・・・ fin. <先頭ページへ戻る> スタジントップページへ戻る       ●2002・9・24更新