1978年4月2日から1979年8月26日まで 全73話が放映されたテレビアニメ「SF西遊記スタージンガー」のファンクラブです。        



スタジン小説 その9

「別れ」                               作・さつき



イラスト・南十字あたる

                             <1/9> 今!ベラミスの剣はうなりをあげていた。 1秒だってぐずぐずしているヒマはない 一刻も早くこの樹海から、「生きている」樹海から 脱出しなければならないのだ!!   「フェイ!!右前方30度!3発!!」 「はい!」 生命体を取り込んで自分の一部にしては繁殖を続ける木々の枝が はっきりと意思を持って伸びて来る。フェイの銃も見事な速さで火を噴く! フェイは、以前はベラミスの副官を務める優秀な兵士だったが、 現在はある戦闘時の負傷から右足が義足だ。 更に、しばらくたってから視力を殆ど失うという後遺症が出た。 まったく見えないと言う訳ではないが恐ろしく不自由だ。 それでも!彼女は片時もベラミスの傍を離れない。 勘が人より鋭いのとベラミスの為に躊躇無く命を投げ出す覚悟が 出来ているので、そこは譲らない。 類稀な素直さで努力するので、今では他と変わらない位動きはスムーズだ。 そんな彼女を見ているとベラミスもとうに「危険だから同行するな」という 説得が出来なくなっていた。 「左斜度45!道が空いた!!フェイ、撃ち続けながら突破する!!」 「はい!!」 電光石火という言葉は、このためにあるのだろう。 やがて、2人は樹木の手の届かない高台へ出た。 しかし。 「どうしましょう?ベラミス様」 眼下に広がる樹海が果てしないことを感じ取ったフェイが、思わず聞いた。 「うん。近くにギリア隊がいるはずだ。救助を頼む。」 性能も大きさも、あまりに心もとない簡易通信機を、 ベラミスは自分の身体から導線を取ると即座に修理した。 それすら、壊れていたのだ。 薄い電波が空に吸い込まれる。虚しい努力に感じられる。 だが、ベラミスはあきらめない。 「来た!」 偵察機らしい。ラセツ軍の紋章が反射している。 「これは。ベラミス様でしたか!光栄です! ラセツ軍団辺境星第弐部隊・司令官ギリアです。」 案内された基地内で、うやうやしく頭を下げたのは、 以前ラセツから聞かされていた「隼のギリア」その人だった。 最前線に基地を持ち、ラセツ軍団の切り込み隊長として名高い。 「ありがとう。ギリア。助かった。」 「いえ、とんでもありません。お役に立てて光栄です。 それにしてもラセツ軍団最高司令官のあなたが、何故こんな辺境の地に? もしや・・ラセツ星で何か?」 「休暇だ。」 「は!?」ギリアは思わず素っ頓狂な声を出した後、朗らかに笑い出した。 「それは、命がけの休暇ですね! あの北の土地の樹海に迷い込んで抜けた方というのは、初めて聞きます。 どれほどの腕をお持ちなのかよくわかります!そちらの方も。」 言われてフェイはビックリしてギリアを見た。 フェイにとってベラミスに付いて行く事は当たり前で、 賞賛されるようなことではないのだ。 その夜は、急遽、ベラミスとフェイの歓迎会が執り行われた。 <次のページ 2/9> スタジントップページへ戻る       ●2002・9・24更新