のほほん映画観賞備忘録・2006年9月〜12月

SF・アクション映画が大好きなマクノスケ&マクタロウの映画鑑賞備忘録です。
ふたりで「のほほ〜ん」と感想を語っています。


■2006年 9月〜12月  基本的にネタばれしておりますので御注意を!
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  【2006】/1月〜4月5月〜8月/9月〜12月

  【09月】UDON / X-MEN:ファイナル ディシジョン / マイアミ・バイス / イルマーレ / 夜のピクニック /
            レディ・イン・ザ・ウォーター /
  【10月】ワールド・トレード・センター / ブラック・ダリア / 16ブロック / 父親たちの星条旗 /
  【11月】
  【12月】007 カジノ・ロワイヤル / 硫黄島からの手紙 / 犬神家の一族 /
■2006. 12月
  007 カジノ・ロワイヤル / 硫黄島からの手紙 / 犬神家の一族 /

犬神家の一族 2006.12.17.(Sun.) 
■日本映画史上最高のミステリー

[監][脚]市川崑
[原]横溝正史(角川文庫刊)
[出]石坂浩二 松嶋菜々子 尾上菊之助 富司純子 松坂慶子
 萬田久子 奥菜恵 深田恭子 加藤武 中村敦夫 仲代達矢
[制作データ] 2006東宝 [上映時間] 135分
「犬神家の一族」公式サイト

【マクタロウ】
私には市川崑監督が何をやりたくて「犬神家の一族」をリメイクしたのかがわからない。
あえて皮肉を言わせてもらえば、「1976年版の素晴らしさが改めて分かる」という点が理解できるだけだ。

往年の切れのある演出、カット割りを望むのは無理だということは、ここ数年の作品(「八つ墓村」「どら平太」)を観てわかっていた。では本作はどこが売りになるのか、見所はどこなのかと思っていたのだが、こうもオリジナル通りの展開、台詞まわしではどこを観てもらいたくて映画化したのかが理解できないのだ。
屋内の撮影はセットを使っているようだが、オリジナルにあった「日本家屋の暗さ」というものが無く、薄っぺらに感じる。
役者も同様、オリジナルを超えて良かったと言える人はいない。特に重要な役の松嶋菜々子、脇役ながらコメディーリリーフとして際だつはずの深田恭子は良くない。富司純子も、悪くはないが高峯三枝子の貫禄には及ばない。

これだけのキャストをそろえ予算も使うのならリメイクなどせず、市川監督が映像化していない他の「金田一もの」を撮った方が良かったのでないか。

【マクノスケ】
高校生の頃、金田一にハマって本を読み倒しました。特集本やらテレビシリーズもかかさずチェックしていましたが、やっぱりインパクトがあったのは、映画「犬神家の一族」です。あれから30年ですか…。あ〜私も年を取ったわけだ。(笑)なぜ今リメイクなのか…その答えを探しに劇場に足を運んでみたわけですが…。

ほとんど…と言って良いほど、同じセリフ、同じ構図で映画が進んで行きます。見所はメインの3人(金田一さんの石坂さんと署長の加藤さん、それに神官の大滝さん)以外のキャストの演技なんですが、好みから言うと、やはり前回の方が良かったですね。特に松子は、冷酷さ、残忍さ、品格から言っても今回の富司純子よりも高峰三枝子の方が合っていたと思います。他にも猿造とか佐清とか今回も悪くないんですけど、両方ともちょっと線が細いというか…。

あとは那須ホテルの主人と女中さんですかねえ。それから謎の復員兵が泊まった商人宿の主人、これ前回はそれぞれ横溝正史、坂口良子、三木のり平が演じていたんですけど、今回、このキャスティングは如何なものかと。松子、佐清の富司純子、尾上菊之助の親子共演は、なかなか泣けるところもありましたが、珠世役の松島菜々子も前回の島田陽子の方が品があって合っていたかなあ。(松島菜々子は、ちょっと現代的過ぎる感じでした。)

風景もロケをせずにほとんどがスタジオ撮り、音楽はテーマ2曲を前作の大野雄二さんの曲を使っていましたが、それ以外はさほど印象に残らず…こちらもイマイチ。ラストの金田一さんが去っていくシーンも前回の汽車に乗って行く方が哀愁に満ちていて印象的だったのに対し、今回はあのあぜ道ってどこ?…とツッコミを入れたくなる程。いや、でも、なんか、あのラストの石坂さんの微笑みが、私がこの世で見る最後の金田一さんの姿のような気がして来て、ちょっと涙ぐんでしまったりしたんですけどね。 前回、犬神竹子、梅子を演じていた三條美紀と草笛光子が、別の役で出演しているところが面白かったかな。

ちなみに帰宅後、DVDで前作を、金田一さんが珠世さんを湖から救うところまで見ちゃいました。コマ割したような編集など、あの頃の演出好きだったなあー。



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硫黄島からの手紙 2006.12.09.(Sat.) 
■硫黄島で散った男たちから届けられる、世界へのメッセージ。

[監]クリント・イーストウッド
[製]スティーブン・スピルバーグ
[出]渡辺謙 二宮和也 中村獅童 伊原剛志 加瀬亮
[制作データ] 2006米/ワーナー [上映時間] 141分
「硫黄島からの手紙」公式サイト

【マクタロウ】
これほど贅沢で質の高い「日本映画」も、最近ではまれだろう。
いや、本作はアメリカ映画だということは重々承知の上で、あえて言えるのである。
しかも監督はクリント・イーストウッド。
「父親たちの星条旗」に続き、これだけクオリティの高い作品を立て続けに2本も監督できるということに驚く。
しかし、イーストウッドらしい作品か?といわれると、やや複雑な感情もある。前作もそうだが、「戦争」というテーマに飲み込まれてしまったのかと感じた。ただし、これは作品の出来とは別の話。

物語は二宮和也演じる西郷の目を通して語られていく。
彼は硫黄島の戦場を転戦し、最後には負傷、捕虜となり生きのびる。生きのびなければいけなかったのである。
なぜなら、彼は私達だから。私達観客の代表であり、戦場で起きたこと、戦争のことを語り継がねばいけないからである。
西郷に限らず、人物配置やキャラクター設定も巧みである。どこまでが史実通りなのかはわからないが、バロン西(伊原剛志)が見せる「敵兵も人間である」というエピソードと、そのことにより投降を決意した清水(加瀬亮)の理不尽な死が対をなし、戦争のやるせなさ、虚しさを感じさせる。
また、栗林中将(渡辺謙)や上記の西中佐という、軍人というより武人と言える人物の(やっていることは戦争だが)現実をしっかりと見据え対処する姿に共感を覚える。

たまたま母がこの作品を観たいと言うので一緒に行ったのだが、鑑賞後、普段聞いたこともなかった静岡空襲の話などをしてくれた。
もちろん私は本当の戦争を知らない。しかし本作のような映画や当時の人の話を通して「戦争」のことを少しは知ることができる。
この事こそが「硫黄島からの手紙」なのではないだろうか。

【マクノスケ】
クリント・イーストウッド監督による「硫黄島」の闘いを日本側から描いた2部作目。 マクタロウとマクタロウの母と3人で見て参りました。宣伝や予告では渡辺謙演じる栗原中将が主役のように語られていますが、本当は二宮和成演じる西郷が主人公。

身ごもった妻や子供のために「かならず生きて帰ってくる」と言って硫黄島で闘う事になった西郷を通して、忠誠心の為に散っていく者や過去を背負い、死ぬ事よりも生きる事の大切をさを知った男、日米を問わず自分の正義の為に闘う男など、戦場で散って行ったさまざまな男たちの姿が語られていきます。リアルな自決シーンや悲惨な展開に驚きつつ、愛国心だけに流されない、地に足がついた展開に、この映画の持つ意義や意味を感じました。主人公が戦争を否定しているという設定が、見ている現代の私たちと同じ視点になっているところが良かったのではないでしょうか?

他にも伊原剛志が演じたバロン西が良かったですね。高潔で最期まで男らしくて素敵でした。彼が助けたアメリカ兵の手紙を読むシーン、乗馬のブーツを抜いて銃を足で押さえ自決するシーン、涙なしでは見られませんでした。 もうひとり、良かったのは加瀬亮演じる憲兵だった清水ですね。 スパイではないかとストーリーを引っ張り、やがて彼の過去が明らかになる。そのあと、西郷に共感し、投降するわけですが、その時に写る千人針…。あそこに置いていったという事がどういう事だったのか…あとから、そういう演出だったのかとわかり、 素晴らしい演出と清水の死を悼む西郷(二宮くん)の演技に泣きました。

それにしても、こういう映画を撮ったのがハリウッドっていうのが、ちょっと悔しいですよね。出来れば、日本でこういう映画が作れたらいいのになあとつい思ってしまいました。今回も、音楽でも泣けます!



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007 カジノ・ロワイヤル 2006.12.02.(Sat.) 
■最初の任務は、自分の愛を殺すこと。

[監]マーチン・キャンベル
[原]イアン・フレミング
[歌]クリス・コーネル
[出]ダニエル・クレイグ エバ・グリーン マッツ・ミケルセン カテリーナ・ムリーノ ジュディ・デンチ
[制作データ] 2006米/ソニー [上映時間] 140分
「007 カジノ・ロワイヤル 」公式サイト

【マクタロウ】
新ボンドの登場とともに作品をリセット、ボンド誕生の物語とした最新作はハードなアクションとキャラクターの心情を描き、魅力あるアクション映画となっている。
冒頭のリアルな暗殺シーンから始まり、拷問シーンの重さなど今までの007とはひと味違う。
さらに、ボンドが本当の恋に落ちMI6を辞めようとする。原作は未読故、どこまで忠実かはわかりませんが、これまた人間くさくて良いのだな。
結局、愛した女性の裏切り(別の男を助けるためにボンドをはめた彼女も、本気だったから死を選んだのだろうけど)により真のスパイとなるラストは、切なくもあり「そうでなくては!!」という次回作への期待もあり見事。
そして「ボンド、ジェームズ・ボンド」という決め台詞と、あのテーマ曲(本作では初めてかかるのがエンディング!!)という終わり方がめちゃくちゃ格好良い。

主演のダニエル・クレイグは、「ミュンヘン」では血気盛んな若造という感じだったけど、本作では男臭い色気があり気に入った。

人によっては「こんなの007じゃない」と思うことだろう。幸い私はそこまで007ファンということもなく、十分に楽しめた1本だった。

【マクノスケ】
ダニエル・クレイグ…「ミュンヘン」に出ていた事しか憶えていませんが、(「ロード・トゥ・パーディション」の息子役は全然記憶にない!)なかなかワイルドでよう御座いました。

まあ、オープニングから飛ばしてくれましたよねえ。あんなに素敵なアニメも近頃、なかなかないのではないでしょうか?拳闘のシーンはCGから取り込んでいるのか…すごく動きが良かったですよね。色合いといい、構図といい、最初からハートをわしづかみにされてしまいました。あとは、アクションの連続で肉体派ボンド転向宣言の巧みなプロモを見せてもらったという感じ!

いつもなら荒唐無稽なシーンも、肉体を使ったアクションを用いた事によって、よりリアルでワイルドな作りとなって説得力が出ていたように思いました。またキャラクターもよく描けていて、ボンドとエヴァ・グリーン演じるヴェスパーとの関係も二転三転…ラストのボンドの寛容な姿に涙がにじんで来ちゃいました。

また終わり方もカッチョイイ!!! あの名セリフ!(戸田さんの訳はどうなのか?)そしてあのエンドロールの曲!! 内容はハードでワイルドな007(ダブルオーセブン)だったけど、あくまでもスタイルはお洒落で粋なところがナイスでした!! しかし素顔のエヴァ・グリーン可愛かったなあー。 フクツさんは岩城滉一がやっても良かったですよねえ。(笑)



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■2006. 10月
  ワールド・トレード・センター / ブラック・ダリア / 16ブロック / 父親たちの星条旗 /

父親たちの星条旗 2006.10.29.(Sun.) 
■戦争を終わらせた一枚の写真。その真実。

[監][製]クリント・イーストウッド
[製]スティーブン・スピルバーグほか
[脚]ポール・ハギスほか
[出]ライアン・フィリップ ジェシー・ブラッドフォード アダム・ビーチ
[制作データ] 2006米/ワーナー [上映時間] 132分
「父親たちの星条旗」公式サイト

【マクタロウ】
硫黄島の戦闘で撮影された星条旗を立てる有名な写真。その写真が、あまりに象徴的であったがために、偶然写真に収まっていたばかりに、翻弄されていく3人の男達(ギャグノン、アイラ、ドク)。いや、戦死した3人と、間違えられた1人も含め7人の若者とその家族に降りかかる悲劇。
戦場の残酷さに加え、祖国で偶像として祭り上げられ宣伝に使われる残酷さ。ギャグノンだけはその立場を利用しようとするが、彼とて使い捨ての駒にすぎず、ちやほやしていた名士達の連絡先も戦争が終わればただの紙くずとなってしまう。
アイラはネイティブ・アメリカンということもあるのだろう、自分が戦場を離れることに自責の念を強める。彼の言う「弾から逃げていただけ」という言葉は、「弾から逃げ切れなかった」者達への謝罪のように聞こえる。
一番冷静に見えるドクも戦場で自分を呼ぶ声から解放されることがなかった。
このような重く激しいテーマを持ちながらも、真摯にそして冷静に物語を語るイーストウッド監督の演出はいかにも彼らしい。
物語はドクの息子が生存者への聞き取りを進める現在、ドク、アイラ、ギャグノンが戦時国債キャンペーンで各地を回る場面、そして硫黄島での戦闘場面を行き来するのだが、それぞれを見事な編集で繋ぎ素晴らしい効果を上げている。
硫黄島上陸の戦闘場面は「プライベート・ライアン」以来の激烈さ。激しい艦砲射撃、大船団を俯瞰でとらえたり、航空機からの視点を入れたりと、現在の視覚効果をふんだんに使い戦争パノラマも堪能できる。

それにしてもラストシーン、戦闘の合間に訪れた休息。海水浴を許された若者達の無邪気な様子に涙がにじんだ。 それはまるでイーストウッド監督が用意してくれた、彼らの安息の地だ。

【マクノスケ】
硫黄島に星条旗を上げた6人のうちの3人にスポットを当て、その後の姿を追うイーストウッド監督の硫黄島2部作のアメリカ側の視点から描いた第1作。
戦場のむごさ、悲惨さが色調を押さえた画面から淡々と染みいるように伝わってきます。映画は時間と場所を組み変えながら進行しますが、戦場から大統領執務室へのシーンの切り変わりなど編集の巧みさにも目を奪われました。

1枚の写真で人生の重荷を背負ってしまった人。それを利用し金儲けを企む人。己の欲のためだけに戦場で特権を振るう人。次々と命を落としていく若者とは裏腹に描かれる人間の欲。そんな醜い人間の一面を描きながらも、親子愛、友情までも描き切ったイーストウッド監督に脱帽の1本でした。

予告でも流れる音楽は、またまたイーストウッド本人が担当。予告で流れた曲が効果的に使われています。ライアン・フィリップ(リース・ウィザースプーンの旦那)とネイティブ・アメリカンのヘイズを演じたアダム・ビーチの演技も素晴らしかった!イギーがジェイミー・ベルだと知ったのはエンドロール。ロバート・パトリック(T2のT-1000)も出ていたらしいのですが、どの役だったんだろう?



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16ブロック 2006.10.21.(Sat.) 
■わずか16ブロック(区画)先に証人を護送する──。それは簡単な任務のはずだった…。

[監]リチャード・ドナー
[製]アビ・ラーナーほか
[脚]リチャード・ウェンク
[音]クラウス・バデルト
[出]ブルース・ウィリス モス・デフ デビッド・モース ジェナ・スターン
[制作データ] 2006米/ソニー [上映時間] 101分
「16ブロック 」公式サイト

【マクタロウ】
リチャード・ドナー監督、久し振りのヒットではないかな。
何が良いかって、尺が2時間無いってところが素晴らしい。
「マーヴェリック」以降、長くてグダグダな作品が多くて、正直「力に見合った尺数でやればいいものを・・・」と思っていたのだよ。
本作は、物語の進行がほぼリアルタイムで語られ、2時間という枠の中にうまくドラマとアクションを散りばめてあり、飽きさせない。
ブルース・ウィリス演じる刑事ジャック(人生を諦めてしまったようなヨレヨレ感がいい)。彼が、護送する証人エディとの出会いにより、過去と向き合い償いを決意する。またエディもジャックに助けられたことにより、人生をやり直す。作品のキモが彼らの「人生の償いと再生」にあるとは思ってもみなかった。単純なドンパチアクションムービーとは一線を画す展開には満足。後味の良いラストもほのぼのとする。


【マクノスケ】
酒に溺れたよれよれ刑事ジャックが上司から命じられた16ブロック先への証人=エディの護送。ところがエディはジャックの同僚刑事フランクの不正を見ていたのでした。かくして、エディを連れて裁判所へ急ぐジャックと証言を阻止せんとするフランクの、対決の火ぶたが今切られたのでした。

決してブルース・ウィリスファンじゃないんですが、数えると結構見ているんですよねえ。当たりもあれば、ハズレもあり、結構作品のヒットの差が激しい役者さんだと思うんですが、これ、はっきり言って「当たり」です!!今年は「マイアミ・バイス」と言い、刑事物は良いですよねえ。今回は役回り的にはダイ・ハードのマクレーン刑事みたいなんですが、内面は「シックス・センス」のマルコムを彷彿とさせるところもありぐぐっと来ました。

ドナー作品としても久々に燃えたーって感じですね。話が進むに従って明らかになってくるジャックとエディの過去がなんとも味わい深くラストシーンでは涙ぐんでしまいました。激しいアクションの中にファンタジックな要素もあり、男の悲哀と友情と人としての生き方を問う素敵な作品だったと思います。悪役のモースさんのひげ面にも10点!!(笑)



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ブラック・ダリア 2006.10.14.(Sat.) 
■世界一有名な死体、世界一忌まわしい謎。

[監]ブライアン・デ・パルマ
[原]ジェイムズ・エルロイ
[出]ジョシュ・ハートネット スカーレット・ヨハンソン アーロン・エッカート ヒラリー・スワンク
[制作データ] 2006米/東宝東和 [上映時間] 121分
「ブラック・ダリア」公式サイト

【マクノスケ】
「殺しのドレス」以来のデ・パルマファンで、作品として「LAコンフィデンシャル」も大好きな私としては、ある程度期待して観に行ったわけですが、映像的にデ・パルマならではの演出にはウハウハしたものの、全体的にはいまひとつぐっと来る物がなく少々残念な印象です。

この映画。実際に起こった事件を元にエルロイがハードボイルドとして書いた原作を映画化しているのですが、話としては「ブラック・ダリア事件」を核とした2人の刑事と1人の女の葛藤を綴ったもの。映画の前半は、この3人の出会いと奇妙な三角関係に赴きがおかれ、中盤から事件の確信へと迫って行き、最期には元のお話へ戻っていくのですが、どう見ても「あんこ」になっているタイトルの「ブラック・ダリア事件」の方が勝っちゃってるんですよねえ。
なので本来重要なはずの3人の人間関係の部分が時間を掛けている割には希薄になってしまい、ラスト。バッキー(ジョシュ・ハートネット)がケイ(スカーレット・ヨハンセン)の元へ帰って来てもなんの余韻もなく、むしろ、全然入れなくてもいい「エリザベスの死体」の映像にデ・パルマらしさをみつけ、ニヤッとしてしまうと言う…映画としては致命的なミスを犯してしまっているんではないかとさえ思ってみたり…。(いや、私はそこが嬉しかった口ですが…。)

キャスト(ジョシュ、ヨハンセン、エッカード、スワンク)も思ったよりは悪くなかったとは思いますが、演技がどうのと言うより、4人が4人とも、いかがわしくないと言うか、思い切って書くとエロくないのが頂けないんですよねえ。ああ言う退廃的な人間関係を描くのなら、もっと内面のエロさみたいなものを持っている役者を配してくれないと雰囲気が出ないというか、健全過ぎちゃうっていうのかなあ。 役者が悪いのかデ・パルマ先生の演出が悪いのか…そういうのが描けないようなら、いっそのこと「ブラック・ダリア事件」の部分だけを抜き出して、(リー抜きにして)映画化した方が面白かったのかも!まあ、1番良いのは、原作をもっと上手く脚色出来れば良かったんですけれどね。

しかし、音楽もなぜにあそこまで「LAコンフィデンシャル」を意識した曲作りになってしまったのかなあ。最初、気になって映画に没頭出来ませんでしたよー。今更、ピノ・ドナッジオじゃB級過ぎてダメなのかもしれないけど、マーク・アイシャムには、もうちょっと違う曲を描いて貰いたかったなあ。

まあ、なんだかんだ言っても、久々にデ・パルマ節(銃撃シーンのワンカット撮影やリーの転落シーンやラストの死体など)が見られたのとヒラリーの母親役を演じたフィオナ・ショウ(ハリー・ポッターのペチュニアおばさん!)の壊れた演技が素晴らしかったので、ファンの方にはお薦めなんですけれどネ!



【マクタロウ】
原作を読んだのは7〜8年前。細かい内容は既に覚えていないので、読んでいないのとほとんど同じという情けない私。
でも、最初は「セブン」のデヴィット・フィンチャーが監督としてアナウンスされ、「これは楽しみ!!」と思っていたのだが、結局監督はブライアン・デ・パルマ、アーロン・エッカートとジョシュ・ハートネットがそれぞれブランチャード(ファイア)とブライカート(アイス)を演じることに。
細かい内容は覚えていなくても作品の雰囲気はなんとなく覚えているもので、「どうも役者に魅力がないなあ」と思っていたら案の定、作品の怪しさ(妖しさ)に役者が追いついていない感じがした。
ストーリーは整理し切れていない感じがする。121分の作品なのに長く感じたのは脚色のまずさからではないだろうか。
それでもブランチャードが待ち伏せされビルから転落するシーンなどは、影の使い方などにデ・パルマらしい演出が効いていて緊張感がある。ラストに見せる「ビックリ」カットも、らしいと言えばらしいけど。
事件の内容からしたら、全体的に退廃的でどろどろした雰囲気がほしかったのだが、それがあまり感じられなかったのが残念。



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ワールド・トレード・センター 2006.10.08.(Sun.) 
■勇気そして生還――これは、真実の物語。

[監]オリバー・ストーン
[脚]アンドレア・バーロフ
[出]ニコラス・ケイジ マイケル・ペーニャ マギー・ギレンホール マリア・ベロ スティーブン・ドーフ
[制作データ] 2006米/UIP [上映時間] 129分
「ワールド・トレード・センター」公式サイト

【マクノスケ】
もう冒頭から泣きっぱなしで、1つ席を挟んだ隣の方のすすり泣きにも影響されてしまって、堪えられそうなシーンでも、とうとうと涙が出てしまって、映画を見終わったあと…顔に幾筋もの涙のあとが出来ていました。このところ、こんなに泣いた映画も無かったんじゃないのかなあ。 思い返せば、あの日は、マクタロウが翌日、車の免許の試験があって、いつもは付けっぱなしにしているテレビを10時過ぎまで消していました。ひと息入れようという事でテレビをつけたら、飛行機がビルに突っ込んでいる映像が飛び込んできて唖然としてしまったのを記憶しています。

映画の話に戻りますが、この映画はイデオロギー的な観点からは描かれていません。 ビル崩壊で瓦礫の下敷きになった湾岸警官のふたりの生還が、いかに行われたのか、その間の家族の思いはどうであったか…多少、映画的なセンチメンタルな演出も入りますが、それでもドラマとしては丁寧に観ている人に、とても分かりやすく作られている誠実な映画だと思います。
オリバー・ストーンの映画は「7月4日に生まれて」「JFK」「ニクソン」くらいしか観ていない私ですが、これが一番共感出来たかもしれません。今回はパンフレットやレビューなどに一切目を通していないので、監督の真意の程はわかりませんが、映画のテーマとして描かれる人々の結束こそが、現在の政権が失っている大切なものだと暗に言っているようにも思いました。

役者陣は ニコラス・ケイジ(ジョン・マクローリン)、マイケル・ペーニャ(ウィル・ヒメノ)、マギー・ギレンホール(アリソン・ヒメノ)など芸達者なところを見せていますが、中でも私が良かったのは、ケイジくんの奥さんドナを演じたマリア・ベロ!!「アサルト13」の時のセクシーで緊迫感溢れる演技が印象に残っていたのですが、今回も母親として妻として、緊急事態に翻弄される姿を見事に演じておりました。「ヒストリー・オブ・バイオレンス」もいつか観てみたいと思っています。



【マクタロウ】
複雑な気持ちになる映画だった。
リアルタイムで流されるテレビの映像を「何が起きているのか?」と観ていたのは、つい数年前。生中継で目の当たりにしたこのような大惨事(しかもテロ攻撃)は衝撃だった。
航空機衝突からジョン(ニコラス・ケイジ)達が崩壊に巻き込まれるまでの展開、映像は、圧倒的な迫力でドキドキする。やはりテレビを通していたとは言え「その時のことを知っているというのはこういう事か」と。
作品としては、彼らが助け出される過程における人々の信頼、家族との愛を描き、前向きなメッセージを送っていることは共感できる。
だが、無事救出された主人公達には「本当に良かった」と思う一方、帰らなかった人達に思いが及ぶ。さらには、その後のアメリカによる対テロ戦闘・・・。私としてはどちらかと言えば後者の気持ちが大きく、作品にのめり込むことが出来なかった。
「9.11」を1本の映画として観るには、まだ生々しすぎたというところだろうか



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■2006. 9月
  UDON / X-MEN:ファイナル ディシジョン / マイアミ・バイス / イルマーレ / 夜のピクニック /
  レディ・イン・ザ・ウォーター /

レディ・イン・ザ・ウォーター 2006.9.30.(Sat.) 
■「急いで。ハッピーエンドまで、もう時間がないわ」

[監][製][脚]M・ナイト・シャマラン
[製]サム・マーサー
[出]ポール・ジアマッティ ブライス・ダラス・ハワード フレディ・ロドリゲス ジェフリー・ライト ボブ・バラバン
[制作データ] 2006米/ワーナー [上映時間] 110分予定
「レディ・イン・ザ・ウォーター」公式サイト

【マクノスケ】
シャマラン監督の最新作…という事で、期待していたのですが、う〜〜〜〜〜〜ん。これがねえ。悪くはないんですけど、良くもない。

アパートの管理人をやっているおっさんがプールに出没する精霊を助けた事から起こる思わぬ展開を描いているのですが、確かにね。シャマラン監督、事前に「今回はオチはない」と公言していたので、こういう展開でもいいとは思うんです。ただ冒頭で世界観を語りすぎているような気がするし、これは「お伽噺」なんです…とは言っても、舞台があまりにも現実なので、おっさん以外のキャラが、この世界観をなんの疑いもなく信じてストーリーが進むという点が、逆に不自然。

これまでもストーリーやオチとは別に、登場人物の心理描写やキャクターの面白さを充分に描いて来たところにシャマラン監督の魅力があったと思うのですが、今回は、なんと言うか、キャラはストーリーを進めて行く駒のようで、さながら「ロールプレイングゲーム」を観ているようでした。もし、それを狙っていたのなら、もう少し主人公の苦悩の部分を映像で見せた方がよかったんじゃないでしょうか?

う〜〜〜〜ん。 でも1番気になったのは、シャマラン監督の役どころかなあ。 理想に燃えるのはすごく良くわかるんだけど、それを自分で演じちゃうところがどうかなあと思うんですけどねえ。いや、演技や出番の長さは全然気になっていないんですけど、あーいう役はむしろ主人公に振って、あくまでもシャマラン監督は、主人公を手助けするただのアパートの住人で良かったと思うけどなあ。まあ、主人公が「サイン」のメル・ギブソン同様、癒されて行く最期には泣けちゃったんですけどね。(^^;) しかし、ブライスは父ちゃん(ロン・ハワード)に似てますねえ〜。



【マクタロウ】
「シックス・センス」があまりにも大きすぎるのでしょう。その後の作品も、最後に「何か」を見せてくれると期待する観客に何とか応えてきたのだけど、遂に本作では開き直りとも言える行動に出ました。

オープニングで語られる「おとぎ話」で「今回はこういう話です」と言い切って手の内をさらけ出し、本編の内容は妖精(ストーリー:ブライス・ダラス・ハワード)を無事に帰すための人物捜しだけと言ってもいいようなもの。
そのヒントとなる「おとぎ話」は、主人公(クリーブランド:ポール・ジアマッティ)が管理人を務めるアパートの住人から聞き出していくのだが、この展開には疑問を感じる。直接妖精から聞き出すという進め方でも良かったのではないだろうか。老人から聞き出す「おとぎ話」通りの展開ではご都合主義以外の何物でもなく、しらけた。
これまでの作品では、お話のネタは置いておいても演出力や全体を覆うしっとりしたシャマラン監督らしい雰囲気があったのだが、本作では演出のキレが悪く、独特の雰囲気も感じられなかったのが残念。
ブライス・ダラス・ハワードの人間離れした雰囲気を始め、役者は(監督本人を含め)良い味を出していたと思うのだが・・・。
報道では「ハリー・ポッター」シリーズを監督したいと語ったそうだが、ここらでそういった物をやってみるのも良い気分転換になるかもしれない。とりあえず次回作に期待しよう。



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夜のピクニック 2006.9.30.(Sat.) 
■特別なこの日なら2人の関係を、きっと変えられる。

[監][脚]長澤雅彦
[原]恩田陸
[脚]三澤慶子
[出]多部未華子 石田卓也 郭智博 西原亜季 貫地谷しほり
 松田まどか 加藤ローサ 池松壮亮 嶋田久作 温水洋一 南果歩
[制作データ] 2006ムービーアイ=松竹 [上映時間] 117分
「夜のピクニック」公式サイト

【マクノスケ】
恩田陸の小説の映画化。原作者の母校で実際に行なわれている伝統行事「歩行祭」は、年に1度、全校生徒が24時間かけて80kmの道のりを一緒に歩くハードな行事。高校3年となり最期の「歩行祭」を向かえた主人公貴子は、ニューヨークへ行ってしまった友達からのハガキを胸に友達と80キロの道のりをスタートするが…。

とにかく胸キュン!! あーあんなみずみずしい頃があったなあ…と、うん十年前を懐かしむ私。(笑) 貴子の秘密が歩行と共に明かされていく過程も見事だったし、とにかくメインのキャラ全員が生き生きと描かれていて、こういう映画をたまに観るのも悪くないな〜としみじみ思いました。
最期には、やはり涙なみだのシーンが待っているのですが、こういう涙って素敵だなあ。お互いを理解し合うって事の大切さとか、一瞬のきらめきのような時間を過ごせる事の素晴らしさとか…なんだかこのところ、失っていたピュアなものを見せて貰ったような気がします。

キャラとしては、おきゃんな後藤利香役の貫地谷しほりちゃんが良かったー!!(「スィイングガール」に出ていたそうですね。)あとは高見光一郎役の柄本佑くんの見事な(!)ゾンビ演技に終始大笑いしていました。彼はゾンビって言うより吸血鬼みたいだったですね。(笑)



【マクタロウ】
決して良い出来とは言い切れないし、誰にでも勧めたくなるような作品でもない。だけど良い部分が多くて憎めないというか、観終わった時には気持ちが温かくなっている、そんな作品に時々出会う。
私は「可愛い作品」とか「愛おしい作品」などと呼んでいるが、本作もそんな「可愛い作品」でした。
丸一日、80kmを夜通し(仮眠はとるが)歩く学校行事、「歩行祭」を舞台に、主人公貴子(多部未華子)と西脇融(石田卓也)を中心に、彼らの友人達それぞれの抱えた悩みが綴られていく。
主役二人の、なかなか心を開かないキャラクターが物語を最後まで引っ張っていく。それ故に、二人がうち解けて会話が弾むくだりは爽快だし、ゴール前で貴子が美和子(西原亜希)に涙と共に言う「ありがとう」には、こちらもホロリとさせられた。このシーンでは、ゴールした貴子達をパンアップしていくとアーチの「スタート」の文字が写り、彼女たちが新たなスタートラインに立ったことを見せる演出も良い。
脇の登場人物も個性的で、微笑ましい。特に融の友人、戸田忍(郭智博)が良かった。外見が派手そうなのと、序盤で妊娠騒動に関係していると匂わせていることから、いい加減なヤツかと思っていたが大間違い。
悩みを打ち明けない融にイラつきながらも、彼のそばを離れず貴子の対しても気を遣う。友人想いで気配りも出来る抜群に清々しい人物だった。彼の「お前(融)の口から(秘密)を聞きたかった」という言葉、本当によく分かります。
学園祭や体育祭など、普段の学校生活とはちょっと違う非日常。そんな行事ではなぜかクラスメートや友人との連帯感が強まる。その雰囲気が実に良く描かれていて、懐かしい感覚に浸ることが出来た。ああ、自分にもあんな頃があったなあ・・・。

難を言うと所々演出過多な部分があり、全編通して落ち着いた演出で乗り切ることが出来たらもっと良かったのではないかと思う。

追記
「歩行祭」という設定は「ファンタジーだなあ」などと思っていたらパンフレットに「原作者、恩田陸氏の母校の伝統行事」とあり、驚いた。



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イルマーレ 2006.9.23.(Sat.) 
■いつ、あなたに、会えますか。

[監]アレハンドロ・アグレスティ
[総]アーウィン・ストフほか
[製]ダグ・デイビソンほか
[脚]デビッド・オーバーン
[音]レイチェル・ポートマン
[出]キアヌ・リーブス サンドラ・ブロック
[制作データ] 2006米/ワーナー [上映時間] 98分
■「イルマーレ」公式サイト

【マクノスケ】
12年振りのキアヌとサンドラ・ブロックの共演という事で最初に記事を読んだ時から楽しみにしていました。マクタロウに「イルマーレっていう韓国映画(未見!)のリメイクで、時を隔てててポストで手紙をやり取りするラブストーリーらしいよー。」と言ったら「それってジャック・フィニイの「愛の手紙」(という短編小説)に似てるな!」と言ったのですが、やはりパンフレットにもその事が書いてありました。

ストーリーに触れるとねたバレのなるので書きませんが、サンドラ扮するケイトが実に現実的な女性として描かれている点や、シカゴという街の景色と登場人物を建築家に設定した事が、単なるファンタジーを越えた上質なラブストーリーになっていたんじゃないかと思います。

物語のサブストーリーとなるキアヌ扮するアレックスと父、サイモンの関係に父子ものに弱い私はまたまた涙!!!…と言いますか、父の事で心を痛めるアレックスの気持ちを思うケイトの心使いに泣けた!!

思った以上に素敵な映画で大満足で帰宅しましたが、唯一気になる点が…。
この映画、原題は「レイク・ハウス」(湖の家)なのですが、邦題はオリジナルと同じ「イルマーレ」。 オリジナルとタイトルを同じにすることで、リメイクだと分かりやすくする効果を狙ったかもしれないのですが「イルマーレ」の意味は「海辺」なので、それってどうなのーーーーっと思っていたのです。 ところが、映画を観てみたら…!!!! う〜〜〜〜〜〜〜っ!やられたー!!これじゃあ文句言えないなあ〜。 (…って、それでも多少、それは違うぞーって感じなんですけどねえ。)

あと蛇足ですが、ケイトの上司の女医アンナを演じたショーレ・アグダシュルー。 どこかで見たことあるぞーと思って調べたら「エミリーローズ」で裁判の証言台に立ったアダニ博士やら「X-MEN:ファイナル ディシジョン」ではキュアの研究をしているラオ博士も演じていました。「24」や「ER」にも出演しているみたいですね。



【マクタロウ】
時を超えた異性との文通。初めてこの作品(元になった韓国版は観ていません)のネタを聞いた時、すぐに思いついたのがジャック・フィニーの短編小説「愛の手紙」だ。
パンフレットにもそのことが書いてあるので、本を読んだ人ならば誰でもそう感じるのだろう。
だが、ジャック・フィニーの作品が「絶対に会うことが出来ない」時を隔てているのに対し、本作は2年という「会えるかもしれない」時間のズレ。この微妙な年月がラブストーリーとしてうまく機能している。
前半の早い段階でアレックス(キアヌ・リーヴス)らしき人物がケイト(サンドラ・ブロック)の目の前で交通事故に遭い死ぬ場面があり、更に会えるはずだった約束の日に彼が現れないなど、物語の終盤に向けて「ハッピーエンドになるのか?」という緊張感をうまく維持しています。
また、二人に別の(ケイトは同棲までしている)相手がいるのも良い。いくら気が合うと言っても、会うことも出来ない過去の人物との手紙だけの付き合いより、目の前の男になびくのは仕方のないこと。きれい事だけではないのだよという制作者のこだわりを感じる。
主演二人の気取らない感じと、脇で貫禄を見せるクリストファー・プラマー、ロケ地の美しさなどもあり上質のラブロマンスに仕上がっていた。
「時間物」と「ラブストーリー」は相性がよいということを再確認した。



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マイアミ・バイス 2006.9.17.(Sun.) 
■深く静かに潜入せよ。

[監][脚][製]マイケル・マン
[総]アンソニー・ヤーコビック
[製]ピーター・ジャン・ブルージ
[出]コリン・ファレル ジェイミー・フォックス コン・リー ナオミ・ハリス
[制作データ] 2006米/UIP [上映時間] 132分
■「マイアミ・バイス」公式サイト

【マクノスケ】
「RONIN」「コラテラル」など硬派で知られるマイケル・マン監督作品にして80年後半にヒットしたテレビシリーズ「マイアミ・バイス」の映画化。監督は当時、番組の製作総指揮を務めていたそう。

ドン・ジョンソンが演じたソニー刑事をコリン・ファレル、フィリップ・マイケル・トーマスが演じたタブス刑事をジェイミー・フォックスが演じ、映画ならではのスケールとアクションで132分という長尺を感じさせない完成度の高い作品になっていました。

思えば今年はこれと言った作品が少なく、不作に泣いていましたが、これは間違いなく今年のマイベスト5に入る作品です。更に自分的に良かったのは、お気に入りの俳優キアラン・ハインズがこれまた怪しいFBIの捜査官フジマで出ていた点!!「トータル・フィアーズ」のロシアの大統領役も良かったけど、最近では「ミュンヘン」のアヴナーの仲間カール役も印象に残る役でした!

潜入捜査の展開も面白かったのですが、注目はやっぱりソニーの恋の行方ですか!!この大人の男と女の関係がハードな中にも甘美な香りを漂わせておるんですなあ。おばさんとしちゃあ、ぜひ多くの女性にも観て貰って、ラスト胸キュンして戴きたいものです。また、この役のコン・リー姐さんのやるせない表情も堪らなかった!!アジア系の女性がヒロインに迎えられたという点でも注目です!!
映像もスタイリッシュなら音楽(唄入り)の入れ方も、これまたお洒落!自分としては「コラテラル」より人間関係が上手く描けていて好きですねー。



【マクタロウ】
マイケル・マン。
最近の映画監督の中でこの人ほどじっくりとアクション映画を撮る人もいないだろう。その腕前は本作でもしっかりと発揮され、ただのドンパチ映画とは一線を画す作品となっている。
麻薬密輸組織への潜入捜査をストーリーの軸として、許されない愛、パートナーや仲間への信頼、といった言葉にすると臭い(けど、それが良い)要素をスタイリッシュで緊張感のある映像で描き、最後の銃撃戦まで飽きることなく見せる。
「コラテラル」でも目を見張った映像美は健在。マイアミの夜、空撮でとらえた航空機、雲の美しさは素晴らしい。
最後に見せる銃撃戦も音響(銃撃音のリアルな感じ)が素晴らしく迫力もあり、ドラマとしての見せ場(ソニーの主体がばれる&リコの「復讐」)もしっかりと押さえていて嬉しい。
ストーリーの展開が途中から登場人物の心境中心になり、肝心の情報漏えい元が誰だったか(FBIから漏れたということだけしか提示されない)がはっきりしないのは残念。やはり、振ったネタはキッチリ解決して欲しい。
テレビシリーズの映画化ということで(キャストは違うとはいえ)「キャラ物(?)」になっている分、マイケル・マン色が薄いようにも感じたが、派手なシーンばかりを次々に映すアクション映画では満足できない人達向け、ある意味「オトナの映画」であろう。



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X-MEN:ファイナル ディシジョン 2006.9.09.(Sat.) 
■世界は、選択で創られ、 選択で滅ぶかもしれない。

[監]ブレット・ラトナー
[原][総][出]スタン・リー
[出]ヒュー・ジャックマン ハル・ベリー イアン・マッケラン ファムケ・ヤンセン パトリック・スチュワート
[制作データ] 2006米/FOX [上映時間] 105分
■「X-MEN:ファイナル ディシジョン」公式サイト

【マクノスケ】
2000年に「1」を観て、すっかりヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンにハマった私。 思えば、その時はチームとしての「X−MEN」はどうでも良かったのですが「2」の展開で、「目からビビビ」のサイクとジーンにも興味が沸き、「3」の展開に期待していたんですよね。 ひょっとしてウルヴァリンとジーンがくっついたりとかして… なーーーーんて思っていた私が甘かった!!!!!

いや、まあね。ウルヴァリン好きにはアクション満載!上半身ヌードのナイスバディにうっとり、ウルヴァリンのミュータントとしての特性も充分堪能出来て申し分ないエピソードだったとは思うんですけどねえ。

やはり、見終わったあと…あれでは、いかんせん…心が晴れない…。 長年続いているシリーズもののキャラをこういう形で終わりにして果たして正解だったのか疑問に思うところです。
まあパイロとアイスマン、ストームとカリストなどの対比や毛玉(ビースト)やジャガーノートの闘いは面白かったですが、エンジェルはあれだけ???(う〜〜ん。物足りないよー!)それに鍵を握るリーチくん!!もっと展開に関係ある役かと思っていましたが、そうでもなく…。(…って、演じるオリバー・ブライトくん!「ウルトラ・ヴァイオレット」でも同じような役=シックス!を演じているんですが、偶然?)

で、事前に「シックスセンス」でブルース・ウィリスの奥さん役を演じたオリヴィア・ウィリアムズが、原作ではプロフェッサーの元恋人で遺伝子に通じた天才学者・モイラ・マクタガード役で出演すると聞いていたので、いったいどこに?と思っていたら…やはり映画は最期まで観なくちゃいけませんねえ。あれだといかにも「4」があるかのような…?それからスタン・リー先生!冒頭に芝に水をまくおっちゃん役で、しっかり出てましたねー!! マグニートーのラストショットも衝撃的!あれで行くとローグももしや???



【マクタロウ】
もともとシリーズを監督してきたブライアン・シンガーは、アクションシーンの演出にケレン実が無くピリッとしなかったのだが、ブレット・ラトナーに替わったことにより、その辺りが面白くなっていればと思っていたのですが・・・。
3作中最も重い話(仲間の死を描くわけだし)のはずなのに、その重さは感じられない。特にサイクロプスの扱いは「これで終わり?」と言いたくなるほどだ。
少なくともドラマ部分にはある程度の「格調」とでも言う物を感じられたブライアン・シンガー監督に対して、ブレット・ラトナー監督では軽すぎたように感じる。
では、期待していたアクションシーンはどうだったかと言うと、予告では良さそうに感じたのだけど、本編を観るとそれほど格好良い場面もなく、やはりケレン実に欠ける作品に仕上がっていたのが残念。
これで最後と言いつつ、ラストには「続き」を思わせるシーンを入れているのはお約束か(エンドクレジット途中で帰ってしまった人達、残念でした)。
結局、多彩なキャラクターがそろっているX−MENなのに、ついにそのキャラクターを生かし切ることが出来なかったように思うし、X−MENのチームとしての面白さも描けていなかったのは残念だ(これはシリーズ3作通して言えることなのかもしれないが)。



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UDON 2006.9.02.(Sat.) 
■観ないと、マズイ!

[監]本広克行
[製]亀山千広ほか
[脚]戸田山雅司
[音]渡辺俊幸
[出]ユースケ・サンタマリア 小西真奈美 トータス松本 鈴木京香 小日向文世
[制作データ] 2006東宝 [上映時間] 139分
■「UDON」公式サイト

【マクノスケ】
「踊る大捜査線」「サトラレ」の本広克行監督が手がけた人間ドラマ。 …と言うか私にとっては「サマータイムマシン・ブルース」の本広克行監督なんですけれど…。(うふ!)

ユースケ・サンタマリア演じるうどん屋の息子がニューヨークでコメディスター目指して頑張るものの挫折。(ちゃんとニューヨークロケしてる!)多くの借金を抱え、故郷の香川へ戻り、タウン誌製作会社で仲間の小西真奈美、 片桐仁(ラーメンズ)、要潤 、友達のトータス松本(ウルフルズ) と共に作った「讃岐うどん」の特集が、日本中にうどんブームを巻き起こすきっかけとなるが…。

前半は主人公の奮闘記ですが、後半は父と子の葛藤と心の交流を描く涙なくしては見られない展開!父と子物に弱い私は、後半の壁の落書きのシーンで号泣!!毛嫌いしていても、息子の中にずっと父はいたわけで、最期に向かって盛り上がる展開にずっとウルウルでした。途中の特撮シーンは「キャシャーン」っぽくて面白かったです。やはりうどんはふたつで充分なんですね!
また「サマータイムマシン・ブルース」が大好きな人にはたまらないキャスティング!! あのずっこけ3人組が出てるんですよー。それも随所に!! 3人だけかと思ったら、田村くんと真木洋子とホセ(佐々木蔵之介)まで出てるしー!!(って、また「誰も聞いてない」し…。笑) 極めつけは曽我君こと永野宗典くんが、かなり大きい役で出ていて、今回もまたいじめられ役って言うのには大爆笑でした。(ずっこけ3人組が車に乗っているシーンには、年賀所のやり取りをしている映画ライター兼女優の横森文さんが出てたー!!)

音楽は渡辺俊幸さんで、映画の中でかかる曲は、主にクラシックからの引用でしたが、ラストの方のあの曲…どう聴いてもホーナーじゃありませんかーぁ!! 「ロケッティア」っぽかったけど、マクタロウ曰く「場面が場面だけにフィールド・オブ・ドリームスだろ!」…って。あー成る程!!もしかしてオマージュだったんですかねえ。



【マクタロウ】
うどんエンターテイメント!!
「うどん」をキーワードにして、考えつくこと、やりたいことを全てブチ込んだ作品である。
物語は1人の青年の成長記であるが、頑固な父との和解(父が幽霊となって現れるとは)、仕事の成功と挫折、恋もあり、笑いもあり、友情、泣かせるシーン、特撮(夢のシーンだが)まである。
讃岐うどんのシンプルさとは裏腹の豪華絢爛、盛りだくさんな内容なのだが、手堅くまとめて破綻はしていない。
主役のユースケが、ややオーバーな演技なのだが、その他の配役ははまっている。トータス松本は自然で良い感じだし、小西真奈美は可愛くて◎。鈴木京香はとびっきりのワンカット「おいしい」が最高!!
ロケ地香川の風景が気持ちよく「あんなところで食べるうどんはさぞ美味しいのだろうな」と思うことしきり。
ただ、ちょっと尺が長く、テンポの悪さを感じる場面もあるのは残念(本広監督の前作「サマータイムマシン・ブルース」と比べてしまうからなあ)。

以下、本作の出来とは全く関係ないこと。
「サマータイムマシン・ブルース」のずっこけ3人組が出演していると聞いていたので、観逃してはイカンと思っていたら、予想以上に出演シーンが多くてビックリ。曽我クン(永野宗典)も主人公の後輩(またもや、いじめられキャラ)という主要な役で出演。その他「サマータイムマシン・ブルース」の出演者が多数そのままの役で出ていて、ファンとしては嬉しい限り。

ラストは「フィールド・オブ・ドリームス」を思わせる展開で、なぜか音楽もジェームス・ホーナーそっくりなのはオマージュですか?



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