のほほん映画観賞備忘録・2007年5月〜8月
SF・アクション映画が大好きなマクノスケ&マクタロウの映画鑑賞備忘録です。 ふたりで「のほほ〜ん」と感想を語っています。
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■2007. 8月 |
トランスフォーマー / 怪談 / ルネッサンス / ファウンテン永遠につづく愛 /
■何度生まれ変わっても
僕は君を失う運命なのか。
監督: ダーレン・アロノフスキー
製作: エリック・ワトソン アーノン・ミルチャン イアイン・スミス
製作総指揮: ニック・ウェクスラー
原案: ダーレン・アロノフスキー アリ・ハンデル
脚本: ダーレン・アロノフスキー
撮影: マシュー・リバティーク
プロダクションデザイン: ジェームズ・チンランド
衣装デザイン: レネー・エイプリル
編集: ジェイ・ラビノウィッツ
音楽: クリント・マンセル
出演: ヒュー・ジャックマン / レイチェル・ワイズ / エレン・バースティン
上映時間 97分
製作国 アメリカ
公開情報 劇場公開(FOX)
初公開年月 2007/07/14
「ファウンテン 永遠につづく愛」公式サイト
【マクタロウ】
不治の病に冒された妻。彼女をむしばんでいく「死」を払いのけたい。
主人公トミー(ヒュー・ジャックマン)は、自身が医者であるが故に、そのことに挑戦し続ける。
実は、彼は死の恐怖におびえ、彼女の運命を受け入れたくないだけ。彼女と過ごす時間も削り研究に没頭するのも、「死」の恐怖から逃れたいだけ。そのことが妻を悲しませているとも知らずに。
主人公の妻イジーが書いた中世スペインを舞台とした小説部分と、1本の木と僧のような姿の主人公を包み込んだ透明な球体が宇宙空間を飛行するイメージが交互に現れ、混乱する観客もいるだろう。
それぞれのパートが時系列をバラバラにして(更に繰り返し)挿入されるという演出をとっているが、通して観れば本作は、トミーが「死」を受け入れるまでを描いた作品とわかる。
作品紹介などでは小説部分を「過去」、宇宙空間の部分を「未来」などと記述されているようだが、小説部分はあくまで小説の映像化であり、宇宙空間はトミーの心理描写であり「未来」を描いた物ではないと思う。
更に副題にある「永遠につづく愛」というのも作品の本質をねじ曲げているように感じる。
どちらかと言えば「永遠につづく命」であり、その「命」も不老不死のそれではなく、生物の連鎖、死んだ者が土に返り、そこを苗床として草木が生え・・・という概念。
主人公がいかにしてその概念に到達するか、が本作のストーリーであり、「生と死」こそがテーマであろう。
ラストではトミーがイジーの墓石のそばに木の実を植える。彼が彼女の死を受け入れた証拠である。
おそらく、彼はイジーの書いた小説の最終章を書き上げることだろう。
そのことで彼女の存在は生き続けるのだから。
【マクノスケ】
静岡シネギャラリーで「ファウンテン 永遠につづく愛」見てきました。こちらミニシアター系の映画館で、この日の上映は2回。1回目を見たのですが20人くらいでしたかねえ。
私はヒュー・ジャックマン見たさに見に行ったわけですけど…。
レイチェル・ワイズ演じるイジーが書き綴った物語「ファウンテン」に登場する中世マヤを舞台にしたスペインの騎士パート、新薬の研究をしている現代のトミーパート、そして彼の生死感を具象化した生命の木パートと、どれもヒュー様熱演で頑張っておりました。
「π」「レクイエム・フォー・ドリーム」(どちらも未見)の鬼才ダーレン・アロノフスキー監督、結構、アップ好きとみえてヒュー様好きには堪らなかったと思います。特にイジーを失い薬指にペンで指輪の代わりの入れ墨をしながら、大泣きするヒュー様の演技は「素」ではないかと思うほどリアル!改めてヒュー様の演技の巧さに脱帽した次第です。
ヒュー様演じるトミーは妻が重い病に犯され死んでいくという現実を受け入れられず、彼女の遺言にもなる小説の最終章も書き上げられず、精神世界への逃避を求めます。そこには永遠の命を約束する「生命の木」が空高くそびえ宇宙を彷徨っているのですが、映画は、このパートと彼女が書いた小説「ファウンテン」(根源)の物語がクロスし、スペインの騎士でもあり、イジーの夫でもあり、この生命の木を守る守護者でもある彼が、妻の死を受け入れ、ひとつの結論に到達するところでおしまいになります。
「永遠の命とは、肉体は滅ぶけれど、その肉体が土に帰り、やがて花を咲かせ、その種を鳥が運び、やがて新しい生命が生まれ、受け継がれていく」と言うこと。彼女のために必要だったことは、延命治療の研究ではなく、側にいてやることだったと気づくトミーの思いと映画のラスト、彼女の墓にそっと埋めてやる木の実がこの映画の全てを象徴していてましたね。
ところでこの感想をアップしようとキャッチコピーを調べたら「何度生まれ変わっても僕は君を失う運命なのか。」となっていて、やっぱりそういう売りなんだなあ…と改めて思った次第です。 パンフレットを買ってないのでわからないのですが、監督も「生まれ変わり」の話だって言っているのでしょうか?
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■一つの誘拐事件が、人類の未来を変える。
それは、触れてはいけない聖域だった。
[監・デザイン原案]クリスチャン・ヴォルクマン
[脚] アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール、 マチュー・デラポルト
[音]ニコラス・ドッド
[キャラクターデザイン]ジュリアン・ルノー
[声の出演]ダニエル・クレイグ 、 キャサリン・マコーマック 、 ジョナサン・プライス 、 イアン・ホルム 、 ロモーラ・ガライ
[制作データ] 2007ハピネット=トルネード・フィルム
[上映時間] 106分(フランス/イギリス/ルクセンブルグ合作)
「ルネッサンス」公式サイト
【マクタロウ】
フランス、イギリス、ルクセンブルグの合作アニメ。アニメと言っても最近の主流となりつつある(?)役者の動きをキャプチャーした3DCG作品だ。ただ、その画面はハイコントラストの白黒。そこがまず鮮烈である。うまくCGっぽさを消していて、まさにコミックスの画面がそのまま動いている感覚だ。
場面によっては実写作品を観ているようでもあり、不思議な気分も味わい面白かった。
話の内容はSFとしては良くある「不老不死」をめぐるものだが、ハードボイルドな雰囲気とツボを押さえた音楽で飽きずに観られた。
ラスト、被害者であるはずの女性が実は加害者であり、主人公が彼女を射殺するという展開は、最近のハリウッドでは出来ない芸当だと思う。
【マクノスケ】
本日が最終日…と言うことで、多少お疲れモード&ホントはリウマチのリハビリの日だったんですが、静岡まで「ルネッサンス」という映画を見に行ってきました。
この映画、ライブ・アクションを3Dアニメ化し、それをハイコントラスト・モノクロ映像に変換した「デジタル・モーション・グラフィック」なる手法が取られている新感覚のアニメ。…と言うか実際見てみると、一見メリハリの利いた白黒の実写だけど、よく見るとアニメだ…的な画面になっておりました。
ストーリーは近未来SFハードボイルド。
「ブレード・ランナー」なんかのパターンで多少手垢がついた感じですが、映像はそれこそよく頑張ったってな感じで、80年代のSF好きでアニメ好きな人は一見の価値あり。主人公カラスの声をダニエル・グレイグ。ムラー博士の声をイアン・ホルムが担当しています。音楽も堂々とした風格で作品を盛り上げていて良かったです。
作曲はニコラス・ドッド。これが映画音楽初担当だそうで、これまでは「スターゲート」や「007」シリーズの編曲と指揮を手掛けていたとか…。これからの活躍が楽しみです。
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■ずっと、ずっと、ずっと、あなただけ。
[監]中田秀夫
[原]三遊亭円朝
[プ]一瀬隆重
[脚]奥寺佐渡子
[撮]林淳一郎
[音]川井憲次
[出]尾上菊之助 黒木瞳 井上真央 麻生久美子 木村多江 瀬戸朝香
[制作データ] 2007松竹=ザナドゥー
[上映時間] 119分・PG-12
「怪談」公式サイト
【マクタロウ】
「リング」で心底震え上がらせてくれた中田監督。
新作が古典的怪談「真景累ケ淵」を映画化と聞いて「モダンホラー作家が描く古典」と言う面でも楽しみにしていた。
とはいっても、毎度不勉強な私は原作の落語を聞いたこともなく、映画化された作品も観たような、観ていないような・・・。
そんな状態ですから、単純に本作の感想を。
まずは、江戸の情緒といいますか、雰囲気が良いです。 羽生の里も累ケ淵もセットとロケがうまく繋がっているように思う。
多くの日本映画は、ライティングの悪さからくると思われるセットの安っぽさ、わざとらしさが目に付くのだが、本作ではそれが感じられなかった。
役者は皆良い雰囲気を出していて(黒木瞳は可愛らしすぎるけど)、物語にすんなりと入り込める。
当然、恐怖場面も随所にある(雨宿りする橋の下のシーンは怖かった)。
だが、どちらかと言えば、親の因果が子に報い・・・という展開を「恨み」一辺倒ではなく「愛」と「悲しみ」の物語に持って行っていくのが更に中田監督らしいところか。
「リング」の時は、「怖さ」という部分ではずば抜けていたけれども、全体としては荒っぽさが目立っていたが、時代物を真正面からじっくり描ける手腕をみせてくれたのは嬉しい。
【マクノスケ】
「リング」の中田秀夫監督の新作「怪談」を見に行って来ました。「リング」を見て、ラストの貞子さんの目が頭から離れず1週間寝られなかったという過去を持つ私。今でも私の「怖い映画ベスト1」です。
今回も三遊亭圓朝の名作怪談落語「真景累ケ淵」を元に男と女の情念を描くその名も「怪談」と言うことで、どれほど怖い映画なのかと思っていましたが、なんだか悲しかったですね。女の嫉妬や男のエゴというよりは、そもそもはお互いの親の因縁がふたりの運命を狂わせたというところが、物語を美しく切ないものにしていたと思います。
主演のふたりもそんな「愛」の物語にぴったりで素敵でした。特に尾上菊之助の匂い立つような色気は素晴らしかったですね。黒木瞳も年増の役なのに尾上菊之助と結ばれても全然違和感ないくらい若くて可愛かったです。実は私…同い年なんですけどね。(^^;)音楽は押井さんやドニーさんの映画でもお馴染み、中田作品のほとんどを手がける川井憲次さん!いつもの「燃えサウンド」炸裂で今回も絶好調でした!
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■未知なる侵略は
トランスフォーム<変身>から始まる!
[監][総]マイケル・ベイ
[総]スティーブン・スピルバーグほか
[出]シア・ラブーフ ミーガン・フォックス ジョン・ボイト
[制作データ] 2007米/UIP
[上映時間] 144分
「トランスフォーマー」公式サイト
【マクタロウ】
予告の映像が「怪獣映画好き」「巨大○○、都市破壊映画好き」としては気になる出来だったので、マイケル・ベイ監督作品だということを肝に銘じつつも期待をしていたのだが・・・所詮、マイケル・ベイはマイケル・ベイでしかなかった。
テンポが良いように見える(つもりの)カットの短さ、アクションシーンでも普通の会話のシーンでも被写体によりすぎで、居心地の悪い画面構成は健在だったのだ。
更に戦闘シーンの(迫力を出したつもりの)「手ブレ」演出が加わり、鑑賞後は目の疲労が激しかった。
映像的な凄さはハッタリではなく「ここまで出来るのか」という興奮をおぼえるものの、上記のような演出故、「もっとじっくり観せてくれ」というフラストレーションばかりが溜まる。
ストーリーの構成も、無駄な場面、ご都合主義的展開、不必要な登場人物が多い。もっと主人公サムとロボット達の友情に絞り込んだ方が良かったのではないだろうか。
せっかくの良い素材を下手な料理で台無しにされたような気分で、ただのつまらない映画を観たときよりも気分がスッキリとしない1日だった。
ミリタリー・ファンとしては、オープニングの「オスプレイ」、「A−10」「AC−130ガンシップ」の地上攻撃などが見所。
実際、このあたりのシーン(前半30分くらい)までは面白かったのだよ。
【マクノスケ】
ベイ監督とはウマが合わない私ですが、なぜか欠かすことなく見てたりします。「パールハーバー」の頃からすると短いカット割り、寄りすぎのカメラアングルも「アイランド」「トランスフォーマー」と見てきて、だいぶ慣れて来たかも…というのが第一印象でした。
巨大ロボットアニメ好きとしては、燃える部分もあって、ハリウッドの映像技術に感心もしたり、途中、ジョン・タートゥーロの怪演ぶりが嬉しかったり、期待の主役シャイア・ラブーフくんも新鮮で萌え萌えだったりしたのですが、もうちょっと味方ロボットと主人公サムの友情に焦点を当てても良かったんじゃないかなあと思います。
最後どうなるのかと思ったら、サムの持っていたキューブから「ビビビ」っと光線が出て悪ロボを壊しちゃったのには、そんな設定いつ出来たんじゃー?と首を傾げるばかりでしたが、そもそもキューブって、すんごいエネルギーが詰まってるなにかって事くらいしかわからないところが難点だったかも。最後もあのキューブがなくなってしまったので、味方ロボ軍団が帰れなくなってしまった事実が判明して「えぇー!!そういう事?」と思ってしまった私。エンドロールでは、あんなに大騒ぎになったのにも関わらず、あの事件がなかった事になっていましたが、パート2は、一体どういう設定で始まるのか気になります。あ、でもパート2、見ないかもしれないけど…。(笑)
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■2007. 7月 |
ダイ・ハード4.0 / しゃべれども しゃべれども / ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 / 河童のクゥと夏休み / レミーのおいしいレストラン /
■料理が苦手な見習いシェフ リングイニと、
パリ一番のシェフになりたいネズミのレミー──
その出会いは“おいしい”奇跡の始まり…。
[監][案][脚]ブラッド・バード
[総]ジョン・ラセターほか
[声]パットン・オズワルト ルー・ロマーノ イアン・ホルム ジャニーン・ガロファロー
[制作データ] 2007米/ブエナ ビスタ
[上映時間] 117分
「レミーのおいしいレストラン」公式サイト
【マクタロウ】
ピクサー作品のキャラクターデザインは人なつっこい。一目見た瞬間から彼らに好感を持ってしまうのだ。
だから作品に素直に入り込み、楽しめる。
とはいえ、お話やギャグは好みが分かれるところで、私は「モンスターズ・インク」「ファインディング・ニモ」「Mr.インクレデブル」には乗り切れなかったクチで、前作「カーズ」も「面白かったが、ちょっと長い」という感想だった。
さて本作は、類い希なる味覚を持ったネズミのレミーが、シェフとして成功するまでと言う奇想天外なお話。
この、厨房でもっとも嫌われるネズミがシェフに・・・という「相反する物の組み合わせ」が面白い。
そこに、リングイニという人間との友情、レストラン乗っ取り、レミーの家族愛などを織り交ぜて1級のエンターテイメントに作り上げているところは流石だ。お話の展開は王道だが、押さえるところをキッチリ押さえたお話は、観ていて心地がよいものなのだ。今回は、画もお話もギャグもバッチリはまりました。
劇場用3Dアニメの先駆者でありトップランナーのピクサー、技術面でも更に進化しているようだ。
レミー達が田舎の家から脱出するシーンの、雨の降る野原の空気感やパリの夜景などは実写顔負けだ。それでいて登場人物の動きを含めたデフォルメは、まさに漫画映画。このバランス感覚こそがピクサーの素晴らしさだ。
ラスト、画面がフェードアウトしていく中、レストランの看板名「RATATOUILLE」(料理の名前であり、ネズミのRATとも引っかけた原題は秀逸)の文字が最後まで残りその後に「fin」。クレジットの背景は2D風アニメで、なんともオシャレな終わり方でした。
【マクノスケ】
愛すべき「アイアン・ジャイアント」のブラッド・バード監督作品。
前回の「Mr.インクレディブル」にイマイチ、ノレなかっただけに、今回はどうかなーと思っていたら、もうお洒落だし、面白いし、技術的にもパーフェクトだし、演出は凝っているし、他の追随を許さないって感じでしたねえ。レミーが尊敬する今は亡き名シェフ、グストーの、言わば座右の銘「誰でも名シェフ」が、そんな意味だったとは、最後の方までわからず…。(笑)
レミーが人の言葉を理解し、料理を作ると言う設定こそが、単なる「ファンタジー」と言うことではなくて、固定観念に縛られる事なく、自由な心を持つべきだという、この作品のメッセージだと確信しました。
マクタロウとも話しましたが、もうピクサーは「実写」でも「アニメ」でもない新しいジャンルの「域」に到達していますね。予告で見たディズニー製」の新作がかなり「ヤバそう」に見えたのは私だけ?
ねたばれ:つけたし
ピクサーの長編作品も今作で8作目となりましたが、「トイ・ストーリー」「バグズ・ライフ」「カーズ」とダメ主人公の奮闘振りを描くパターンが大好きな私。本作もレミーとリングイニが頑張ってくれました。もっともレミーは才能はあるものの「ネズミ」というのが問題なんでして、これを物語の冒頭から「誰でも名シェフ」、「ねずみでも才能があればお料理出来るんだよー」と振っているところが、現実とファンタジーの融合とでも言いましょうか…上手いなあと思いましたね。リングイニの意識がなくてレミーが操っているシーン、サングラスを掛け、ダラ〜〜ンとしているのですが、何故か人をなめているように見えちゃうところに大爆笑!ラスト、レミーが経営することになったレストラン「RATATOUILLE」!あったら是非行って食べてみたい!DVDになったらエンドロールの2Dアニメもじっくり見直して見たいです!
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■人間の友達ができちまった。
[監][脚]原恵一
[原]木暮正夫
[音]若草恵
[歌]大山百合香
[美]中村隆
[声]冨澤風斗 横川貴大 植松夏希 田中直樹 西田尚美 なぎら健壱 ゴリ
[制作データ] 2007松竹
[上映時間] 138分
「河童のクゥと夏休み」公式サイト
【マクタロウ】
夜の田んぼ。蛍が飛び交うあぜ道に腰掛けた親子の河童。
彼らは、住み家である沼の埋め立てを中止してもらうために陳情に来ていた。
ほろ酔い加減で通りかかる役人と、庄屋と思われる男。彼らは突然現れた河童への恐怖と猜疑心にかられ、ついに役人は刀を抜き、父親河童を斬殺してしまう。
ファミリー向けアニメのつもりで観ていたら冒頭から緊張感が走る展開で驚く(物語の発端が江戸時代というのも意外だった)。
この出だしは、原監督の「この作品はここまでやる!!」という決意表明なのだ。ただの「少年少女向け感動アニメ」ではないぞと、こちらも気合いが入る。
物語の展開、状況設定は(夏休み、少年、淡い恋、出会いと別れ)という「王道」ともいえるものだが、根底には「いじめ」や「自然破壊」といったテーマが見えてくる。
だが、作品が重苦しくなることはない。そこには登場人物のキャラクターの良さがあり、彼らが織りなす微笑ましいエピソードの数々が散りばめられているからだ。
けなげで礼儀正しいクゥ、ちょっとお調子者だが芯のある少年、康一。彼らを見守る父母、飼い犬の「オッサン」、いじめにあっている同級生、菊池。主要登場人物すべてに作り手の愛情を感じる。
「河童」と暮らすことになった上原家の、非日常的な日常も丁寧に描かれていて説得力があり、好感をおぼえる。
康一には、やがていくつかの別れが訪れるのだが、後の展開を想像すれば「永遠の別れ」はなく、いつかまた・・・、と思えるのもラストも良い。
キャラクターデザインは主流とは言えない地味なものだが、作品の内容にははまっていた。
クレジットには多くのスタジオ名が記されているが(海外のスタジオも多いようだが)、それ故か、作画が安定しておらず、場面ごとに出来不出来があるのは残念だった。
【マクノスケ】
「クゥ」はテレビのCMで見て、絵が好みでなかったり、話もよくあるタイプの話で、見る気はなかったんです。
でも、私が「おたく道の師」と仰ぐ漫画家のしらい先生が、ブログで「是非見て!」と書いていて、もしかしたら…と見に行ったら、いやーやられましたーァ!!!もう大泣きです!!「クレヨンしんちゃん」の原恵一監督。やりますねえ。今まで観た事がなかったんですが、きっと、巷では噂になっている「しんちゃん映画」も面白いんだろうなあーと思ってみたり…。
とにかくクゥを拾った浩一一家4人のキャラが抜群に良かったですね。それに飼い犬「おっさん」!単なる犬かと思ってましたけど、「おっさん」と「クゥ」の関わりがこの映画に更に深みを与えていて、単なる「ジュブナイルもの」に終わっていないところが、素晴らしかった。もし現実に河童がウチへやって来たら…という設定も見事に料理しているし、少年の成長と淡い恋の行方、いじめ問題、環境問題も盛り込み、それでも、雄弁すぎる事なく、ゆったりとした時間の流れを感じさせる素敵な映画でした。あまりにも「クゥ」が可愛らしくてぬいぐるみ…買っちゃいました!!(笑)
ねたばれ:つけたし
この作品、「空高く昇る龍」「異世界へ来てしまった名前を忘れた河童」「緑深い自然描写」など宮崎作品と共通する「キーワード」がいくつか登場します。宮崎作品がどちらかというとファンタジー寄りなのに対し、原監督はこれらキーワードを使って、現実の中でのファンタジーの導入を試み、それが開花していたように思います。東京タワーで龍が空高く舞うシーンはCGも意欲的に取り入れ効果を出し、ラスト、クゥがコンビニから宅急便で宅配されるシーンに至っては、あまりにリアルな描写に舌を巻きました。最後…沖縄に辿り着き、川面にたたずむクゥのセリフ「この土地の神様、俺が生きていけるだけの魚を、この川で捕ることをお許し下せぇ」に大泣きしてしまった私です。クゥちゃん、健気すぎるー!
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■ハリーの本当の秘密、解禁。
[監]デビッド・イェーツ
[原]J・K・ローリング
[出]ダニエル・ラドクリフ エマ・ワトソン ルパート・グリント レイフ・ファインズ
[制作データ] 2007米/ワーナー
[上映時間] 138分
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」公式サイト
【マクタロウ】
1作目を観て自分の中では「終了」してしまっているシリーズなのだが、まあ、お付き合いでズルズルと・・・。
私は原作を読んでいないので、あくまでも映画版ハリー・ポッターの感想なのだが、シリーズどの作品もストーリーを進めるのに精一杯で、登場人物の心情などを描けていないように感じる。
特に主人公ハリーの魅力が、未だに私には伝わってこない。
本作では彼とチョウのファースト・キスまであるのだが、そこに至るまでの「ドキドキ」とか「そわそわ」が無いのだ。せっかく青春物の要素があるのに、それを生かし切れていないのは、もったいない。
そのチョウは、ハリー達「ダンブルドア軍団」の裏切り者となり、仲間から無視される。この裏切りは後に「自白剤」によるものだとわかるが、チョウに対する仲間達のフォローが描かれていないのは気になる。これで主人公の彼女というのは、扱いがひどすぎないか?
結局、あまり面白い作品とは言えないし、心に残るような場面もなかった。ただ、新たな登場人物ルーナが不思議チャンキャラでかわいかったかな。
【マクノスケ】
この作品、それ程入れ込んでないわたくし…。
でもここまで来たら最後まで…とマクタロウを説得して見に行きました。
映画は「4」まで、原作は「3」まで読んでいるんですが、本はまあまあ面白いものの、映画になるとどうしても「イマイチ感」が漂うのは、キャラクターを描くと言うより原作のエピソードをこなす方が優先されているせいなのかなあ?今回も半分以上は魔法省からやって来たアンブリッジ先生のいじめとそれに対抗するハリーたちの戦いを描く学園もの(←ちょっと大げさ?(笑))で、見どころは最後の15分。
でも、「おじさん好き」「イギリス人俳優好き」な私としては、ブラック(ゲイリー・オールドマン)、ルーピン先生(デヴィッド・シューリス)、スネイプ先生(アラン・リックマン)に燃え燃えで、特にブラックの巧みな杖使いにもうメロメロ〜〜〜。もうちょっと闘う時間が欲しかったーっ!!あそこだけ繰り返し何回も見ていたい…そんな衝動に駆られました。
だけどなあ。最後の因縁のふたりの戦いをみるにつけ、頭の中を「スターウォーズ」がよぎるのは私だけ?「1」を見た時からそんな事を言っている私ですけど、これってローリング女史が「スターウォーズ」世代で、影響受けていると見るべきなのか…どうなんでしょう?
ダンブルドア校長の戦いシーンは「スターウォーズ・エピソード2」のヨーダとドゥークー伯爵の対決シーンよりカッコ良かったです。それにしてもアンブリッジ先生を演じたイメルダ・スタウントン!私と4つ違いです…。4年後、私もあんな風に…????
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■みんな、
何とかしたいと思ってる
このままじゃ、だめだから
[監]平山秀幸
[原作]佐藤多佳子
[脚]奥寺佐渡子
[音]安川午朗
[出]国分太一、香里奈、森永悠希、松重豊、八千草薫、伊東四朗
[制作データ] 2007/アスミック・エース
[上映時間] 109分
「しゃべれども しゃべれども」公式サイト
【マクタロウ】
しみじみと味わい深く、笑いもちりばめられた楽しい映画でした。
ふとしたことから「話し方教室」を始めてしまう主人公の落語家、三つ葉(国分太一)。
集まった生徒は十河(香里奈)、村林(森永悠希)、湯河原(松重豊)の三人。
講師といっても三つ葉とて、ぱっとしない二つ目の噺家。そんな彼が生徒三人と関わることにより、大切な物に気づいていく。
三つ葉は、落語は好きだが、果たして人間が好きであったのだろうか?
彼の噺が客に受けないのは、ストーリーを語ることしかしていなかったからだろう。そんな彼が、訳ありの三人と関わり、ふりまわされ、好意を持っていくことにより、人間を好きになり、人間を語ることの大事さ、面白さ、素晴らしさに気がついたのではないだろうか。終盤、彼が言う「落語が好きになった」という言葉は、そういうことだろう。
生徒三人も、それぞれに自分らしさ、自分の居場所を見つけていく。
きっかけは「うまく話したい」という希望だったが、実は「話すこと」が重要なのではなく、コミュニケーションこそが必要だったのだ。
国分は、まともに演技しているのを観るのは初めてだったが、落語家としての成長をうまく演じていた。
彼に限らず、登場人物のキャラクターが立っているのが良い。特に脇をかためる伊東四朗(見事な落語家ぶり)、八千草薫(かわいいおばあさん)は見事。
結局、落語でも映画でも「人間が描かれていないと面白くない」ということだな。
【マクノスケ】
ひょんなことから「話し方教室」を始める事になった二つ目の落語家・今昔亭三つ葉役を「TOKIO」の国分太一くんが演じているのですが、穏やかでほのぼのした国分くんのキャラを生かした役なのかと思いきや、これが結構感情の起伏が激しい役で意外性があって良かったです。
私のお目当ては画像一番左の松重豊さん!!コワ面であがり症というプロ野球解説者の湯河原太一役をコミカルに時に哀愁を帯びてじっくりと演じてくれました。ねた的には一番おいしい役だったかもしれません。また、美人だけど無愛想な十河五月役の香里奈、関西弁でいじめられっこの少年、村林優役の森永悠希くんも大健闘。国分くんの祖母役の八千草薫、落語の師匠の伊東四朗の肩の力を抜いた演技にも魅せられました。
展開も面白かったですが、セリフが生き生きとしていて人物描写がとても素晴らしい作品でした。やはり映画の善し悪しはいかに面白くキャラを描けるかどうかが肝心と思わせる1本。
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■あの男、再起動。
[監]レン・ワイズマン
[総]アーノルド・リフキンほか
[音]マルコ・ベルトラミ
[出]ブルース・ウィリス ジャスティン・ロング ティモシー・オリファント マギーQ
[制作データ] 2007米/FOX
[上映時間] 129分
「ダイ・ハード4.0」公式サイト
【マクタロウ】
あまりに馬鹿馬鹿しい予告編ゆえに観るつもりはなかったのだが(そもそも「3」は観ていないし)、マクノスケの「観たい」という気持ちと、たまにはお袋を映画に連れて行くかという気分から鑑賞となった。
シリーズ1作目を観たときは、見事な脚本と「ここまでやるのか」というアクション場面にうならされたものだ。まさに、それ以降のアクション映画の方向性を変えた作品といえるだろう。
だがそれは、アクション大作といえば「派手な場面の連続で大味」という図式を(本来ならば、最も大事にすべき脚本の見事さを無視して)作ってしまったように思う。
結局「元祖」のシリーズ4作目である本作も、大味のアクション映画であった。
相棒となるハッカー青年とのコンビは面白いが、「死なない男」ジョン・マクレーンは、今回も次から次に危機を乗り越え、ついには最新鋭戦闘機と戦う場面に至って、もはや「やり過ぎ」という言葉しか出てこない。
それでも「こんな場面は、こんな映画でしか拝めないし、大画面と音響を楽しもう」と頭を切り換えれば「それもまた楽し」と言ったところだろう。
【マクノスケ】
小田原のTOHOシネマズで見てきました。マクタロウは予告を見て、行きたくないモードに入っていたのですが、なんとか説き伏せ、マクタロウ母と3人でTHXのド迫力サウンドを堪能。でも、やっぱり疲れましたァ…。きっと若い頃に見れば息つく暇もないアクションが凄かった…ということになるんでしょうが、こう切れ間がない押せ押せの展開は、年寄りにはちょっと堪えます。
まあでもねえ。ブルース・ウィリスも好きだし、共演者もなかなか良くてですね。役者を見るという点ではなかなかでした。特にマット役のジャスティン・ロングくん。「ギャラクシー・クエスト」のSFおたく役や「ハービー/機械じかけのキューピッド」の自動車整備士など、いつも野暮ったい役どころがナイスだったのですが、今回は更に活躍度アップ!おたく監督として有名なケヴィン・スミスも「まんま」の役で出ているところも興味深いっ!20世紀フォックスだからか(?)「スターウォーズ」の小ネタ入れまくりなのもファンには嬉しかったっす!
テロのお姉さんマイちゃんは「 M:i:III 」のトム君のメンバーのあの女スパイさんでしたね。
ところで私的にほかに燃えたのが音楽!
「3」までは故・マイケル・ケイメンだったのですが、今回「ヘルボーイ」のマルコ・ベルトラミが担当。いや〜〜これには燃えましたね。もうベルトラミ節全開!
「ブレイド2」とか「ターミネーター3」とかなんかシリーズ物の尻ぬぐいをしてるみたいな部分もありますけど、例によってそのワンパターンなところが堪らなく好きなんですよねえ。あとは…ケイト・ベッキンセイルの旦那レン・ワイズマン監督の腕の方は、普通でしたかねえ。それと、あとからマクタロウに聞いて知りましたが「ジョンソン」ねたがわかりませんでした。すっかり「1」のギャグを忘れちゃってる自分が情けないです。
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