のほほん映画観賞備忘録・2004年5月〜8月

SF・アクション映画が大好きなマクノスケ&マクタロウの映画鑑賞備忘録です。
ふたりで「のほほ〜ん」と感想を語っています。


■2004年 5月〜8月  基本的にネタばれしておりますので御注意を!
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  【2004】/1月〜4月/5月〜8月/9月〜12月

  【5月】CASSHERNスクール・オブ・ロックトロイクリムゾン・リバー2
          レディ・キラーズ
  【6月】シルミド/SILMIDO
  【7月】ブラザーフッドハリー・ポッターとアズカバンの囚人スチームボーイ
  【8月】LOVERS
LOVERS2004.8.29.(Sun.) 

■3つの[愛]が仕掛けてくる

監督・製作・原案・脚本/チャン・イーモウ「HERO」
原案・脚本・ノベライズ/リー・フェン(角川文庫)
製作・ビル・コン/ 原案・脚本/ワン・ビン
音楽/梅林茂「陰陽師」「居酒屋ゆうれい」
衣装/ワダエミ
出演/金城武 チャン・ツィイー アンディ・ラウ ソン・タンタン
2004 中国 ワーナー 120分 ■「LOVERS」公式サイト

【マクノスケ】
「HERO」のようなテーマ性がある作品とは違い、男女3人の三角関係を軸にアクションを盛り込んだストレートな作品でした。 いまひとつ物足りないのは、男女の生々しい描写と時間を超えた風景の表現方法が噛み合っていなかったからではないでしょうか? 第三者的に見るとアンディ・ラウが非常に可哀想なんですが、私もあの立場だったらああなっちゃうでしょう!(女って結局そういう生き物なのよ! (^_^;))
なんだかんだ言ってますが、「チャン・ツィイーがかわいいから全部許す!」というのが結論ですね!(笑)

ところでラストのクレジットの最初に「アニタ・ムイに捧げる」と出たので、気になってネットで調べてわかったんですが、 チャン・ツィイーの役は最初アニタ・ムイ(「奇蹟」「酔拳2」「レッドブロンクス」)にオファーが行ったようです。 ところが彼女が子宮頚ガンを患っていて出演が出来なかったのでチャン・ツィイーになったようなのですが、 もしアニタ・ムイが演じていたらもっと濃厚なLOVERSになったんじゃないかと想像が膨らみます。
残念ながら彼女は昨年の12月30日に40歳という若さで亡くなったそうです。共演作が多かったジャッキー・チェンや
おたがい歌も唄うということで仲が良かったアンディ・ラウも彼女の死を悼んだということです。


【マクタロウ】
「HERO」に続くチャン・イーモウ監督のアクション時代劇であります。
「HERO」同様、ケレン味たっぷりのアクション、色彩の美しさは健在です。
しかし、色彩にこだわるあまり無理が出てきたように感じました。
特に最後の決闘シーンは、雪があそこまで積もるってのはどうかと。「お前らいつまでやってんだ」とやや引きまして、シャオメイが起きあがってきた時は、ちと笑いそうになりましたよ(忘れ去られたように雪に埋もれてた!!)。
中盤、草原のアクションあたりまでは、かなり入れ込めていたのですが・・・。
ストーリーも、平たく言えば三角関係の、三者三様の愛の形を描いているわけで、(誰が騙されていたとかいうネタはあるものの)あまりにストレートで深みは感じられませんでした(どうしても「HERO」と比べてしまいます)。
これでチャン・ツィイーが出ていなかったら、満足度は遥かに低くなるところだなあ。



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スチームボーイ2004.7.24.(SAT.) 

■僕は、未来を、あきらめない。

監督・原案・脚本・大友克洋「AKIRA」「MEMORIES」
脚本・村井さだゆき「PERFECT BLUE」「千年女優」
音楽・スティーブ・ジャブロンスキー(ハンス・ジマー率いる「メディア・ベンチャーズ」の一員)
声の出演・鈴木杏 小西真奈美 中村嘉葎雄 津嘉山正種 児玉清 沢村一樹 斉藤暁 寺島進
2004 東宝 126分
■「スチームボーイ」公式サイト

【マクノスケ】
8年の歳月をかけた大友さんの執念(!)の劇場アニメ、それも冒険活劇…ということでわくわくドキドキしながら見に行ったんですが、 冷房にやられましてお腹はぎゅるぎゅる、頭はガンガン…そこへ来て画面の情報量の多さに圧倒されてしまい半分くらいまで集中出来ずに残念な思いをしました。
ひと言で言うと「絵」は凄いけど、お話の方は平凡だったって感じですね。タイトルデザインからして「お金かけてます〜ぅ」って感じで…。
主人公レイが追っ手に追われ家を飛び出すさりげないシーンが、 実は「こりゃあCGじゃなきゃ出来ないよ!」ってカットの連続になっていて「こんなところも(手法的に)凝った演出してるんだなあ」とつくづく感心。 そんな調子だから更にアクションシーンともなるとワンフレームに情報量が多すぎちゃって 「のほほん」で「時代遅れ(今のアニメのテンポについて行けない)」私は追いついて行くのに本当に苦労しました。
でも大友さん、こういうのやりたかったんだろうなあ。画面の隅から隅までとことん動かしてみたい…っていうのはアニメやる人の理想だもんねえ。
主人公はとにかく人を疑わない真直ぐな少年なんですけれど、これってパンフを見ると大友さんの少年象みたいなんですが、 もしかしたら手塚作品(特に「アトム」)の影響があったりするのかな〜と思ったりしました。
音楽はハリウッドの作曲家ジャブロンスキ−で日本のアニメにあれだけ鳴らした曲がマッチする時代がやって来たんだなあと感激もひとしお。 しかしあれだけ音が良かった(音響も)のに劇場の音が歪んでいたのにはガッカリ…あれじゃせっかく作り手が良い設計しても水の泡です…。
なんでももう続編が決定しているとかで、今度は「スチームガール」だなんて大友さんも言ってますが、 出来ればもうちょっと成長したレイで今度はあのスーツを使ってガンガン活躍するところを見て見たい気がします。
あぁ、それにしてもエンディングのスカーレットの髪の色が気になるなあ。


【マクタロウ】
制作中の映像を初めて観たのはNHK・BS2でやったアニメ特集番組だったなあ。 結婚する前だから、少なくとも4〜5年前。製作期間9年とあるから、もっと前かも しれない。
その時の映像では、メカが「3DCGでございます」といった感じで、「こんな画で はちょっと・・・」といった感想だった。
さて、ついに完成した作品を観ることができた訳だけど、まずは「大友先生お疲れさ までした」と言いたい。この作品は「大友克洋執念の超大作」です。

冒頭から作画レベルの高さがわかるのだが(大友キャラが「動いている」のを観ただ けで嬉しかった)、舞台がマンチェスターに移ると、その街並みやレイの家など、緻 密に描き込まれた背景に圧倒される。
そして始まる活劇。次々に登場する「蒸気機械」が楽しいのだが、これまた情報量が 多くて、とても一度では観きれない。
ラストまでこの調子で行くので、ちょっと疲れてしまうのも事実だけど、私は満足し た疲労感を味わった。
お話やテーマ(科学の進歩と兵器、戦争の関係)などは、無難な線で可もなく不可も なし。キャラクターではヒロイン、スカーレットに乗り切れず。最後にもう少し、け なげな所でも見せてくれたら嬉しかったのに(そういうキャラじゃないってのは分 かってます)。

観に行く前は「大友克洋が描く、少年を主人公にした冒険活劇って」・・・と不安な 部分もあったんだけど、予想以上に素直に作っていて、安心した(観ている途中では 「おかあさんは死んじゃうかな?」とか、大友さんなら「やりそう」なことを想像し てしまった)。 人によっては逆に、そこが物足りないと感じるのではないかな。
追記
「アキラ」は原作の漫画が圧倒的に凄くて、特に1巻のバイクシーンなど、正に漫画 の中で「動いている」いるのですよ。だからアニメになってそれが動いても「フ ツー」に感じて、まったく感動しなかった。
本作は逆に、映像から大友さんの漫画を想像したりして楽しかった部分もあります (特にちょっとしたギャグシーンはいかにも大友さん的で「このセリフは吹き出しに 手書き文字だな」とかね)。



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ハリー・ポッターとアズカバンの囚人2004.7.10.(SAT.) 

■僕らは、変わる。

原作・J・K・ローリング
製作・クリス・コロンバスほか
監督・アルフォンソ・キュアロン「天国の口、終りの楽園。」「大いなる遺産」
音楽・ジョン・ウィリアムズ「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」
「マイノリティ・リポート」
出演・ダニエル・ラドクリフ ルパート・グリント エマ・ワトソン
 ゲイリー・オールドマン デビッド・シューリス エマ・トンプソン
2004 米 ワーナー142分
■「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」公式サイト

【マクノスケ】
あまり乗り気はしなかったのですが、音楽がジョン先生という安易な気持ちで見に行ったところ、 これが案外おもしろかったです!!
原作を読んでいないので元がどうだったのかは不明ですが、 確かに映像は1、2作目とは全く異なるダークで、景色(ロケーション)が生かされた映像に仕上がっていました。
クイデッチのシーンも思い切りのいいカットの仕方でコンパクトにまとまっていたし、 役者(デビッド・シューリス/ゲーリー・オールドマン/エマ・トンプソン)も それぞれに個性が際立っていて楽しく見ることができました。
やっぱり監督交代は成功だったですね。
でも…相変わらず…原作を読んでいないと説明不足からなのか…筋書きがよくわからないと思う箇所もあり、 手放しには喜べませんが(それについてはいずれ映画備忘録に書きます。) 1、2作を見ていて今回行くのをためらっている方がいらっしゃったら、見ることをお薦めしたくなる内容でした。
以上は日記より転載しました。ここからはねたバレです。
タイトルにもなっている「アズカバンの囚人」ことゲーリー・オールドマンを塔の牢から助けるために
ハリーがはーたん(ハーマイオニー)と時間を遡るわけですが、
なぜ時間を遡らなければゲーリー・オールドマンを助けられなかったのかその理由がよくわからないんです。
あの時点で普通に階段を登って行って助けるわけにはいかなかったんでしょうか…。
あの塔がバックビーク(鳥の顔の馬)がいないと行けない場所だったのなら説明が欲しいところ。
外からしか行けないのであれば高いところとは言え、はーたんだけでも(ハリーのほうきは壊れているので)
ほうきで行けばいいのだし、何か理由があったのでしょうか?
それからハリーが自分を助けてくれた鹿のようなシルエット
(1作目を見た時にスターウォーズかと思うところもあったのですが、
今回はもののけ姫か…と思ってしまった)を「お父さん」と呼ぶ根拠です。
あれはどう見ても「人間」には見えないんですが、なぜ「鹿」を「お父さん」と呼ぶのか…
原作を読んでいる人だけがわかるのであれば、それは不親切なのではないでしょうか?


【マクタロウ】
前2作の出来から、正直「もうオコチャマムービーはいいよ」と、あまり観る気はな かったのですが、まあお付き合いで観てきました。

はっきり言いましょう。監督交代は正解でした!!
クリス・コロンバスが監督したダラダラと長い(本作も充分長いが・・)前2作とは 違い、メリハリのある演出とダークな雰囲気で最後まで飽きずに観ることができた。
私は原作を読んでないので、配役でも楽しめた。ゲーリー・オールドマンとデビット ・シューリスとくれば、最近は「悪役俳優」が定着しているから、「やっぱり・・」 と思わせての展開は「やられた」といったところ。

しかし、ストーリーの細かい点では今ひとつよく分からないことが多い(またもや 「原作を読んだ人にはわかりますよね」的な作りだ)上に、ツッコミ所も多い。
そしてこの手の作品では決してやってはいけないことをやってしまった。
それは「時間をさかのぼる」こと。
これが出来てしまうと、どんな事件が起きても(ハリーやハーマイオニーが死んでも !!)やり直せる、時間をさかのぼって救出できるのである(事実、今回ハリーは自 分で自分を助けたではないか)。
このことは「作品世界」を崩壊させる、最もやってはいけないことだったと思うのだ が。



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ブラザーフッド2004.7.3.(SAT.) 

■一緒に帰ろう…

企画・監督・脚本・カン・ジェギュ「シュリ」
音楽・イ・ドンジュン「シュリ」「リベラ・メ」「ロスト・メモリーズ」
日本上映版主題歌・BoA「We」
出演・チャン・ドンゴン ウォンビン イ・ウンジュ コン・ヒョンジン チェ・ミンシク キム・スロ
2004 韓国/UIP(ユニバーサル・インターナショナル)148分
■「ブラザー・フッド」公式サイト

【マクノスケ】
「シルミド」に続きまたまた韓国映画を見て来ました。
特に韓国モノに興味があるというわけではなく(「冬ソナ」は未見です)単純におもしろそうだったからです。
朝鮮戦争が舞台のこの映画。無理矢理入隊させられてしまった2人の兄弟の兄の方が、 心臓を患う弟を除隊させたい一心で手柄を立てて行く…というのが物語の導入部です。
テレビのワイドショーなどで兄を演じるチャン・ドンゴンがいいなと思っていたのですが、 映画を見ると弟役のウォンビンが可愛いくて、そのナイーブな演技に母性本能をくすぐられて「泣かせ」の部分で思わず涙ぐんでしまいました。
ただお話の方は、次から次へと不幸が起こって、ちょっとメロドラマ過ぎるように感じました。 ふたりの運命を翻弄し狂わせて行く戦争というものの恐ろしさは充分に伝わっては来るのですが…。
ちなみにタイトルの「フッド」というのは「hood(あざけり・不満の声)」という意味だったんですね。なるほど〜という感じです。
以上は日記より転載しました。
その後マクタロウとタイトルことで話したのですが「BROTHERHOOD」というのは「兄妹の間柄」とか「兄妹愛」という意味だということが判明。 「団体」「組み合い」「組織」という意味もあるそうです。



【マクタロウ】
幸せな家族が戦争によって引き裂かれ、過酷な運命をたどる展開は、ありがちではあ るけど「反戦」を訴える上では有効な手段でしょう。
とは言え、ちょっと「一昔前のNHK朝ドラマ」のように感じたのも事実。また、戦 闘シーンは様々な状況を用意してあるのに、最も重要な「兄弟のドラマ」が、やや一 本調子に感じられ残念だった。
さて、その戦闘シーンなのだが、銃撃戦で始まっても最後は必ず白兵戦の殴り合いで 終わっているのは、やはり戦っている相手が「同胞」故なのか。
うまく言葉で言えないが「近親憎悪」というものだろうか。肉親同士の争いがこじれ ると、ひじょうに醜いものになる、そんなことを考えてしまった(最後は兄弟がその 図式で戦うし)。
戦闘シーンそのものは迫力があり、お金も掛かっているのがよく分かるが、画的には 「まんまプライベート・ライアン」なのはどうかと思う。
確かに「プライベート・ライアン」の映像は素晴らしかったのだけれど、最近多くの 作品で同じ手法が使われすぎているのには閉口する。

以下、ミリタリー者としての楽しみ。
可動するシャーマンが多分1両、M3ハーフトラックが1両、M8装甲車(不可動 ?)1両、ソ連フィールドカー(ってタミヤのすり込み?)が1両出演しています。
航空機は、最後の戦闘にCGコルセアが出演。はっきり言って出来は悪いです。コル セア視点の画もありますが、空撮はしてないでしょう。臨場感ありません。

PS.兄の最期、「ワイルドバンチ」へのオマージュ?



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シルミド/SILMIDO2004.6.5.(SAT.) 

■33年間歴史の闇に封じ込められた衝撃の“真実”。

原作・ベク・ドンホ 監督・カン・ウソク「ガン&トークス」
脚本・キム・ヒジェ
音楽・チョ・ヨンスク「JSA」/ハン・ジェグオン「ガン&トークス」
出演・ソル・ギョング アン・ソンギ ホ・ジュノ チョン・ジェヨン イム・ウォンヒ
2003韓国/東映  135分
■「シルミド/SILMIDO」公式サイト

【マクノスケ】
韓国で実際に起こった事件をもとに描かれた作品で、韓国でも大ヒット。
1971年に起きた実尾島(シルミド)事件をもとに、 金日成(キム・イルスン)暗殺を命じられた特殊部隊の誕生からその結末までを描いた問題作。
とにかくここ最近の作品の中では心の底から泣けた1本でした。
もともとは殺人などを起こした囚人たちを暗殺のために特殊部隊の精鋭として育てて行く過程も 過酷な訓練や隊員たちの交流などのエピソードを丁寧に重ねて描かれていて、なかなか見せるのですが、 物語中盤以降の彼らが辿った運命を思うとあまりにも惨くて国家権力の非道さを感じずにはいられませんでした。
特にチョ2曹の出張のシーンはあとからあとから涙が出て来てつらかったですね。
本当に朝鮮半島の問題は深刻で根が深いとつくづく考えさせられました。
キャラクターとしてはチョン・ジェヨン演じるハン・サンビルが良かったですね。 若い頃の小林昭二(仮面ライダーのおやっさん!)に似ていると思いました。
音楽はチョ・ヨンスクという人で初見だったんですが、 おもいっきりハンス・ジマータッチなのには苦笑してしまいました。まあ画面に合っていたのでいいのですが。


【マクタロウ】
死刑囚、犯罪者を集めて編成された特殊部隊。その目的は「キム・イルソンの首を取 ること」!!
しかし時代の流れ、国家の方針転換により、最強の特殊部隊は無用に、それどころか 厄介者になってしまう。
作品はこの「特殊部隊にさせられた」男達の憤り、悲しみを見事に描き出している。
とにかく男達の「面構え」がいいのだ。私が韓国人俳優になじみがないというのもあ るが、はたして今の日本人(若手)俳優でこのような「面構え」の「男」をそろえる ことが出来るだろうか?
演出は奇をてらわず、序盤の訓練シーンで徐々にキャラクターを際だたせて、感情移 入させていく。故に後半、教官、訓練兵双方が生き残るために殺し合わねばならなく なる展開で、思わず泣けてきてしまった。
帰るところもなく、戸籍さえ抹消された男達が、自分の名前を血でしたためる。
「俺達は存在しているし、名前もある」
そんな心の叫びと男達の絆に、久しぶりに熱くなれた作品でした。

ここからはちょっと愚痴になってしまう。
「シュリ」から始まった韓国映画の波は(私は「シュリ」「二重スパイ」と今回の 「シルミド」しか観ていないが)、悔しいかな日本映画以上に魅力的である。
エンターテインメント性にあふれていながら、しっかりと問題定義をする骨太な作品 は、アメリカ映画に多くあったが、今や韓国の方が一枚上手に感じる。
それに比べると最近の日本映画は、お手軽な「お涙ちょうだい作品」全盛で、情けな くなる。あまりに企画が安易すぎると感じるのは私だけであろうか?



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レディ・キラーズ2004.5.30.(SUN.) 

■主演トム・ハンクス×脚本・監督コーエン兄弟が仕掛ける、
映画という名の《完全犯罪》

製作・監督・脚本・ジョエル・コーエン イーサン・コーエン
音楽・カーター・バウエル「アラモ」「ディボース・ショウ」「バーバー」
出演・トム・ハンクス イルマ・P・ホール マーロン・ウェイアンズ J・K・シモンズ
2004米/ブエナ・ビスタ 104分
■「レディ・キラーズ」公式サイト

【マクノスケ】
今回見て思ったんですが、私ってコーエン兄弟のシニカルな笑いが苦手なのかも?
「ファーゴ」はまだあの女警官の主人公と旦那さんの関係にじんわり来るところもあったのですが、 今回は出演者が誰とも心を通わせてないまま終わってしまって、場面場面のコミカルなシーンに苦笑しただけ…。
トム・ハンクスの演技はツボを押さえていて上手いなあと思ったのですが、 見ながらそう思った時点でこの映画は私向きではなかったと言う事になるのかもしれません。
カジノ強盗の5人はそれぞれの個性のおもしろさで見せても、 強盗をやる為に潜入した黒人のおばさんとは誰かしら心を通わせて欲しかったし影響を受けて欲しかったんですよね。
ストーリーとキャラクターの個性はたしかに笑えるしひねってあるとは思うんですが、 それだけじゃ物足りなかったかなあ。
ところでゴスペルの指揮者のおじさんってひょっとしてエディ・マーフィー??(…似てたなあ〜。)
どうも2日も続けていまひとつでちょっと欲求不満の週末でした。

【マクタロウ】
どうも私はこの作品のようなシニカルコメディは、肌に合わないようだ。
計画は一流(の様)だが、腕は三流の寄せ集め泥棒達(そもそもプロは1人もいな い)は、信頼関係など無く、犯行の目撃者である下宿のおばさんを殺そうと決めたと きから、天罰のように仲間割れや不慮の事故であっという間に全員死亡。死体はすべ てごみの島へ・・・。
人物描写はどこか突き放していて、「コーエン兄弟って人間嫌いか?」などと思って しまった。
う〜ん、きっとこういう作品(あえて言ってしまえば「ツー好み風」)が好きな人に は、すごく面白いんでしょうね。私はもっと熱くなれる下世話な作品の方がいいなあ (と、ちょっとシニカルに言ってみたり)。



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クリムゾン・リバー2/黙示録の天使たち2004.5.29.(SAT.) 

■最後の審判の日、目覚めるのは神か悪魔か

監督・オリビエ・ダアン
脚本・リュック・べッソン「ジャンヌ・ダルク」「フィフス・エレメント」
音楽・コリン・タウンズ「スペース・トラッカー」
出演・ジャン・レノ ブノワ・マジメル カミーユ・ナッタ クリストファー・リー
2004仏/アスミック・エース=ギャガ=ヒューマックス 100分
■「クリムゾン・リバー2/黙示録の天使たち」公式サイト

【マクノスケ】
前作「クリムゾンリバー」とは主人公のニーマンス警視しかつながりがないのに 「クリムゾンリバー2」とはなんで〜とついツッコミたくなる本作。
すっかり地名だとばかり思っていましたが、調べてみたら「深紅の川=血の川」のことだったことが判明。 だったら今回も「クリムゾンリバー」でいいってことなのかなあ?
おもいきってインディみたいに2作目からは「御存知!ニーマンス警視の冒険!」とかにした方がよかったのでは? 聞くところに寄ると4作目まで続編が決まっているそうなんですが、 次回はもう少しストーリーを練った方がいいんじゃないでしょうか。
「12使徒」「キリストの再来」「壁に埋め込まれた死体」「第七の封印」など… 思わせぶりで仰々しい音楽や長〜いアクションシーンなどを盛り込んでいる割にはオチがなさ過ぎでちょっとトホホ状態。
結局我らが(クリストファー)リーさまの探していたものはどういうものだったのか… 何のためにあのようなスタイルの殺人が起こったのかも謎だったですねえ…。
本当に期待していただけに残念でした。
相棒のレダ役のブノワ・マジメルくんはなかなかハンサムな頑張りやで好感が持てたんですが…。


【マクタロウ】
なんでも原作者の仕事が遅くて、リュック・ベッソンがオリジナルの脚本を書いたと か。これが凶と出たのだな(前作に出演したヴァンサン・カッセルは脚本を読んで出 演をとりやめたとか。正解)。
「12人の使徒」とか「ヨハネの黙示録」「第七の封印」だとか、キリスト教ネタは 好きなんで、ちょっと期待していたのだけど、見事に外された。
「振り」はあっても「中身」がない(私が感じているところの)「エヴァンゲリオ ン」みたいなもの。
宗教ネタもそうだが「マジノライン」などというミリタリー者にはちょっと嬉しいネ タも出てくるのに、雰囲気作りの道具にしかなっていないのがつまらない。
画的にも、おどろおどろしさは出ているが、お話同様ツッコミ所満載であった。た だ、音響は良く(うるさすぎる部分もあるが)銃撃戦などは迫力があった。
もっと脚本を練り、じっくり描けばかなり面白い作品になったであろうに残念であ る。



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ビッグ・フィッシュ2004.5.22.(SAT.) 

■人生なんてまるでお伽話さ。

原作・ダニエル・ウォレス「ビッグ・フィッシュ/父と息子のものがたり」
監督・ティム・バートン「バットマン」「シザーハンズ」
脚本・ジョン・オーガスト「チャーリーズ・エンジェル」
音楽・ダニー・エルフマン「バットマン」「シザーハンズ」
出演・ユアン・マクレガー アルバート・フィニー ビリー・クラダップ
ジェシカ・ラング ヘレナ・ボナム・カーター
2003米 ソニー/125分
■「ビッグ・フィッシュ」公式サイト

【マクノスケ】
とても本当とは思えないファンタジーの世界そのものの父親の思い出話を いやという程聞かされて育ったウィルは父親とは断絶状態。 そんな父の死期を知り身籠の妻と帰省したウィルを待っていたものは…。

…というわけで、その父親アルバート・フィニーと妻のジェシカ・ラングの若き日を演じているのが ユアン・マクレガーとアリソン・ローマン(「マッチ・スティックメン」で14歳のケイジくんの娘を演じていた彼女… ホントは24歳だった!)なんですが、実に生き生きと楽し気に演じているのがいいですねえ。特にユアンの笑顔がキュートで素敵! 見ているだけで元気を貰えそうな感じです。

バートン監督の作風である異形への思い入れはたっぷりなんですが、 以前と違って感じるのは「やさしさ」が「毒気」に勝っちゃってる点。 やっぱり子供が出来ると人はやさしくなるんでしょうか?
(奥さんはこの作品でも怪演している(!)ヘレナ・ボナム・カーター)
ラストはだいたい想像できても、やっぱり泣いてしまった私は「父子物」にホントに弱い泣き虫おばさん…なんですな。


【マクタロウ】
前作「猿の惑星」でおもいっきり失望させられたティム・バートン監督の新作。
「スリーピー・ホロウ」あたりまで感じられた「毒気」や「怪しさ」は薄められ、ま ともな(!!)ラブ・ストーリーと父と子のお話になっていたのには少々驚いた。 ティム・バートンも大人になってしまったのね。
主演のユアン・マクレガーの好感度や、スティーブ・ブシェミ、ダニー・デビートな ど脇役の良さもあり、作品そのものは悪くないです。
それどころか、奇想天外なお話やファンタジックな映像でワクワクさせ、笑わせどこ ろも押さえてあり、父を中心とした家族のエピソードでは泣かせも入り、並以上の作 品でしょう。
だけど・・・ティム・バートン監督作品としては食い足りない。いけないことなのか もしれませんが、どうしてもそういったフィルターをかけてしまう自分がいます。



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トロイ2004.5.15.(SAT.) 

■それは史上最大の「愛」のための戦い

製作・ウォルフガング・ペーターゼン
監督・ウォルフガング・ペーターゼン「Uボート」「パーフェクトストーム」
脚本・デビッド・ベニオフ
音楽・ジェームズ・ホーナー「タイタニック」「パーフェクトストーム」
出演・ブラッド・ピット エリック・バナ オーランド・ブルーム ディアーヌ・クルージェ
2004米 ワーナー/163分
■「トロイ」公式サイト

【マクノスケ】
ブラピがギリシャ軍のアキレス(あのアキレスのかかとの人です)を演じ、 オーランド・ブルーム&エリック・バナ兄弟率いるトロイ王国と戦うわけですが、 世相を繁栄し過ぎていて史劇としての壮大さに欠けるとでも言いましょうか… ちょっと説教臭くなっているのが残念でした。

映画はギリシャ軍とトロイ軍を中立な立場で描いているのですが、 それがかえってマイナス。ブラピにもオーランド&バナ兄弟にもほどほどに肩入れして見てしまうので、 主人公であるブラピの良さが引き立たないんですよね。
私としてはもっとブラピを中心に彼の心の葛藤と人間としての成長を描いて欲しかったと思いました。

またアクションも1対1の対決はなかなかなんですが、群集シーンがいまひとつ…。
ただ女性にはそれぞれの男優のすばらしい筋肉美を拝めるというお楽しみがあるのでウケはいいのではないかと思います。
(ブラピの身体に惚れ惚れ!)
あと…ショーン・ビーンが思った以上に出番があって、ボロミアファンとしては、ちょっと萌えました。(笑)
オーランドの活躍と言い「指輪」ファン萌えの1作になることは間違いないでしょう…
そういう見方って邪道なのはわかっているんですけどね…。


【マクタロウ】
とりあえず2時間30分あまりの長丁場、飽きることなく観ることができましたが、 「良かったか」というと、そうとも言えない出来です。
主人公は一応アキレスなのですが、敵であるトロイ側の人物も、ギリシャ側と同じ配 分で描かれているため、どっちつかず、中途半端な印象を受けました。
制作者の意図としてはこの戦争を両側から描くことにより、より(戦争の)悲劇性を 出したかったのだと思いますが、成功しているとは言えないと思います。
この制作者の意図はセリフにも顕著に現れていて、何度も「残された妻や子供・・ ・」とか「殺した兵士にも家族が・・・」といった言葉が出てきます。
これは明らかに9.11以降のアメリカを映し出すセリフでしょう。それ自体は悪い ことではないのですが、何度も直接的なセリフを登場人物に言わせるのはスマートと は言えず、ちょっとウンザリしてしまいました。

映像としては、デジタル技術のおかげで壮大なスペクタクルを楽しむことが出来ま す。
ブラッド・ピットの殺陣は華麗で、かっこよかったです。特にアキレスとヘクトルの 一騎打ちは一番の見所でしょう。



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スクール・オブ・ロック2004.5.5.(WED.) 

■日本の教育をつぶせ!全米No.1教師にまかせろ!!

監督・リチャード・リンクレイター
脚本・マイク・ホワイト
音楽・クレイグ・ウェドレン
出演・ジャック・ブラック ジョーン・キューザック マイク・ホワイト
2004米 UIP/110分
■「スクール・オブ・ロック」公式サイト

【マクノスケ】
ジャック・ブラックの映画は初体験だったんですが、これがおもしろかった〜!!
ロック好きの自分勝手で嫌味な男が主人公かあ〜と思っていたら大間違い。
お金の為とは言え、子供達を欺いて偽教師として生徒たちにバンド道を強要していたのは犯罪なんですが、 彼の子供たちへの態度が分け隔てなく平等で、そこに大人の逃げがないというか計算高さがないところが見ていて好印象でした。
彼のロック道には大人も子供もなく真のロック魂(心の叫び)を持っている者は、彼にとってはみな同志なんでしょうね。
優等生でいなくちゃならない故に型にはめられ窮屈な毎日を送っていた生徒たちや校長先生(ジョーン・キューザック好演!)が、 むちゃくちゃだけど1本道が通っている落ちこぼれ先生から「熱きロック魂」を教えられて生きるパワーを取り戻して行く大爆笑だけど ホロっと泣ける1本でした。
ピーター・ジャクソン監督の「キングコング」に出演するというジャック・ブラック…今から楽しみですね。


【マクタロウ】
予定調和と言わば言え!!変にカッコつけて外すより、素直に気持ちよくなれるこの 作品。最近こういった安定路線が恋しくなること、多いです。
成り行きから私立小学校の臨時教師となったダメダメ主人公が、ロックを通して生徒 と触れ合うことで立ち直っていく。生徒達も規則や親に縛られた生活から、本当の自 分を取り戻していく。ああ素晴らしきワンパターン!!
最後のバンド・バトルでは優勝を逃すけど「実」を取るあたりはニクイ演出。
ジャック・ブラック演じる主人公のロック野郎から、生徒一人一人までキャラクター の描き方、エピソードのちりばめ方と、どれをとってもそつがない。たっぷり笑わせ てちょっぴり泣かせて、劇場を出るときは気分爽快。大切です、こういう作品。
最近の音楽シーンは(って語れるほどわかっちゃいませんが)、ラップ全盛。はっき り言ってつまらない!!そんなあなたにお勧めの一本。
使われている音楽は80年代ロックが中心だけど「オレはロックが好きなんだ!!」 てことを再認識!!



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CASSHERN2004.5.1.(SAT.) 

■この世に生まれた、愛する人々に捧ぐ。

監督・脚本・撮影・編集・紀里谷和明
脚本・菅正太郎 佐藤大
バトルシーンコンテ・樋口真嗣「ガメラ1〜3特技監督」
音楽・鷺巣詩郎「新世紀エヴァンゲリオン」「アベノ橋魔法☆商店街」
出演・伊勢谷友介 麻生久美子 唐沢寿明 寺尾聰 樋口可南子 小日向文世 宮迫博之 佐田真由美 要潤 西島秀俊 及川光博 寺島進
2004松竹/141分
■「CASSHERN」公式サイト

【マクノスケ】
納谷さんのナレーション、フレンダー、スワン、城…とそれなりに原作にオマージュを捧げているものの全くの別物と考えた方が良さそうです。
(ちょっと違うかもしれませんが、「カリブの海賊」のような感じかなあ。キーワードはそれなりに繁栄されていると言うか…。)
アニメの「人間対ロボット」のような単純な図式かと思っていたら宇宙の真理にまで迫っているところに思った以上に奥行きを感じました。 ささいな憎しみや欲がやがて戦争にまで発展してしまうという人の世の悲しさと愚かさ…そしてこの世界に存在する無情な神の存在が、 世紀末を予感させますが、それでもまだ希望はあるという監督のメッセージが熱かったですね。
演出では、もう少し見せて欲しい部分もあり、わかっていはいるものの原作にもう少し近い部分があってもいいのでは…と思う部分あり… ちょっと複雑な思いの1本でした。
出演陣では、敵役の新造人間の宮迫さんと要潤がかなりイケていたと思います!


【マクタロウ】
「人間とは?」
この問いについて答えを探る映画は、今年3本目である。しかも全て邦画。3本とも 違った描き方、答えの提示があり、面白い。

突如天空より飛来した巨大な稲妻状の物体が、なかなか実験が成功しない「新造細 胞」を活性化し、次々に「新造人間」を作り出す。
しかし彼らは「人間」ではないため、生まれた途端に排除される運命をたどる(「新 造人間」についてはどんでん返し有り)。そこから始まる「憎しみの連鎖」。そして 殺戮の後で気づく「人間の業」。人は殺し合いを止めることができないのか?
その希望は新たな稲妻がたどり着いた遙か彼方の惑星に託される。
そうなのだ。稲妻は監督の平和への希望。届いた先は観客の心。それを生かすも殺す も、その人の心の有り様。本来、希望だったはずのものも、憎しみや欲望がそれを歪 めてしまうこともあるのだ。

紀里谷監督の想いが叩き付けられた力作だと思います。それは映像面についても然 り。
ほとんどのシーンをブルーバックで撮影し、デジタルによる合成で仕上げられている と思うのだけれど、世界観(変に「リアルさ」を追求せず「作り物」であることを強 調している)が徹底しているので、私としては面白く観られました。
アクションシーンの演出には、ちょっともどかしさも感じましたが、しっかりアニメ 版を彷彿させる動き、映像もあり、ツボは押さえてあったのではと思う(もう少し キャシャーンの活躍を観たかったが)。
中だるみもありましたが、なかなかどうして立派なデビュー作だと思います。とりあ えず紀里谷監督の次回作に期待。



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これ以前の作品は2003年上半期、下半期をご覧下さい。

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