1978年4月2日から1979年8月26日まで 全73話が放映されたテレビアニメ「SF西遊記スタージンガー」のファンクラブです。        



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スタジン小説 その40





「PARTY」   作・にいな

「PARTY」<2/4> 翌日のコクピット。 操縦席にクーゴ、その隣にオーロラ姫、クーゴの後ろにハッカ、オーロラ姫の 後ろにジョーゴという並びでシートに座っていた。 「ふわ〜あ〜」 「ハッカさん、ずいぶん眠そうですね。大丈夫ですか?」 何度もあくびをするハッカに、オーロラ姫が心配そうに訊く。 「あ、ご、ごめんね、姫。大丈夫。気合を入れれば。なあ、クーゴ!」 と言ってクーゴの背中を叩く。 「俺をどつくなよ。気合を入れるなら、自分を叩け。ったくもう」 そういうクーゴも実は眠い。オーロラ姫の後ろで、ジョーゴもこっそりと目を 擦っている。 睡眠時間を削って、ギューマ・ラセツ軍団対策や、バースデーパーティの内容 を考えていたのだ。 「うふふ」 いつものクーゴとハッカのじゃれ合いに、オーロラ姫が可愛く微笑む。 素敵な計画を彼らが立てていると知らずに。 「クィーンコスモス号が、ギューマ軍団の第12前線基地に接近しています」 「よし。先に基地から攻撃するように伝えろ。この戦闘母艦もすぐに到着する。 コスモス号を挟み撃ちだ。スピードを上げろ!」 部下からの報告を受け、ベラミスが指示を出すと、ラセツ軍団の戦闘母艦の スピードが上がった。 今日は正攻法で行くらしい。 「今日こそ、オーロラ姫を捕える…!」 ベラミスは知らず知らずのうちに、強く拳を握り締めていた。 クィーンコスモス号に警報ブザーが響き渡る。 「あれは…!」 前方からスペースマシンの編隊がやって来る。コンピューターが反応して、 何か回答が出た。ジョーゴが紙を手に取る。 「この先にギューマ軍団の基地があったようだ。そこからあのスペースマシンが…」 その可能性は分かっていたが、オーロラ姫の手前、初めて知ったように伝える。 「仕方ねえ。追っ払うとするか。行くぞ、ハッカ!」 「了解!」 クーゴとハッカが勢い良くコクピットを出る。 「姫、迂回して進むように、フルオート操縦にしました。みんなすぐに戻って 来ますから、心配しないで下さいね。では!」 ジョーゴも素早くコクピットを出た。 それぞれの格納庫へと別れる所で、先に出たクーゴとハッカが待っていた。 「どうした、クーゴ、ハッカ」 「俺は大丈夫なんだが、ジョーゴ、睡眠不足は平気か?」 「これくらいなら、大丈夫だ、戦える。やたらとあくびをしてたハッカはどうなんだ」 「俺も平気さあ。それにしても、やっぱり基地があったんだな。それに、遭遇するのは、 今日の夜あたりじゃなかったのかよお。早いぜ」 「コスモス号をキャッチされたら、そりゃ、奴等はすぐに出て来るだろう。 ハッカ、嫌な事は早めに済ませた方がいいんだよ」 「そうだな。じゃあ、ジョーゴ、頼んだぜ」 「無理はするなよ、ジョーゴ」 クーゴとハッカがジョーゴを気遣う。 「そっちこそ、奴等に手間取るなよ。戦闘は早く済ませて、コスモス号で逃げ る事も考えろ」 「分かってるって」 「今回は早め早めの対応ってわけね」 「そういうことだ。それじゃ、行こうぜ!」 三人は互いに手を上げ、格納庫へ走って行った。 「みなさん、気をつけて…」 スタークロー、スターブード、スターカッパーが発進して行くのを、オーロラ 姫は手を合わせて、祈るように見送った。 戦闘を避けフルオート操縦で進むコスモス号に、またしても警報ブザーが響く。 オーロラ姫が後方の画面を拡大すると、ラセツ軍団の戦闘母艦が近付いて来ていた。 「クーゴさん、ハッカさん、ジョーゴさん!」 思っていたよりギューマ軍団のスペースマシンとの戦闘に、てこずっていた クーゴとハッカにオーロラ姫から通信が入る。 「なに?戦闘母艦が?」 「どうするクーゴ」 「ハッカ、ここは任せたぜ!」 言うが早いか、クーゴはクローベルトで戦闘母艦に向かった。 「今日の展開は早いなあ」 なんてったって、オーロラ姫の誕生日が迫っている。姫に喜んでもらうために、 みんな俄然燃えていて、行動が早い。 「ハッカさん、ジョーゴさんはどうしたのですか?ずっと姿が見えないようですが…」 オーロラ姫が心細く、それでも母艦が迫る自分の事より、みんなを思う心配 そうな声で訊ねる。 「あ、ジョーゴはね、近くに隠れる事が出来る惑星がないか、偵察に行ったんだよ」 前線基地に行ったとは言えない。オーロラ姫に隠し事をするのは気が引けるが、 これも無事にパーティを開いて彼女をビックリさせるため。 ハッカはそう思って、オーロラ姫を安心させるように言った。 「そうですか。ハッカさん、ケガしないで下さいね」 「はいは〜い。そりゃあ、もう」 ハッカは照れつつも、向かってくるスペースマシンに気を引き締め、ハッカ チェーンを構えた。 もうすぐクィーンコスモス号が射程距離に入る。 ベラミスがそう思った時、戦闘母艦の前を光が横切った。 「なんだ!?」 と思ったのは一瞬で。 「クーゴか…!」 すぐさま閃いた。が、それでも遅かった。母艦がグラリと揺れたのだ。 「どうした!?」 「エ、エンジン部分が攻撃を受けたようです!」 部下達は何が何だか分かっておらず、母艦のコクピット内は、騒然としている。 「推進力が落ちていく…!」 ベラミスは唇を噛んだ。 クーゴは母艦のメインエンジンの部分を、アイアンキッターで攻撃した。 「俺達だって、襲われてばかりじゃないぜ。ちゃーんと母艦の分析もやってるんだ」 クーゴはエンジンのある所から移動して、今度は主砲の砲門に近付く。 「クーゴ…!」 ベラミスは一瞬躊躇してしまった。クーゴを倒すのは、母艦の主砲ではなく、 自分の手で。だから主砲の発射命令は…。 「アストロザンダー!」 クーゴの攻撃に砲門は破壊され、爆発が誘発し、さらに母艦が揺れた。 「キャ、キャプテン…!」 部下達は動揺している。 「不覚…!」 ベラミスはダン!と目の前のパネルを拳で叩いた。 命令しても良かった。威嚇射撃でも。 それに、クーゴほどの男が、主砲でやられるはずはない。 とそこまで思って。 「何を考えているんだ、私は…」 ベラミスはスタークローを見つめる。 「ベラミスが乗っているのかな。2日が終わるまでは、ゆっくり相手は 出来ねえ。悪いな」 ベラミスに見つめられているとは知らずにそう呟いて、クーゴはクローベルト で飛び去った。 「キャプテン!」 部下の声にベラミスは我に返って、冷静にキャプテンとしての自分を 取り戻した。 「被害状況は」 「はい。主砲は使えません。メインエンジンをやられて、推進力は落ちていますが、 サブエンジンで何とか移動は出来ます」 クーゴは母艦が爆発してしまわないよう、攻撃は手加減したようだ。 「キャプテン、ギューマ軍団の前線基地からの編隊は全機破壊されたようです。 基地の方も襲われて、兵士達は別の基地に退却しました」 「基地も襲われた?クーゴ達、今日は先手必勝だったようだな…」 ベラミスは目を閉じた。まともに戦う事もなく、今回は敗れたようだ。 「退却する…!」 だが、次こそは。その決意を秘め、ベラミスは退却の指示を出した。 「おー、ハッカ。一人で全部やったか」 宇宙空間にエンジンや翼を破壊されたスペースマシンが漂っていた。 「まあなー。さすがに疲れたけどー」 戻って来たクーゴに声をかけられて緊張の糸が切れたのか、ハッカがへなへな とスターブードに座り込む。 「お、ジョーゴも戻って来たぜ」 「クーゴ!ハッカ!無事だったようだな」 「お目当ての物はどうしたい?」 座り込んだまま、ハッカが訊く。 「上手い具合に小型の物があったんでな。積めるだけ積んで来た」 スターカッパーの後ろを差して、ジョーゴはご機嫌である。 「よーし、じゃあ、コスモス号に戻ろうぜ」 作戦が順調に進んで、クーゴも満足気であった。 その日も睡眠時間を削って、クーゴ達は工具を使って何やら作業をしていた。 「あ〜あ、手間がかかるなあ」 クーゴが手を休めて愚痴をこぼす。 「作戦を完璧に遂行するために、手間や時間をかける時もあるさ」 ジョーゴに言われて、クーゴはまた作業に取り掛かった。 戦略家だよなあ、ジョーゴって。確か星の警備隊にいたから、俺達の中じゃ、 戦うのや作戦を立てるのが上手いんだろうな。俺は暴れながら、戦い方を覚え たようなものだし。ジョーゴが仲間で良かった。 とかなんとか思っているクーゴの横で、ハッカは楽しそうだ。 「これもパーティの準備と思えばさ、面倒じゃないぞ」 「なーにを呑気な。一つ間違えば、危険に晒されるんだぞ、ハッカ」 「そうだけど、これは目くらましで、奴等を倒すためのものじゃないからさ。 かくれんぼみたいじゃん」 「ある意味そうだな」 「感心するなよ、ジョーゴ。あと何個なんだ?」 「二つ。もうすぐ終わりだな」 「早く言えって」 「眠いからって、絡むな、クーゴ」 じゃれ合いながら、3人の作業は続いた。 そんなことは知らないオーロラ姫は、安らかな眠りについていた。 翌日は何事もなかった。 クーゴは偵察と称してスタークローで出かけ、昨夜作ったものをばら撒いて来た。 後はオーロラ姫に気付かれないように、パーティの準備を進め、ここ2日間の 睡眠不足解消のため、仮眠を取ったりした。 そして目的地の地球型惑星には、3月2日の朝の時間帯に到着した。 1日休みを取ったベラミスは、新たな戦闘母艦で、クィーンコスモス号を 追っていた。 コスモス号の反応をキャッチし、先にスペースマシンで攻撃に行かせたが。 「なに?コスモス号はいなかった?」 「はい。小型の監視カメラロケットが、コスモス号と同じエネルギーフィー ルドを発信していました」 「……囮か。もう一度、コスモス号を探すんだ」 ベラミスはレーダー係に命令する。 しばらくして、またキャッチ出来た。その場所に行かせると。 「今度は小型の偵察用ポッドが、コスモス号と同じ…」 「もう良い」 報告を遮って、ベラミスは苛ついた口調で言った。 「どちらも、ギューマ軍団の基地にあったものだ。あの時のクーゴ達の目的は これだったのか」 ベラミスは腕組みして考える。 「ギャラクシーエネルギーの反応で調べてみろ」 もう一度探させる。結果は同じ、また偵察用ポッドだった。 囮を見つけると、部下達は腹いせにそれを破壊していたが、破壊されると次が 発信するようになっているらしい。 だったら、破壊しないで、次の反応を探してみたが、同じであった。 ある程度の時間が経ったら、発信するように細工しているようだった。 「彼等にしては、いつになく、手が込んでいるな」 余程、見つかりたくないらしい。 いつもは、堂々とギララ星系を進んでいるのに。 逃げたり隠れたりするのは、攻撃を受けた時だけなのに。 「少しでも長く、オーロラ姫を休ませたいと思っているのか…?」 ベラミスが考えられるのは、そんなことだった。 「キャプテン…」 「惑星に着陸しているかもしれん。とにかく探せ!」 いつまでも隠れてはいられまい。根気の勝負だな。 ベラミスは落ち着いて、コスモス号発見の報告を待つ事にした。
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●2003・07・29更新

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