見渡す限り緑の大草原が広がっている。
クーゴは丘の中腹に立ち、その壮大な景色を眺めて息を吐いた。
この星の名はラカ星。ガラム星系の中のひとつ。
ギャラクシーエネルギーが復活する前は、赤い地肌の土ばかりの
草も枯れ果てた荒野だったらしい。
草原以外何も無いが、その自然さ野生の美しさが、かえって平和
を際立たせている気がする。
ガラム星系の太陽が眩しく頭上に輝く。夏の香りもしている。
クーゴは額の汗をそっと拭うと、満足そうに口元に笑みを浮かべ、
置いて来たスタークローまで戻ろうと足を踏み出した。
その時、上空に飛来するマシンに気付く。
スターシーク。ケディの宇宙艇だ。
操縦席に居るケディの涼しげな横顔が、地上からでも確認出来る。
「あいつ何処に行く気だ」
もうここでの仕事は済んだのに。
まったくもって単独行動主義。キティ博士が協力し合えと、釘を
刺してよこしたにもかかわらず。
― まあいいか。俺も好きなようにやってることだし。とりあえず、
チームワークが必要なほどの作業も無かったしな ―
クーゴは寛大そうなジェスチャーをして、スタークローの有る方へ
歩いて行こうとした。その時だった。
上空からいきなりスターシークがクーゴ目掛けて急降下して来たのだ。
スターシークは鳥のように一瞬クーゴの頭上を豪速で掠めて行き、
遥か空の彼方に去って行ってしまった。
クーゴの運動神経の良さも有って、スターシークの餌食になるような
事は更々無かったが、クーゴは腹が立った。
「何考えてんだ、あいつ」
それでも、子供相手に阿呆らしいと思い直し、クーゴは呆れ顔で
スタークローを呼んだ。
発進し、スタークローの操縦席に落ち着くと、クーゴの耳に
ケディからの声が届いた。
「次に行くぞ、クーゴ」
「あーん?何だって」
クーゴは中々に悠然と構えている。
「お前、最初っからそう飛ばすと後でドッと来るぞ。知らねえからな」
まるで昔の自分に言い聞かすような、クーゴらしくない台詞。
「ま、お前に言われるまでもなく、さっさと行く気だけどね」
その後でこう付け足したクーゴの言葉は、彼らしく、その上おまけ
としてウィンクまで加わってさすがだった。
その言葉が終わる間もなく、クローベルトに包まれて、クーゴが
今度はケディを出し抜いた。
「ふん。じゃあ次は目に物見せてやる」
ケディは鼻で笑い、長い黒髪を片手で掻き上げると、ヘルメットの
目のフードを直し、スターシークを加速させた。
銀河系は今日も美しく、果てしなく、変化を遂げようとしていた。
新しい未来への夢はまだまだ続く。
クーゴ達の明日も、遠いどこかへ繋がって行こうとしている。
そう、遠い遠いどこかへ。
二機の宇宙艇は、星の海へと消えて行き、後には静寂が再び
訪れた。
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●2003・03・26更新
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