1978年4月2日から1979年8月26日まで 全73話が放映されたテレビアニメ「SF西遊記スタージンガー」のファンクラブです。        




|1|3    

スタジン小説 その34 第1回(全5話)





「PARTNER」   作・みなこ

もうすぐ桜の季節か。 クーゴは、キティ科学研究所の中の自室で、窓辺に座り 外の木々の芽の膨らみを見つめた。 まだ春は浅い。時々、身震いするような冷え込みも続く。 だが、着実にすぐそこまで新しい季節はやって来ている。 開けた窓を再び閉めて、クーゴは立ち上がった。 その時だった。 「クーゴぉぉ〜」 大きな声でドッジ助教授が呼ぶ声がする。 「やれやれ、ドジ助教授だ。まーた何か用かな」 このところ遠くの星系までずっと手伝いに行っていて、昨日 やっと帰って来たばかりだというのに、自分をおとなしくは させて置かない、そんなドッジ助教授だが憎めない人だ。 クーゴはクスリと笑い、部屋から出て行く。 「何ですかあ、ドジ助教授」 ロビーの途中で、向こうから小走りでやって来たドッジ助教授と 目が合う。 「コラぁっ。まだドッジと言わんかクーゴ、お前はまったく」 クーゴがわざと茶化して言うのを知りながら、それでもつい 習慣で、ドッジ助教授はそう反応してしまう。可愛らしい。 「へへっ。すいません。ところで何の用事ですか〜?」 「キティ博士がお呼びだ。紹介したい者が居る」 「紹介したい者〜?何だろうね、改まってさ」 クーゴが小首を傾げた。 キティ博士はいつも通り分厚い科学書を片手に、時々紅茶を 味わいながらクーゴを待っていた。 「キティ博士、クーゴです」 ドアが開く音がして、クーゴが部屋に入る。 「ああクーゴ、疲れてるところをご苦労様。お掛けなさい」 キティ博士は穏やかな口調でクーゴを労った。 「早速ですがクーゴ、今度私の助手として、新たに一人増えます。 その人を今日は紹介しましょう」 「えっ、キティ博士、それじゃドッジ助教授は引退ですかぁ!?」 ドッジ助教授もその時入り口に現れて、クーゴの冗談にすかさず 攻撃を入れる。 「クーゴっ!わしを老いぼれ扱いするとは何事じゃあっ」 興奮している助教授の背後に立っている存在に、クーゴが気付く。 キティ博士がなだめすかすように口を挟んだ。 「さあ、中にお入りなさい、ケディ」 ドッジ助教授の陰から、一人の女性が現れた。 「失礼します」 「紹介しましょう。こちらはケディ。今までずっとドッジ助教授の 開発チームに居た女性です。」 「ええっ、ドッジ助教授の部下だったの?それがまたどうして」 クーゴは要領を得ず、驚いている。 「私もドッジ助教授も、これまで有能な後継者を探して来ました。 クーゴが戻ってくれて今はとても助かっていますが、この先 クーゴにも、一緒に協力してこの研究所を助けてくれる人材が 必要だと思って、ケディに来てもらうことにしたのです」 そのキティ博士の言葉を待って、ケディが利発そうな口調で言った。 「キティ博士の期待を裏切らないよう頑張ります」 キティ研究所の中を一通り二人で歩きながら、クーゴがケディに訊ねた。 「キティ博士お墨付きってことは、さぞかし有能なんだろうな。 よろしく、ケディ」 ケディはそのクールな瞳にややシニカルな色を浮かべて、 クーゴにこう答えた。 「私の足を引っ張る奴は嫌いだ。クーゴ、心しておいて欲しい」 いきなり強気な可愛くない態度に、クーゴは面食らう。 「何だ何だ、その言い方はよ。俺達宿敵じゃないぜ。第一足を 引っ張るのはそっちじゃねえのか」 クーゴも負けてない。 ケディはにやりと笑う。 「それは私の仕事の仕方を見れば判る。とにかく、女だと思って そういう態度を取るようなことはやめることだな」 ケディは、長いコートを翻して、さっさと先へ行ってしまう. クーゴの胸の中に何か妙な、けれど懐かしい情景が甦って来た。 あれは何だったっけ。 そう。磁気嵐に巻き込まれ、不時着した星で出会ったあいつ。 心配してやったのに、素直じゃなくて、生意気で。 だけど、自分を食うほど勇ましく、口だけじゃなく格好良い。 ベラミスだ。まるで、いや、まさに。 「あいつ・・・」 そういえば、目の鋭さも、端正な顔立ちも、漆黒の髪も、細く 無駄のないスタイルも。最初から、誰かに似ていると思っていた。 「まるで生まれ変わりだ」 クーゴは珍しく度肝を抜かれた気分で、首を竦めた。 「キティ博士。来週からガラム星系の探査に出掛けます。 何か特に指令がございますか」 ケディは相変わらず淡々とした態度で、仕事を順調に進めている。 「ガラム星系はかなり辺境の星系です。ギャラクシーエネルギー 復活によりだいぶ落ち着いて来ましたが、まだ復興の手助けが 必要です。逐一報告して下さい。今回はクーゴと一緒に行って 協力し合いなさい」 「了解致しました」 キティ博士に任務遂行の宣言を済ませ、ケディは部屋を出た。 いよいよ新しい仕事だ。 ケディは、愛機の小型宇宙艇が有る格納庫へ行き、その上の 天窓に映る星空を見上げて呟いた。 「私の力を見せる時が来たんだ」 ガラム星系に出発する日がやって来た。 クーゴはスタークロー、ケディはスターシークで地球を後にする。 地球をだいぶ過ぎてから、スタークローの中でクーゴがケディに 通信した。 「俺は一足先に行ってるぜ、ケディ」 クローベルトを使う気だ。 ケディはまた得意のシニカルな笑みを浮かべ返答した。 「そうはさせない。私にもその機能はドッジ助教授と開発済み、 搭載完了だ」 言い終わった途端、ケディの乗ったスターシークは光と化し、 銀河の彼方に消え失せた。 「あ、あいつ・・・このクーゴを出し抜きやがった。しかも・・・ サイボーグかよ」 クーゴは最初鳩が豆鉄砲を食らった様に驚いていたが、すぐ 気を取り直して前をしっかりと見つめた。 「やってくれるな、ケディ。よおし、俺も負けちゃいないぜ。 何だか楽しいことになりそうだ」 クーゴの顔が陽気に輝き出し、その瞳には新しい希望に 満ちた光が宿った。 「クローベルト!」 黄金色の塊のようになったスタークローは、宇宙の彼方目指して 飛んで行った。
          |1|3
| ●2003・03・20更新

スタジンオリジナル小説メニューへ戻る / スタジントップページへ戻る