1978年4月2日から1979年8月26日まで 全73話が放映されたテレビアニメ「SF西遊記スタージンガー」のファンクラブです。        




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スタジン小説 その34 第3回(全5話)





「俺の女神」   作・みなこ

まだ眠い。寝ていたいよ。 なのに、誰かが俺を呼ぶ。誰だ? ・・・姫? 嘘だろ?そんなバカな。 「クーゴ!!」 至近距離で馬鹿でかい声出しやがって。耳がキンキンする。 その叫びのような大声で、俺は夢の世界から引きずり出された。 見上げると、そこに、ケディの不機嫌そうな顔。 その後ろには、青空が清々しくどこまでも広がっている。 「何だよ、大声出すな、まったくもう〜!人がいい気持ちで寝てた のに」 緑の匂い。原っぱに寝そべって、俺は昼寝をしていた。 ケディは腰に両手を当てて、仁王像かと見まがうような姿勢だ。 「いつまで寝てる!?これからカテナ星に行くんだろうが」 俺は悠長に大あくびをすると、やっと半身を起こしてケディの 方を見、そして軽い調子で言う。 「ケディちゃんよ、少しはあんたも休憩したら?まだまだ先は 長いんだぜ」 自分で言ってるのに、まるでハッカのような台詞だなあ、と 俺は心の中で笑った。 俺もあれから、だいぶ余裕が出て来たか?うん、いいことだ。 ケディはそんな俺の様子に更に苛立ち、くるりと背を向けた。 「今度ちゃん付けで私を呼んでみろ、その口へし折ってやる」 その勇ましい口ぶりに、俺は吹き出してしまった。 「はいはい、参りましたケディ様」 それにしても。時々、目の錯覚かと思うほど、こいつはベラミス によく似ている。 顔の作りじゃない。表情だ。 負けん気が強くて意地っ張りで、生意気で可愛くなくて。 だけど、そんな中に時々、物凄く寂しげな表情を浮かべる。 きっとケディも、俺の知らない多くの苦労を背負って生きてきた んだろう。 ベラミスがそうだったように。 ここまで虚勢を張るのも、本当はどこか弱いところがあって、 必死にそれを隠すためなんだ。 昔の幼い俺みたいに。 俺は、さっさと前を歩いて行くケディの背中を眺めて、 そんなことを考えていた。 すると、予告もなく、いきなりケディがこちらを振り返り、まるで 子供のような悪戯な含み笑いをして言った。 「クーゴ、お前さっきオーロラ姫の夢、見てただろう」 長い艶のある美しい黒髪が、風に舞う。 その瞬間、俺は思った。 こんなことをさせて置くにはもったいない美人だ。 俺はちょっとむくれて答えた。 「お前になんか教えねえよ」 するとケディは、高らかに天に向かって笑い飛ばす。 「嫌だね男は。おセンチでさ」 やられた、と思い、俺はすかさず反撃に出る。 「バーカっ!お前に言われたくねーよ」 ケディは何だか楽しそうにまたくっくと笑いながら、そのまま どんどん先へひとり歩いて行ってしまった。 あいつ、機嫌がいいんだか、悪いんだか。 まったくもう、女ってのはわけがわかんねえ。 俺はすっかりやる気が失せそうな自分のほっぺたを軽く叩く。 姫。俺の今日この頃はこんなです。 何だろうなあ。俺だってこれでも必死に生きてるんだけど。 姫に会えなくても、こうして、頑張ってるよ。なあ、姫? 「クーゴ!!置いてくぞ!!」 ケディがまた元に戻って、ずっと前のほうで怒鳴っている。 やれやれ。 折角、俺の女神様と心で会話中だったのにさ。 俺はようやく立ち上がり、ケディの方へと走り出した。
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●2003・04・03更新

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